最終決戦 チョコの日5(適当)




これの続き。

今日も今日とて風呂上りの男を着替えさせて布団に押し込んで、同じ匂いのする体を抱きしめる。その幸福感に浸れるだけで決行してよかったと思う。
 ほぼ毎日泊まらせて下ごしらえという名の悪戯を繰り返し、少しやりすぎかなと思うくらいには下準備もできた。一つ何か思いつくと実地で確かめたくなり、そして今それを実行できる環境にいることがそれを後押しした結果だ。何かと予想外な行動を取る中忍相手であることだし、どんなに策を弄してもやりすぎということはないだろう。
 突っ込まないでいることがもはや本番への意欲を高めるエッセンスにすらなっている。その分愛撫への執拗さも我ながら常軌を逸したものになりつつあるのだが、当の本人がこの期に及んでさっぱり気付いてくれないからな…。
 腐っても忍。流石に目を覚ますと一応は体の違和感を不思議がってはいたが、変な寝相だったからだとからかいついでにマッサージの一つもしてやれば、喜んでその背を晒して寝転んでくれた。後はチャクラを流し込んで痛みを逃がしてしまうだけで、簡単に何があったか悩んでいたことすら忘れて朝飯を強請る始末。
 やっちゃったとしても気付かなかったんじゃないだろうかとこっちが日々悶々とし続けたことですら、恐らくは一生気づくことはないだろう。
 どうしても色々と汚してしまう都合上、男を丸め込んで洗って来いというのも日課になっていた。その結果一緒に風呂に入りたがるようになったのが誤算といえば誤算だが、こっちも色々と落ち着かないものを発散することができたせいで多少は余裕がある。
 風呂でちょっかいをかけてやるのも、洗ってやるついでにきわどいところに触れて戸惑う中忍をからかうのも十分に楽しめた。甘えん坊さんですねとかいう台詞は耳を素通りさせておいたことだし、くすぐり勝負とやらにも勝利を収めておいたし、当日何があってもどうとでもできる…はずだ。
 寝て起きて、明日になったら…待ちわびていた日がやってくる。計画通りに事を運ぶために万難を排して望むつもりだ。
 たとえば連れ込む予定の俺の部屋には、たっぷりその手の薬と下ごしらえを済ませた手料理、それに酒に思いつきで揃えた性具…縄なんかも含めて勢ぞろいしている。風呂もこの中忍のために二十四時間いつでも入れるという触れ込みのものを設置済みだ。…まあこれは随分前からだが珍しがって通ってきた時期があって、今でもそれは気に入りのままだから、それだけでもある程度餌にはなる。
 残す作業といえば、ケーキを買ってくるくらいのものだろう。すでに開店時間に合わせて即受け取れるように影分身がスタンバイしている。
「ふへ?ふが?ふ…ッ!んん…?」
 鼻をつまんでやってももがもがと手をもぞつかせるだけで逃れようとはしない。軽く乳首を弄ってやるだけで鼻に抜ける声を出して口を半開きにしたまま喘ぐ。尻はもちろん全身余すことなく弄り回してやったおかげで、短期間だった割には満足の行く結果だといえるだろう。
 ま、もちろんこれだけじゃ足らないから、それはこれからたっぷり仕上げにかかるつもりだけど。
「覚悟しててね?」
「うぅ?…みそらーめん麺カタチャーシュー…」
 額にかかる髪を掻き上げてやったらまたそれか。ラーメン屋への執着はやはり危険だ。といってもすでにこっちも抜かりなく手は回してあるんだが。
 酒を飲むとどうしても一楽に行くと言い張るから、今日のところは臨時休業にしてもらってあるのだ。イルカ先生の誕生日を祝いたかったんだけどねぇなどと呟く店主に、かねてから尋ねたがっていた上質な豚肉が生産されている土地への旅行を用意した。帰ってきたら是非その肉を使ったチャーシュー麺を振舞って欲しいといえば、涙を流して飛んでいってくれた。行きかえりは後輩たちが足になってくれる手はずも整えてあるから、明日以降ならラーメンをねだる男に食わせてやれるだろう。それにしてもあの直情傾向はある意味そっくりだ。側にいると似てくるんだろうか。まさか…俺も、いつか?
 まあいい。とにかく今日はこれからこの男に朝飯を食わせて俺に部屋に連れ込むところから始めなければならない。
 睡眠時間の不足は昼間の任務中に補っておいたのもあって苦にならなかったが、初めてといっていいほど押さえ込むのに苦労する欲を、やっと開放できるのだと思うとそれだけで頬が緩む。
「カカシさん…朝飯は、塩鮭…!」
「はいはい。ちゃんと用意してあるからね?」
 妙に深刻そうな顔で呻いているが、抱きしめると、反射なのかしがみついてくるようになった。着々と進んでいく計画は、この突拍子もない行動をとりまくる中忍であっても、もはや押しとどめることなどできまい。そもそも本人が気付いてないんだ。事を成し遂げるまではそのままでいてもらえるだろう。やっちゃってからも気付いてもらえなかったら、気付いてもらえるまでやり倒せばいい。頭に入らなくても体は正直だ。使い古されたイチャパラにもでないようなフレーズだが、実際のところそれはまさにこの男にはぴったり当てはまる表現だと思う。
 俺はもう十分耐え、そして努力した。そろそろご褒美って物をもらってもいいはずでしょ?
「へへ…カカシさん…」
「ん。しっかり休んでおいてね?」
 明日は寝かせてやるつもりなどない。朝までコースで、この男の反応次第では、そこからさきもイけるところまでどこまでもやるつもりだ。俺と、それからこの人の分の休暇申請はすでに受理されている。
 三代目には呆れられたが、ぷうぷうと間抜けな寝息を立てているこのイキモノの同僚たちは、こぞって喜んでくれていた。
 あんたなにやったのって本人には聞けなかったんだけど、事がすんだらラーメンでもなんでも餌にして聞きだしておかなくては。何せ俺のモノにするんだから他人事では済まない。
 興奮からかいつも浅い眠りは更に酷く、薄くまどろんだだけの体にじんわりと獲物の匂いと体温が染み込んでいく。
 こうやって、いや、これ以上に溶け合えるまで、あと少しだけ我慢すればいい。そう思うとこの穏やかな時間に浸れることを、妙に感慨深く思ったのだった。



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適当。
バレンタインその5。ひっぱりすぎて当日編が長いので分けます…。

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