これの続き。 「はい到着」 「おお!はぇえ!じゃなくて!あの!俺は!その!ちょっとばかり用事があって!」 「はいはいあとでねー?手、洗ってきなさい。これ、食べて?」 そういって勝手知ったるカカシさんちの食卓の上に置かれた箱は白い。そして甘い匂いとともに箱の中から美味そうな真っ白いケーキが出てきた。生クリームだけってのは殺風景にみえるけど、甘酸っぱい匂いからしてコレは多分中からいちごとかそういう美味いもんが出てくるヤツだ。 「はい!じゃなくて!」 涎を堪えつつ思わず欲望に忠実な返事をしてから、目的達成への最大の敵に立ち向かおうとしたんだが。 「おいしいよ?」 その笑顔は反則だと思うんだ。おいしいに決まってるさ!だってカカシさんが用意したもんだからな!くっそう!顔がいいと思って!なんなんだ!そしてそれに逆らえない俺は…そうなんだよ。なんでかわからんが、この人がこう…にこって笑うとどうも抵抗できなくなるんだ。幻術か。幻術なのか。それともあれか。噂の写輪眼ビームってやつなのか。 「お茶入れます!」 「イラナイ。ほら手、洗ってきて?一緒に洗おうか?」 すすすっと寄ってきて、さりげなくくっついてくるのは前と変わらないんだけどな。その後が違うんだ。手を洗いにいったはずなのに服脱がされてたり、風呂掃除して水びたしになったズボンを洗濯機に放り込んでパン一で冷蔵庫からビールだしてたらそのパンツまで奪われたり、何度も頼み込んでやっと台所で貸してくれたエプロンつけて洗い物させてもらってたらズボン脱がされて…とか、うん。 普通でしょ?っていうんだから普通なのかもしれないが、俺にはどうしても受け入れられなかった。 一人でいるとき思い出すだろうが!それになんていうか、その、そういった行為は布団の中でするもんじゃないのか?じいちゃ…三代目のエロ本には確かにえ!?そんなところで!?ってところでもヤってるのがあったけど、詳しく読もうとすると鼻血がでるからよくわからん。 警戒しすぎるってのも失礼だろうと思うけど、今は考えなきゃいけないことがあるから許してもらうことにした。 「え…ぅう…!?いえ!大丈夫です!一人で洗えます!」 「そ?ざーんねん。ふふ。ま、警戒してくれるようになっただけよしとしましょう」 「…行ってきます」 何で嬉しそうなんだよ。同僚とこしょこしょ内緒話してた内容が気になって仕方が無い。こんなに一緒にいるのにのけ者にされたみたいで寂しい。 …いや、今はそんなこと考えてる暇はなかった。とにかく、せめて手を洗ってすぐお茶入れて、後は酒はこっそりこの部屋に運び込んであるし、せんべいは無理そうだけどパジャマはおいてあったよな? 後もう一つ、決めていることがあった。 きちんと俺の気持ちを伝えること。それも男らしくビシっと決めるつもりだった。 よくわからないまま恋人ってことになってるけど、俺はちゃんとカカシさんが好きだ。カカシさんが俺に好きって言ってくれるまで仲のいい友達のつもりでいたから、きちんと言ってくれたおかげでこうして過ごせることを幸せだと思っている。 今なら結婚するまでなんて口が裂けたって言えない。この人が他の誰かとずっと一緒に過ごして、俺のなんか目もくれなくなったら、きっと情けなく鼻水たらして泣くと思う。そう気付かせてくれたことにも、それから俺のことを大切にしてくれることにも、感謝してもしたりない。 だからこそ、ずっと一緒にいたいって言わなきゃ、俺の気が済まない。 でもなあ。お揃いのわんこ模様のパジャマは勝負服には微妙だよな?浴衣とかぐっとくるぞって同僚に勧められたけど、まだ買ってない。どうしたもんだろうか。 「まだ?」 「うひぃ!え!あ、はい!すぐに!あとお茶!」 「ん。もう淹れたよ。…早くね?」 なんだ。どうしたんだ?カカシさんはここんとこ割と強引だけど、今日はいつになく様子がおかしい。ココは一つ!男としてどーんと受け入れるべきだよな!なんてたって恋人が困ってるのかもしれないんだからな。 すばやくだがきちんと石鹸を使って手を洗ってふわふわのタオルで拭いて、食卓にもどってきたときにはもう美味そうなケーキが皿に乗っていた。 「美味そうですね!あ、俺が!食器は!」 「いいから。ねぇ。受け取って?」 ずいっと皿を進められた。いや食いたいし、カカシさんからもらったものならもちろん受け取るに決まってるけど、どうしてそんなにムキになってるんだ? 「へ?カカシさんも一緒に食べましょうよ?」 「ん。いただきます。でも先にイルカ先生ね?」 ゆらりとゆれる瞳からその真意は窺えない。ただほんの少し、気のせいかも知れないけど必死そうに見える。好きな人が望んでるなら、がんばらなきゃ嘘だろう。 「えーっと。はい。それでは僭越ながら!」 さくっとフォークをさした途端、とろりと赤っぽいソースが零れ落ちてきた。俺の予想通りいちごのソースらしい。白っぽい中にベリーのムースと、それから丸のまま煮たイチゴのソースが閉じ込められていたようだ。こぼれちまったらもったいないと、一気に口に放り込んだ。香りもさることながら、一瞬でしゅわっと溶けるクリームと、甘酸っぱいイチゴガ良く合う。 「うめぇ!カカシさんも!いっしょに!」 フォークにさしたケーキを口元に運ぶと、ちょっと驚かせちまったみたいだけど、素直に食ってくれた。かーわーいーいーなー!カカシさんは何か食べてるときちょっと考え事してるみたいな顔するところが最高にかわいいんだよな!もごもごってこう…口をうごかしてるとこなんかも大好きだ! 「ごちそーさま。これでお返し成立だから、正式に成立ってことでよろしくね?」 「えっと?なにが?」 「うん。わかってるからいいの。後でね?」 よくわからんが、カカシさんはご機嫌だ。カカシさんが嬉しそうにしてると俺も嬉しい。ちょっとばかり舞い上がった頭では、それくらいのことしか考えられなかった。 良く似た状況で大変なことになったのはちょっと前のことだったっていうのにな。 ******************************************************************************** 適当。 ホワイトデー中忍順調に料理されるの巻。 |