はぴはぴめりーくりすます7(適当)



これの続き。

「イルカ先生大丈夫?」
「も、もちろん!ただその、ちょっと食べすぎちまっただけで」
「…そ?」
 同じくらい食べたのに平気な顔って、やっぱりどっか体のつくりが違うんだろうなと思う。しかもいつの間にかまた毛布の中に逆戻りだ。そんなに大事に包まなくたって、これでも中忍なんだから早々弱ったりはしない。
 心配そうな顔でくっついてくるから突き放せないでいるけどなぁ。
 だがもうそろそろこの体制でいるのも居たたなれなくなってきた。それに時間的にもちょうどいい。身動きするのも辛いとは言え、ぐうぐう腹を鳴らしているよりは、動きが多少鈍いくらいなら、そんなに酷いことにはならないだろう。…多分。
「あの、ちょっと取ってくるものがあるんですが」
「ああこれのこと?」
「…なんで持ってきてるんですか…?」
「え?ああほら、これを誰に上げるのか聞き出さなきゃって思ってたの。でも違うってことは、これ、誰のなの?」
 そこで自分のじゃないかと思えないあたり、心配だ。誰のためってあんたのため以外ありえないだろうが。付き合ってることを言いふらして回ったのもこの人なら、周囲を常に威嚇しているのもこの人なのに、一番信じてないのが自分自身っていうのがどうにも悲しい。
 信じてくれと言う前に、体で証明することを求められることにも納得しちゃいないんだ。
 死ぬまで連れ添う覚悟はとっくの疾うに決めている。こうなりゃ長期戦だ。俺が死ぬまでに、絶対にこの人に信じさせてみせる。
 まあとてつもなく先が長そうであることも確かなんだけどな。
「ええとですね。あー…それ、開けてみてください」
「いいの?破っちゃうよ?」
 そう言いながら既に銀色の雪が印刷された真珠色の包装紙を乱暴に引き破っている。自分のものである可能性をはなっから想定していないこの人は、誰かに渡せない状態にすることで、安心しようとしているんだろう。後で泣かなきゃいいんだけどな。記念日好きで収集癖があるから、今まで渡したどんなつまらないものだって、大事に大事に取っておいているのを知っているだけに心配になる。
 現に、箱から出てきた深い赤色の枇榔度張りの箱を手に、固まっている。この人ならこの手のものを何度も見たことがあるだろうし、中身も察しがつくだろう。
 何しろ俺は初めてで、おっかなびっくり調達してきたのにな。第一あの店で子供たちのものを買えると思うはずがないだろうに、そんなことさえわからなくなるくらい取り乱したんだと思うとすぐにでも安心させてくなってしまう。
 ただ、デザインセンスなんてものは欠片も自信がないから、そっちの方については俺の方がずっと不安だと思うんだが。
「それ、サイズは合ってると思うんですが、デザインは、似合うなと思って、でも趣味にあわないようなら一緒に買いに…うお!」
「いいの?これ。指輪って、そういうことでしょ?」
「ええと。はい。…実はこっそり取り置いてもらってたんですが、やたらと心配するから中々取りに行けなかったんですよ!まったく!」
「そ?ねぇ。つけていい?」
「あ、それはできれば俺が」
 こういうものはできればやりたいもんだろう。男として。まあこの人も男だが。こっちの誓いには耳を貸さないこの人でも、その指に嵌る形になっていれば、少しは信じてもらえるんじゃないかと期待した。
「…つけて、くれるの?」
「ダメですかね?」
「はやく」
 唆すようなささやきは甘く切なげで、潤んだ瞳にも急かされて、心臓が酷く煩い。
「ッ!指、貸してください」
 手を取って、薬指に収まったそれは、こっそり測っておいた甲斐があって一応ぴったりはまったようだ。心配だったデザインもシンプルな銀色…確か白金の合金で、この人の髪色のように柔らかく光るそれが驚くほど馴染んでいる。
 任務中は邪魔になるだろうが、首にでも下げて貰おうと、実は鎖も用意して…あったんだがこの人が勝手に引っ張り出した中にはなかったな。ってことはまだそっちは見つかってないんだろうか。そろいの指輪もそこに入れておいたはずなんだが。
「嬉しい」
「…ッ!ああもう!俺は、執念深いんです!こうやって誓ったからには他に行く予定もないですし、置いていかれたら死ぬ気で連れ戻しに行きますからね!」
「うん。…イルカ先生らしいね」
「それで、その。め、めりーくりすま…うお!」
「好き。ねぇ。いいんだよね?本当に。後悔しない?」
「しません!あんたいい加減人のこと馬鹿にしすぎですよ!そ、の、す、好きじゃなきゃこんなことできるか!」
 猜疑心と歓喜を混ぜるという器用な真似をした人の唇を強引に奪うと、いきなりボロボロ泣き出したから焦るなんてもんじゃなかった。
「あー…どうしよ。ねぇ。幸せ」
「泣かないでくださいよ。あんたに泣かれると、その、心臓が止まりそうです」
「それは困るなぁ。…ねぇ。だって死んだって止めてくれるってことはさ、死んだって一緒にいてくれるんでしょ?」
 そりゃ当たり前だろう。何を言ってるんだろう。それくらいの覚悟がなきゃこんなもの用意しない。
「当たり前です!」
 そう言い切った途端、ベッドに転がされていて腹がはち切れそうだっていうのに、別の物をさらに腹をはち切れそうになるまで注がれるなんて…まあ想定しておくべきだったんだろうな。
 クリスマスプレゼントは俺ですねなんて言って笑う俺の唯一の相手が、酷く幸せそうに指輪に口づけをしてみせたから、身体的なダメージについては目をつぶった。
 うん。この顔を見られるんなら、死にそうになったって生き抜いてやろうって気にもなるよな。
 ドロドロに疲れた体が眠りに引っ張り込まれても、さざ波のように好きだ好きだと囁く恋人のおかげで、その日の夢は目覚めたくなくなるほど甘く穏やかで幸福感に満ちていた。

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クリスマスつづき。
あと一回のはず。大晦日なのでそっちの更新先になったら許せサスケ。

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