中忍大作戦 白い日編3(適当)



これの続き。

 一緒にいるだけで楽しくて幸せなんて、これはもう自分の幸運と、それから運命ってものを信じちまうってもんだろ?
 こんなに気が合う人が、それもこんな年になってから見つかるなんて思わなかったんだ。嬉しくて舞い上がりすぎて、もしかして親友ってこういう感じなんだろうか。そう相談した同僚たちが一斉にため息をついたから、やっぱり俺の思い上がりなんだろうかと落ち込んだりもした。
 でも、幸せなんだからいいじゃないか。寂しがりやなこの人が、俺の側で笑ってくれるなら、それだけで満たされる。
 そりゃあな?俺だって飯は自分で作れるし、風呂もあそこまで潤沢じゃないが趣味で買い集めた温泉の素もあるし、両親に先立たれてからなんでもずっと一人でやってきた。ラーメンばっかり食うのは良くないとか、そういえば野菜はあんまりすきじゃねぇなとか、確かに問題点はいっぱい教えてもらったけど、何だかんだいって俺は中忍だし、一人でなんとか生きていけるはずなんだ。
 でも、もしも今、カカシさんが俺の前からいなくなったら、俺はどうにかなってしまう気がした。
 なんでだろうな?出会ってからそうたいして時間なんてたっていないのに、もうずっと一緒にいるような気さえする。よくわからないけど大切な人なのは確かだったから、俺にできることはなんでもしたかった。  料理の腕前は比較するのもおこがましいくらい明らかにお粗末だったから、せめてできることをと、例えば風呂の準備とか、洗濯とか、やれそうなことはがんばってみた。カカシさんは遠慮しいなのか、いいからイラナイって言うことが多いけど、それじゃ俺の気が済まない。
 飯も風呂も寝床も用意してもらってふんぞり返ってるなんて、そんなの友達じゃないだろ?
 でも俺のできることは極端に少なかった。なにせカカシさんの手際がすさまじくいいからな…。例えば俺が飯をつくろうってなると、冷蔵庫を見て残り野菜が使えるか使えないかぎりぎりのラインに悩み、それからスーパーに買い物に行ってとりあえず肉と、それからついついカップラーメンとだんごとかも買いこんで、そこから適当に切って炒めるか煮るかしかできない。
 それに対してカカシさんはまず八百屋に行って鮮度のいい野菜を一瞬で見極めて、それに合わせて魚屋とか肉屋とか、あと乾物なんかも使ってめちゃくちゃうまい飯を作ってくれる。茹でて冷やしてまた味付けしてさっと煮て…なんて、俺がやってたら多分朝がきちまう。それをどうやってか一瞬で片付けてめちゃくちゃ美味い煮浸しを作ってくれたとき、俺には確かにカカシさんが眩しいほどに輝いて見えた。
 怪我の心配は同僚たちもしてくれたけど、薬まで作って手当てしてくれて、予後の確認まで怠らないって、これで尊敬しない方が嘘だろう。
 ぶっきらぼうだけど、くっついてくるのが好きで、俺も嬉しくてついつい触っちゃうんだよなぁ。綺麗だし、全体的に男くさくないのもあるかもしれない。あと髪の毛がふわふわでさわり心地がいいんだよな。もちろん筋肉もすごいんだけどな!もりもりだぞもりもり!思わず触り倒したら、なんか変な顔してたっけな…。俺はもうちょっと鍛えないと駄目だと、何度己のややたるみつつある腹をみたことか。
   あと知識もすごい。忍術書から戦術から気候や地理に関するものからなにから、薬草なんかについてもたくさん資料も知識もありすぎて、思わず質問攻めにしてしまったほどだ。
 あとは遊びたいのに遊べなかった過去の経験がそうさせるのか、俺のちょっかいを賭けてくる理由をちゃんといえないんだよな。妙に構ってくれーって態度でひっついてくることが多い。だからつい、俺から尻相撲とか、肩掴んできたから腕相撲とか、追いかけっこから鬼ごっこから、そういえば花札もやったな!楽しかった!ぼろ負けしたけど!あんたこれ楽しいんですかって半分泣きそうな顔で言われたときは、どうやら失敗したらしいってことには気付いたけど、俺にとっては楽しかったんだよなー?カカシさんが色々考えてる顔を見るのが。将棋はそこそこいい勝負だったし。なにせ三代目の薫陶を受けてるからな!初心者でいい勝負ってあたりには目をつぶった。
