チョコレート、つづき(適当)
これのつづきー。

「練習のつもりだったのに…」
ベッドの上で膝を抱えている男は、しょぼくれている割には散々人を貪ってくれた訳だが。
どうもイベント前に既に相当に濃厚な行為をしでかしてしまったことを悔いているらしい。
悔いるなら一方的に俺に無体を働いたことの方が先だと思うのだが、この男のことだ。そんなコトなど思いつきもしないだろう。
「本番はもうナシですよ…」
こんなこと何度もされたらたまらない。
途中から盛り上がったのは…まあ俺にも多少の責任があった。
それは認めるとして、だからといって何度もこんな…第一食べ物を使って遊ぶなんてマネをしたら、慰霊碑の両親に申し訳が立たない。
男の嫁なんてものになっている辺りにはまあ目を瞑ろう。母ちゃんなら、幸せならいいんじゃないと笑ってくれそうな気がするし、父ちゃんは…常識の固まりみたいな人だったから、まあ血の雨が降ったかも知れないけど。
チョコまみれのベッドは元々そういう模様だったかのように飛び散った茶色に彩られ、ついでに青臭い体液までが散っている。
酷い惨状だ。
ここが男のうちでよかったなんて思うほどに。
薄情だといわれても、こんな酷い状態の部屋を…しかもあんな原因で汚れてしまったのを掃除する気になどなれるはずもない。
そもそも体のほうがついていかないだろうと、軋む体に溜息をついた。
「う、うぅぅ…!イルカ先生のけちんぼ!あんなかわいいことしたら止まれないし!」
「かわいいっていうな!アンタの幻覚だ!」
なにがどうなってそういう思考に至ったかは考えても無駄だ。
これまでの短くもないがさほど長くもない付き合いの中で、いい加減思い知らされている。
俺が飯を食ってるだけだというのにかわいいと喚いて、最終的になんでそんなにエロいの!などと叫んだ挙句に襲われたのがこの男との最初の行為だというのだから、この男の頭の中身は救いようがない。
…その前に一方的ながら一応告白めいた物と付きまとっているに近いが所謂お付き合いと呼べるものがあったからまだましだが、なかったら恐らく俺はコイツを血祭りにあげていたと思う。
「…なんかチョコ溶かしてかけてたらチョコまみれのイルカ先生想像して興奮してきちゃってたのに、無防備にうちに入って来るんだもん…!」
合鍵を使ったのはそういえば初めてだったか。
涙ながらに訴える男を見ているのも業腹で、逃避をはじめた思考でふとそんなコトを思った。
使いたくなかったというわけじゃないが、毎度毎度勝手に家に押しかけてくる男の家に、わざわざ行こうと思わなかっただけのことだ。
…一生使わなくて良かったかもしれないとか、使っていなければ当日に同じ目に合っていたんだろうかなどと考えてみたものの、どうせこの男のことだ。諦めるはずもないだろう。
「腹減ったから帰ります」
正直足腰へのダメージは相当なモノがあったが、ある程度は自業自得だ。それにこの部屋にいる方が危険なのは分かりきったことだし。
うっかり隙を見せればこの男のことだ。また何がしかの行為を仕掛けてくるのは間違いない。
だが、立ち上がろうとしたはずの体は思うように動いてくれなかった。
痛みもそうだが男がそれを許さなかったのだ。
「俺も、イルカ先生が食べたい」
いつの間にか腰の上に乗られた挙句に覆いかぶさられていた。
目つきが違う。コレはマズイ。
男の何を刺激してしまったのかわからないが、確実に俺を狙っているのは確かだ。
「俺は、腹が減ってるんです」
今度こそ視線を逸らさずに睨みつけてやった。
はじらいもなにもなく全てをさらけ出したままの男の興奮が眼前に展開されているこの状況は、非常に精神的に消耗するにしても、早々簡単に同じ目にあうつもりはない。
「…イルカせんせ歩くの大変でしょ?このままここにいてよ。ずーっと」
このセリフも何度聞かされたことか。
なにかというとうちに上がりこんで泊まっていくのも、これが狙いに違いない。
離れたくないというのは、女性の方だとばかり思っていたのだが、この男はこうしてやたらと俺を側に置きたがる。
…逃げ場が欲しいというのは俺のわがままだ。
この男のことだから手に入れたから捨てるなんてことはありえないだろう。
ただ俺が溺れて苦しさを訴えるほどの愛とやらを、一方的に注ぎ込み続けるだけに違いない。
自分も男だ。程ほどに快楽に溺れることを知っている。
この男ほど享楽的にはなれないが、肌を合わせることへの抵抗はもう殆ど残っていない。
恐ろしいのは全てがこの男に埋め尽くされて、戻れなくなることだ。
いつ失ってしまうかわからないものに依存などしたくない。
「いいから、…飯、なんかあるんですか」
男をはぐらかしてこうして逃げてばかりいても、少しずつ、だが確実に男は俺を追いつめる。
「んー?先に食べてからってのもいいかなー?ちょっと待ってて?」
「…どうせ帰す気なんかないくせに」
いそいそと台所に立つ男に小さく毒づいて、それから溜息をついた。
とりあえず、バレンタインまでは油断できそうにない。
戦いはもうとっくの昔に始まっているのだから。
イベントごとに託けてじわじわと確実に俺を捕らえようとしてくる男なら、このチャンスを逃すわけがないだろう。
…襲ってきたのは単に欲望に負けたせいだろうけどな。
あとどれくらい、誤魔化せるだろうか。失う恐怖ごと愛したら、きっと俺は。
「はい!チョコバナナトースト!おいしそうでしょ?」
…とりあえず重苦しい空気をぶち壊してくれた男には、拳を落としてやった。


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適当ー!続けてみたり。
バレンタインなのでおとなふうみにしようとしてかけらも…・°・(ノД`)・°・
ま、いっか。
ではではー!お気が向かれましたら突っ込み等御気軽にどうぞー!

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