最終決戦 チョコの日7(適当)




これの続き。

 中忍の部屋の前で立ちはだかる俺は多少目だったらしい。哀れみとも取れる中途半端な微笑みを向けられると居心地は悪かったが、何か用があったらしい後輩がおびえて逃げていったところをみると殺気でも漏れ出していたのかもしれない。
 ま、どうでもいいけど。だってこれからイルカの踊り食いだし?
 ケーキはもちろん料理だなんだもその気になればすぐに片付いた。さっきから背後の扉でやっぱり準備…とか、何もってこうとか不穏な言葉が聞こえてくるから気が急いて仕方が無かったのが原因の一つでもある。
 だがさりげなく普段どおりを装うことは忘れなかった。部屋に連れ込むまでは油断させておかなくては。
「行くよ」 「はい!」  玄関を開けるとそこで背嚢とどこかで貰ってきたらしい丈夫そうな紙袋と風呂敷いっぱいにガラクタを詰め込んだ中忍が待っていた。
 ガラクタ…じゃないのかもしれないけど、とりあえず何かしたかったってことだけは良く分かった。イラナイっていっても変なところで頑固すぎるこの男の頭には余計なことばかりが渦巻いたに違いない。迷惑をかけたくないといいながら、一番の障害となるのがこの男らしいところだ。
「…その大荷物は置いていっていいから」
「で、でも!パジャマと歯ブラシと下着とバスタオルと…札!クナイ!丸薬!まくら!花札!トランプ!」
「イラナイ」
 全部一式こっちで用意したし、クナイと札もって俺の家で乱闘でもするつもりだろうか。花札とトランプなんてする暇を与える気もない。行き先は教えておいたはずなんだけど、勝手に色々考えすぎて準備するものもまとめきらなかったんだろう。
「…本当に大丈夫ですか?や、いつも布団は借りてますけど、迷惑かけちまうんじゃ…?」
「へーき。約束したでしょ?いこ?」
「はい!」
 伸ばした手は迷わずに掴んできたから、許してやろう。ある意味想定の範囲内の行動だしね。期待が暴走して訳のわからないことをするのはこの中忍の特技といっていいほどだ。結界が吹っ飛ぶような事態を引き起こさなかっただけマシだといえるだろう。
 計画の遂行に問題はない。今重要なのはそれだけだ。
「荷物は置いて」
「うっ…でも!」
「おいて?」
「はい…」
 紙袋はともかく、背嚢だけはどうあってもおいていきたくないらしい。匂いからして食い物だな。おやつ持参で遊びに来るってどうなのよ?俺に食わせたいものでもあったんだろうか。昨日は我ながらすばらしい手際でこの中忍を寝室に押し込んで寝かしつけた自信があるから、もしかして出しそこなった?背嚢を引っぺがすまでにかかる時間がもったいないし、説得に失敗して逃げられてもね…。
 ああ面倒くさい。もう、いいか。
「じゃ、いくよ?」
「へ?え?」
 怯む隙も与えずに担ぎ上げた。米俵でも運ぶみたいな格好だが、さくっとチャクラで固定したら、これも遊びだとでも思ったのか大人しくなった。
 顔が見られないのは残念だけど、これ以上もたくさしたくない。
「舌かむから黙っててね?」
「へ?うおわああ!?」
 後でこれも騒ぎになるんだろうなとうんざりしつつも、担ぎ上げたイキモノが必死になってしがみついてきたから、それは少しばかり気分がよかった。
 屋根も木も壁も、俺にとっては何の障害にもならない。ほとんど直線で移動して、玄関までたどり着くまであっという間だった。…はずだ。個人的にはこれで逃がさないで済む事とか、この期に及んで逃がしてたまるかとか、そんなことばかり考えていたからそれなりに長く感じたが。
「さて、ついたよ。入って?」
「すげえ!早いですね!俺も修行しなきゃなぁ!」
「うん。わかったから。ほら、早く」
「俺も脚は早いだと思ってたんですよ!さっきの壁のぼりからそのまま電信柱までの跳躍と、そこから…」
「ん。今度教えてあげるから入って?」
「はい!」
 手間のかかる中忍だ。扉の前でイラついた空気を纏う俺にも臆せずに、まだなにか言いたそうにしている。
 開いた扉に押し込んで、厳重に結界を張る。暢気に流石ですねとか言ってる間抜けな顔に、やっと少しばかりの達成感が湧いてきた。普段こんなに厳重に結界張ってないのに少しも疑問には持たないらしい。むしろこれから何が起こるんだろうと子どものように落ち着きなくそわそわしながら、零れ落ちそうに目を見開いて俺を見つめている。
 今からあんたをバリバリ食うんですよといってやりたい気もするが、それはもう少し後でいいだろう。
 とりあえず、このイキモノを黙らせるには食い物だ。
「ねぇ。今日が何の日か知ってる?」
「節分…は先週でしたよね?」
 予想通りの解答にいっそ安堵感さえ覚えた。やっぱりな。この男はチョコを貰ってから今日が何の日か考えるタイプの人間だ。だからこそ最初にチョコを寄越したときは、別の意味で驚いたし期待もしたんだけどね。