 あとはパジャマもお揃いにした。実はナルトにもやろうとしたことがあったんだが、サイズがなかったんだよな。その点、大人で体格もほとんど一緒なカカシさんのは簡単に見つけられて舞い上がった勢いで渡したらちょっと微妙な顔してたけど、素直に着てくれた。やっぱりいい人だ。
 他にも犬まみれになって寝るのも修行するのも楽しくて、俺の人生は唐突に潤いたっぷりなものになった訳だ。この人が結婚するまでは側に張り付いていようかなと、後ろ暗い決意を固めるくらいには。
 もちろんチョコの交換とかも楽しかった。一回目は、だけど。
 次のチョコがなぁ…。サプライズっていうから本とか術とかそういう面白い何かと思ったらチョコだったときは、ちょっとだけ残念だったんだけど、それがもうめちゃくちゃ美味かったんだ!冷蔵庫に入れといてもまだうまいケーキってすごいだろ!ホワイトデーには今度こそ良い酒だけじゃなくて色々用意しようと思って、やっぱりせめてトランプとか丸薬くらいは持ってくれば多少はお礼になったのにとか、そんなことを考えていた。
 いついかなるときにも手際のいいカカシさんに茶を出されて、ちょっと普段と違うアンニュイな中にもうっすらと俺には計り知れない何かを秘めた空気をかもし出すのに気おされて、ついつい一気飲みしたのは、多分ちょっと緊張してたんだと思う。緊張すると喉かわくよな。不思議と。
 カカシさんの家だからな。なにしろ。まあ何度も来たことはあったんだけど、シークレットでサプライズだってことは、色々どきどきするだろ?普通。
 そしたらなんか良く分からんうちに、熱くてふわふわして、気付いたらなんかどろどろになっていたというか、カカシさんとシていた。
 人生初だ。男と寝るのも動けなくなるまでヤったのも、なにもかも。泣いても喚いても気持ちよくされちまうと抵抗し切れない己の意志の弱さよ…。それと一楽のラーメンを五日も食えなかったのもショックすぎたんだけどな…。
 突然の意表をつく告白から流れるようにも連れ込んだ情事に驚く間もなく、俺とカカシさんが付き合い始めたって情報は里中に広まっていた。おかげでカカシさんの手際はいつもすばらしくイイってことを、今更ながら思い知らされた。
 それから早1月。今日も同僚たちはカカシさんへの励ましと俺への激励を欠かさない。やっと出勤できたあの日に配られた赤飯はどういう意味かはわからんが、食堂のおばちゃんが気合を入れて作っただけあって美味かったし、それ以降もなんか腰が痛い俺にお勧めのクッションをくれたり、何故かまっすぐ歩けない俺の残業を代わってくれたりしたから、多分色々気遣われているんだろうとは思う。
 …でもなんでホワイトデーの休暇が勝手に入れられている上に、三日が上限な?って言い聞かされてるんだろう。俺は。カカシさんともなんかこしょこしょ話してたし…内緒話すんなよ!気になるだろ!寂しいじゃないか!あと渡してた変なビンも気になる。あの同僚は薬学の担当だけど、植物の栄養剤かなんかか?うっきーくんは今日も青々と茂っててつやつやしてるのに。
 まあ同僚の不審な動向はともかく、もちろんお礼は全力を尽くすつもりだ。料理の腕ははっきり言ってさっぱり上達しないままだけど、せめて何か…ホワイトデーらしいものをと、菓子屋を回ってみて、甘くないのを探したりもした。
 その全部にカカシさんがついてきちゃってたから、どうにもやりにくかったんだが。恋人ってのは離れないもんなんですよ?ってエロ本片手にいわれると妙な説得力があるというか…あれ以来どうもカカシさんに逆らいにくいというか。
