これの続き。 「…あーあ。やっちゃった」 カカシさんの声はかすれててもいい声だよなぁ。でもうなじの辺りがくすぐったい。触れてくる何かのせいか、熱くてちょっとピリピリする。 「ふが?うぅ…へ?なんですか?」 「んー?おはよ。折角だし、酒飲む?」 カカシさんは全裸だ。裸でも少しも恥らう素振りがない辺り、やっぱり暗部に裸族が多いってのは本当なんだろうか。ゲンマさんが言ってたけど、カカシさんはいつもパジャマ着て寝てくれますよって言っておいたんだけどな…。本当は無理してたんだろうか。 服着る暇なんてあるのかーとか言われたけど、服着ないで出勤したら捕まるだろう。普通。 それともゲンマさんまさか幻術とかで服誤魔化してるんじゃないだろうな…!?家の中ならそりゃ好きにすればいいが、一般的な繊維よりずっと刃物や術に強い忍服をわざわざ着ないで動きまわる理由はなんなんだ。趣味なのか。己の命を危険に晒してまで? まあそれは任務の遂行に支障がなければ個人の趣味としておいておくにしても、カカシさんの方は大変だ。俺がついついなんとなく用意しちまったもので、くつろぎの時間を邪魔しているなら大問題じゃないか。 「…あのう。カカシさんはパジャマがキライですか?」 「は?好きでもキライでもないけど。パジャマなんてわざわざ買うのが面倒で、着たことなかったけどね」 着たことがないってことは…やっぱりそうなのか…!俺は…俺ってヤツはなんてことをしちまったんだ! 「…そうですか…。カカシさんも裸族だったなんて知りませんでした…!これまでご迷惑を!今すぐに…」 「ちょっと待て。どうしてそうなる?普段は忍服で十分ってこと。なによ裸族って。しかももってことは他にもいるの?」 「え?ゲンマさんが服を着てる時間のがすくねーなって」 カカシさんが否定するってことは、パジャマは問題なかったのか!よかった!普段忍服って、任務多いもんな…。ゲンマさんも特別上忍だけあって任務は結構多いのに、わが道を行くその強さに感心した。 でもなんでカカシさんの眉が急に下がってるんだろう。あと頭抱えててもかっこいいよな。この人。 「…それ女がいるってだけでしょうが…」 「え?」 そういやゲンマさんは日替わりで美女をぶら下げていることで有名な人だったっけな。くノ一クラスの子なんか、ファンクラブがあるとかって言ってたような。 でも、なんでだ? 「わかってないみたいね。俺とさっきまでしてたようなこと、いつもヤってるって言われたんでしょうが」 さっきまでしてたこと…というと、意識を失う寸前の光景が急に脳裏に蘇ってきた。 目の前の美しい男が軽々と、それも口付けながら担ぎ上げているのはまぎれもなく男の足だ。視界が揺れるのは揺さぶられているからで、繋がったところからはしたなく濡れた音がひっきりなしに響いている。 ありえない場所にある他人の熱…それがこの人の物だと思うと例えようもなく熱が上がって、そこからこの人が染み込んでくるように感じて、恐ろしくなって目を伏せると耳元で名前を呼ばれた。 「イルカせんせ?」 「わぁあ!いえ!その!うぅ…!」 「ま、からかわれたんでしょ?その反応、そのときに見たかったんだろうね。ここまで鈍いと思わなかったんじゃない?」 鈍い。そうだな。それに関しては否定できない。俺は基本的に察するってことが苦手だ。多分だが、色事方面のことはほぼ全滅といっていいほどだと思う。周囲から言われて努力した結果、それでも未だにカカシさんが困っているらしいことにも気付いちゃいるんだ。どこがまずいのか分からないってだけで。 ゲンマさんが裸族だって他の人に言う前でよかった。まああんまり大声で言わない方がいいと思ってたってのもあるけど、カカシさんなら言いふらしたりしないだろう。 「…カカシさん、それで、その」 「なぁに?」 余裕たっぷりに微笑んで俺の髪の毛を掬い取っては食んでいる。美味いんだろうか。こんなことすらエロくみえるんだからすごいよな。この人。 「す、好きです!その、今更ですが、俺と!」 「うん。もう色々手続き済みだけど?」 「ええと?」 「ま、追々ね。三日で返してくれって言われてるから、ヤり倒さないと。折角薬ももらったことだし?」 「は?何を?」 やりたおすってなんだそりゃ?とりあえず尻がおかしい。どうしたもんだろう。なんか熱いというか、じりじり疼く。あんなことした後なんだから当たり前なのかもしれないが、未だにこの感覚になれることができない。いつもうっかりして寝てる間に綺麗にされてるってのも情けないしな…。 そのくせあの炙られるような快感が未だにくすぶっていて、今にもみっともない姿をみせることになりそうだ。 今更ながら恥ずかしくなってきて、慌てて布団をひっぱりあげた。 「…ご飯食べる?」 「はい!」 カカシさんのご飯を食べないわけがない。美味いってだけじゃなくてその、…愛情がこもってるからな!多分! 幸せな気分で食卓に向かう足は生まれたての子馬のようにおぼつかない。なんでだ?理由はともかくとして歩くのもおぼつかないとはいえ、カカシさんの前でへたり込むのは流石にみっともないだろうとがんばって踏ん張ってはみた。 …が、結局見かねたカカシさんの手により、すぐさま食卓に座らされていた。 「はい座ってて。お茶飲むでしょ?」 「お茶!はい!」 「ご飯食べたらちょっと休んでいいよ」 「え?はい」 「折角ホワイトデーにもらったんだから逃がさないし」 「はは!酒は逃げたりしませんよ!パジャマは…丈夫な洗濯ばさみかいましょうね!」 かわいいカカシさんに思わずときめきを感じるまま抱きしめたら、カカシさんもひっついてきてくれてとても幸せな気分になった。さわやかですばらしい朝だよな! それからおいしいご飯がすぐさま出てきて、当初の目的をすっかり忘れて舌鼓を打ったのだった。 ******************************************************************************** 適当。 告白もきちんとしてないのにやることやっちゃった俺かっこ悪いと思ってる中忍は、だがしかしそれ以上にカカシさんかわいいと思ってるので意外と外野は平和。 |