「…わからない?」
「えーっと…?あ!思い出した!チョコの日!今日でしたね!いつもアカデミーでチョコ作るって言われるから覚えてるんですけど、今年はカカシさんの秘密のなにかが気になって忘れてました!あはは!」
 能天気に笑ってられるのも今のうちだぞ中忍…!っていうかそうね。そういえば楽しみにしすぎて挙動不審だったもんね。おかげで周囲が色々察してくれて、こっちも根回ししやすかったけど。
「俺からのチョコ、受け取ってくれる?」
 箱を差し出すと、有無を言わさず手渡した。チョコって単語だけで嬉しそうに受け取ったと思しき中忍は、早速食卓の上で箱を開けている。現れたのは某高級洋菓子店で注文したわかりやすく直球にハート型をかたどったチョコレートケーキだ。
 さて、どう出る?
「チョコだ!ケーキですね!美味そう!」
 …それだけ?ま、予想してたけど。
「食べるでしょ?」
 朝飯を食ったばかりとかそういうことを気にしないイキモノなのは良く知っている。甘いものが好きで、小腹がすくと大福やまんじゅうや団子、それからナルトのために買い込んであるスナック菓子を二人してつまんでいることもある。
 しかもこの男の好みを見越して、見た目にもこだわって仕上げてもらった。今にもよだれを垂らしそうな顔をしているところをみると、俺の読みは当たったようだ。
「いただきます!でもなぁ。これ切るのもったいない…!」
「はい。フォーク。全部食べてもいいよ?お茶もあるし」
 ケーキは何も入っていない。流石に一般人に一服入れたものを作らせる気はなかった。他の食品に混ざったら大変なことになる。一応この有様でも中忍だから、そこそこの耐性はある。そうなると強い薬を使わざるを得ない。
 どうも一時期ナルトのことでたっぷり嫌がらせにあってたせいで、毒への耐性は規定以上だった。流石に媚薬はなかったみたいだけど、そんなものが万一少しでも混ざったら、一般人じゃひとたまりも無い。
 だから代わりにお茶に盛った。自白剤と、ついでにすぐには媚薬を。媚薬の方はすぐには効いて来ないようにしたのをたっぷりと。
 できれば俺に対する素直な感情ってヤツを聞き出したかったからだが、本当に食べていいのかといわんばかりにチラチラとこっちを見てくる中忍の態度から考えると、普通に聞いても何も考えずにぽろっと教えてくれそうな気もしてきた。
 俺の努力の大半はこの中忍の考えなしな行動で無に帰する。おかげで搦め手ばかり考えるようになったんだが、それが仇になったのか?
 まあそれはいい。ケーキを外注したのもできうる限り時間を取るためだっていうのに、こんなことでへこたれてはいられない。
「ハート型か…頭から?しっぽから?」
「どっちでもいいから食べていいよ?」
 そもそもどっちが頭でどっちがしっぽなんだかわからないんだけど、どうやらそこが重要らしい。さりげなくおいたお茶は躊躇いなくいつものように一気飲みしてたから、ケーキを食わなくても問題は無いんだけど、折角なら食べて欲しいでしょ?一応は俺の気持ちなんだから。
 …多分少しもわかっちゃいないだろうけどね。
 熟考の末、どうやらしっぽと称するハートの下の部分から食べることにしたらしい。アレだけ悩んだくせにガッと勢い良くフォークを突き立てて、随分大きな塊を切り出して、一気に口に放り込んだ。
「っ!う、うめぇ…!」
「そりゃよかった。はいお茶のおかわりまだあるよ」
「ありがとうございます!お茶も美味いですね!不思議な香りがして…へへ!」
「そ?よかった」
 不思議な香り、ねぇ?一応無味無臭のを選んだんだけど、野生の勘?ま、いいか。とにかく獲物は順調に罠に嵌りつつある。食ってる間は静かだし、ほんの少しの間だけ、猶予をやるのも悪くない。
 薬が効いてきたら嘘も変な遠慮も言えなくなるだろう。楽しみだ。
「うまい。へへへ!カカシさんも!はい!」
「どーも。…ん。中々いけるね」
 乱暴に切り取られた一口をやや無理をして頬張ると、俺にはやや甘すぎるが口溶けの良いチョコとクリームがとろりと舌の上で溶けていった。香りも中々だ。細かい注文に、きちんと答えてくれた店主には、今度お礼にいかなくては。
「そうですか!それはよかった!」
 もう自白剤が効いて来てるのか、それともただはしゃいでるだけなのか。
 とろんとした目で喜ぶ男は、酷く美味そうに見えた。

 


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適当。
バレンタインその7。おわらない!よ!

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