 どうしたもんだろうか。この状況。任務でいないときもわんこがついて来るし、今が一番大事なときだからって、まるで俺が妊婦になったみたいな気遣われ方だ。
 …まさか…いや、まさかだよな?大丈夫だよな?人類の限界を超えたりしてないよな?カカシさんなら本気になればなんでもできそうだから、急に不安になってきた。子どもは好きだが、嫁を貰う予定で嫁になる予定はなかったんだよ!告白されてからもその辺りは主張してみた。鼻で笑われた気がした次の瞬間、足を思いっきり広げられて…。
 …いや、とにかく今はお礼だ。ホワイトデーときたら飴だけど、飴は甘い。甘くない飴を買おうとしたらさりげなく阻止されたから、多分飴自体あんまり好きじゃないんだろうな。ラーメン飴美味そうだったのに。ジンギスカンキャラメルは…試食した段階ですさまじい味だったから諦めたけど、他に何かいいものってなんだろう?やっぱり酒か。酒なのか。
 実はこっそり手を回していい酒は手に入れてある。…けど、白くないんだよな?ホワイトデーって言うくらいだから白くなきゃ駄目なんじゃないか?
 調べようにも渡したい本人がいるところで調べるのは流石に気がひけて、結果的にこんなにぎりぎりになってしまったっていうのに、渡すものが決まらない。
「どうしよう」
「ワン!」
 近寄るもの全てに反応するカカシさんのおかげで、こういうことに詳しそうな食堂のおばちゃんとか商店街のおばちゃんとかご近所のおばちゃんとかにも話しかけられなかった。 
 何が原因かわからないけど、手を繋いでるだけで盛大に冷やかされてるうちに、カカシさんが真顔で「コレ。俺のなんでよろしくね?」とか言い出すのが悪い。ご近所の忍犬にも話を聞きたかったけど、カカシさんがいたら無理だし、カカシさんの忍犬がいても近寄っただけで一触即発状態に陥るからあいさつもできないでいる。
 万事休す。…白いといえば牛乳で、甘くないものといえばせんべいだ。牛乳せんべいとかどうだろうか。スーパーに白っぽいヤツがあったはずだ。食ったことはないが、酒だけしか選択肢がないってのは不安すぎる。もうちょっと高そうなのがいい気もしたけど、普段と違うところに行こうとすると忍犬に止められるからな…。そういえば気温も上がってきたからおそろいのパジャマも新調したけど、あれもプレゼントになるだろうか?でもちょっと仲のいい友達なら普通だよな?
「っし!行くか!」
 悩んでいても仕方が無い。とりあえずせんべいだけは確保して、絶対にちゃんとお礼をするという決意を胸に一歩踏み出した…つもりだったが。
「どこいくの?ほら帰るよ?」
「え?でも買い物!ええとその!」
 何故かカカシさんが俺の腕をがっしり掴んでいる。どうしよう。これはマズイ。このパターンは確実に逃がしてもらえない。何度かやったけど、すぐに捕まったんだよ! 足の速さもだけど、わんこたちが八匹ももふもふ寄って来るんだぞ!そりゃ撫でたくなるに決まってるだろ!かわいい顔でなでてくれって言ってきたらそりゃもう我慢できるわけが無い。
「俺が済ませたから。ほら、イルカ先生の好きなケーキも買っといたよ。下ごしらえも済んでるし」
「でもほら!ええと!せんべい!パジャマ!酒!」
「はいはい。後でね」
 ひょいっと担がれて、瞬く間に景色が過ぎ去っていく。
 …今日が期限だったのに…!半泣きの俺を慰めるように、併走するわんこが大きな声でワンと鳴いた。


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適当。
ホワイトデー中忍無事確保されるの巻。

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