これの続き。 布団がふかふかだ。カカシさんがあったかい。寝心地最高だ。うちの布団もそろそろ買い換えた方がいいかもなぁ。俺は床だってなんだって平気だけど、カカシさんにはちゃんとしたところで眠って欲しいもんな。 「へへ…ふかふか」 「そ?よかった」 誰かが俺の頭を撫でてくれる。嬉しくて擦り寄ったら唇に何か湿ったモノがかすめた。 目を開けるとすぐ側にものすごく整った顔が…。 「…うへ?あー!酒!パジャマ!せんべい!」 一瞬で回り始めた頭で、大慌てで酒を持ってこようとしてみたものの、がっしり捕まえられていて身動きもままならない。 「…俺からにする?」 「え?いえ!チョコのお礼!酒!」 「そうきますか。ま、いーけど」 なんだろう。カカシさんがご機嫌だ。いつもなら俺が騒ぐと落ち着かせるみたいに撫でてくれた後、何故か布団に…いやその! まあいいか。これでお返しが渡せるわけだし、早速用意しよう。準備が足らなかった分は深く反省しつつ、少なくとも男らしく告白って部分だけでもやり遂げたい。 一目散に駆け出して、いつの間にか増えていた俺専用箪笥に駆け寄った。こっそり隠しとこうと思って酒瓶は服の下に埋めてある。洗濯物は俺がたたむって言ってるのに、隙を見せると全部片付けてあるから、気付かれるんじゃないかとしばらく気が気じゃなかった。 「ええと。確か…この辺に…?」 もそもそと箪笥の中を漁ると、程なくして目当てのものは見つかった。きちんと奥の方にしまっておいたのが良かったのか、カカシさんに気付かれた様子は無い。 「それなーに?」 こんな至近距離で覗き込まれたら誤魔化しようはないんだが、しょうがない。今はホワイトデー当日…だよな?多分。寝ちまったけど腹時計的にはまだそう大して時間はたっていないはずだ。 すかさずラッピングを施した酒瓶を掲げ持って、カカシさんの前に跪いた。 「ホワイトデーです!」 「…えーっと。そ?ありがと」 「酒だけじゃなくて!せんべいとか!無理だったけど!あとパジャマは!いつもなんですけど!」 我ながらこの体たらくに涙が出そうだ。いや、泣いたってカカシさんに迷惑かけるだけだから、ここはぐっとこらえなくては。 そう、勇ましく雄雄しくわかりやすく!愛の言葉ってヤツを今こそ…!うぅ照れくさい…! だがカカシさんが食いついたのはそこじゃなかった。 「ねぇ、どうしてなにかっていうとパジャマ買ってくるの?」 「え?そろそろあったかくなってきたんで、変えなきゃなって」 お揃いの色違いにしたのは体格が似てるから間違えないようにってのと、お揃いのパジャマは仲良しの証みたいで楽しいからだ。パジャマ派じゃないのか?もしかして?ゲンマさんは裸族らしいが、そこまでいかなくても忍服着て寝るのは任務先だけでいいよなー。今まで面倒で着替えないまま寝ちまったことはあるけど、カカシさんのおかげで非常に規則正しい生活を送ってるから、今更元には戻れそうも無い。 …浴衣にすべきだったのか…!?いや、俺の寝相じゃ起きたときには脱げちまってるよな!? 「ま、いいけど。プレゼントってことでいいの?」 「え!あ、はい!ホワイトデーのお礼です!それから…!」 さあ!言うんだ俺!うぅ…!心臓が破裂しそうだ…!いやだがしかし!コレを逃せば俺は絶対に言えないに決まってる。 くらくらするほど血が上った頭に、バクバクと忙しない鼓動が響く。どさくさにまぎれて手を握ることには成功したけど、次は…かっこいい告白…! 「お礼ねぇ?ま、さっきので色々成立してるけど、ありがたくいただこうかな?」 ひょいっと担がれたんだということに気付いたのは、ベッドに逆戻りしてからだった。どさっと落とされてうひいとか言ってる俺に怯むことなく、カカシさんがぺりぺり俺の服を剥ぎ取っていく。 こ、これはもしかしてもしかしないよな!? 「す、好きです!カカシさん!」 緊張してろれつも怪しかったから、こんなに近くにいてくれる今が絶好のタイミングだと思ったのに、何故かカカシさんが固まってしまった。 ぽかんとしててもかっこいいって、イケメンは得だよなぁ。しみじみ綺麗な顔してるよ。ホントに。 「…うーん。ま、結果オーライ?」 「え?あの?」 ここが寝室で、今いるのはベッドの上で、おまけに自分が何も着てないってことと、カカシさんが引きちぎらんばかりに乱暴に服を脱ぎ捨てていることが上手く繋がらなかった俺がどんな目にあったかなんていうのは…同僚たちにも流石に言えない。 ******************************************************************************** 適当。 同僚がすでに色々把握していることとか、回復薬特別調合されてることとかを、中忍は知らない。 明日までに終わる気がしねぇってばよ。 |