これの続き。 「ん、ぁ…っ!」 感覚を残したのは失敗だったかもしれない。男の声がこんなにも情欲を煽るものだとは知らなかった。いつもはハキハキとしゃべる口から、途切れがちに、甘く掠れた吐息交じりのそれが零れ落ちる。たったそれだけでわだかまる熱が暴発しそうだ。 苦痛を与えればそれなりに反応するはずだが、さほどの抵抗もなくこの行為を受け入れている。流石に違和感はあったようだがしばらくそうめんだシソだネギだと呟いた後、尻に指を押し込んでも、少し強引に弄り回しても痛がらないどころか素直に喘ぎ始めた。 もどかしげにシーツを蹴る足に勢い余って口付けても、指先を食んでも、嫌がるどころか甘い声が上がる。唇を重ねたときなんてもっと酷かった。食い物の夢をみているみたいだったから噛みつかれるかと思ったら、逆に嘗め回すように舌を絡ませてきた。 飴か何かと間違えていたんだろうが、こっちにとってはそんな事情は関係ない。思うさま貪って、頭に血が上るあまりいっそこっちに突っ込んでやろうかと思い掛けたほどだ。食い意地が張ってるだけあって、意外と舌がいいこの男にそんなことをすれば、恐らく違和感に喚くだろう。 忍の常で、痛みには意外と鈍感なのが救いか。日々無茶をし続けるこのイキモノだからこそ、騙しきれると判断したとはいえ、苦痛を訴えられたら計画そのものを考え直さなければならないところだ。 「緩んできた」 指がもう三本入る。ぐるりと広げるように回して引き抜くと、刺激を失ったそこが疼くのか、非難の声が上がった。 「っや、ぁんで?」 フルフルとかわいらしいピンク色の性器を震わせ、先端からは白いものがとろとろと滲み出している。指で散々かき回した尻は赤くぬかるんで、美味そうにてらてらと光っている。そこに、熱く尖った己の性器をねじ込めたら…それはどんなにか気持ちいいことだろう。痛いほど硬くなったそれは開放を求めてはち切れんばかりだ。 先端を押し当ててるだけで、くちゅりと音を立てて締め付けてくる。まるで飲み込もうとでもしているかのように。 入れてしまおうか。奥まで一気にぶち込んで、腹がはち切れるまで中で出してしまいたい。きっと泣き顔ですら興奮するだろう。それから…。 「…ッ駄目。まだ」 腰を退くのに要した精神力は桁外れだった。普段なら性欲ごとき簡単に押さえつけられるはずだというのに、我ながら驚くばかりだ。 もちろん怖気づいたわけでも罪悪感にとらわれた訳でもない。もはやそんなものは擦り切れてしまっている。 押しとどめたのはただ一つ。ココまで我慢したというのに、今ヤってしまうのはどうだろうということだけだ。 上忍の中でも誘惑の多い立場にあって、鉄壁の忍耐力を持つと称えられてきたんだ。耐えるのは得意な方だし、今食ってしまって後で後悔するよりはと思うと何とか押しとどめることができた。 とはいえこのままじゃお互いに終われない。おもむろに手をかけたのは、かわいらしく勃起したままの男の欲望で、己のものと合わせて握りこむとトクトクと激しく脈打っている。他人の鼓動をココまで身近に感じるのは久しぶりだ。この男を手に入れると決めてからはすっかりその手の行為から遠ざかっていた。性欲のコントロールは得意な方だと思っていたが、この男相手だと上手いったためしがない。 「こっちも辛いけど、このまま放置されるのも辛いよね?」 「っあぁ!」 甲高い声は肯定だと思い込んだ。ほんの少しこすり上げてやるだけで、滴る白いものが指を、それから一緒に握っている俺自身を汚していく。見ているだけで欲情する。 「っ出す、よ!」 「っくぅ!あ、あ……熱い…?」 ビクビク脈打って長く吐き出したそれで男の腹の上を汚した。白く滴る青臭い…己の匂いをまとった男をみているだけで、征服してやったような気がして妙な満足感がある。 今日のところはここまでにしてやろう。 達したばかりで辛いのか、用意しておいたタオルで拭うだけで全身を引くつかせる男に、また少しだけいたずらしてからパジャマを着せてやった。 シーツも変えてしまった方がいいだろう。流石にこの状態を見れば、シーツに染み込んだものの正体が何なのかくらいは分かってしまうはずだからな。いっそドロドロのこれをわざと残しておいて、夢精したと思い込ませてやるのもアリかもしれないが、どうしてやろう? 「カカシさん?うー…みず。みず」 …完全に覚醒したわけじゃないな。寝ぼけたまま枕元にいつも用意してやっている水をさがしているようだ。時計を見れば結構な時間が経過している。ほぼ予想した薬が切れる時間通りと言っていいだろう。 不思議と焦りはまるで感じなかった。計画通りにすべきことを実行した。 「ああほら、危ないでしょ?はいどーぞ」 コップを持ち、男の状態を起こす。そこまでは良かった。 だが、次の瞬間、水の入ったコップを探す手が、俺の手にぶち当たった。 普段ならこんなことはないが、薬が残っているせいで上手くいかなかったに違いない。 「うお!つめてぇ!」 「はいはい。こっちおいで」 はっきりと悲鳴を上げて目を見開いた男を抱きとめて、胸元をびっしょりとぬらす水をふき取り、ぬれたシーツを引き剥がす。 水が冷たかったせいで目を覚ましはしたようだが、薬がまだ残ってるな。これは。 ぼんやりしてるうちに色々片付けてしまうことにして、さっさと抱き上げて風呂場に連れ込んだ。 「あ?え?風呂!風呂!」 「ほら脱いで。シーツと着替えは今持ってくるけど、まだお湯に入らないようにね?」 「あ、はい!すみません…飲みすぎちまったみたいで」 すまなそうに言いつつ、いつも通りにこにこする中忍を置いてさっさと目的のものを手にして戻ってきた。この状態で一人で風呂なんて無理に決まってるからな。 「はい。着替え。大丈夫?流すだけにしとこうか?」 「大丈夫です!水で目が覚めましたから!一緒に風呂ってのもいいもんですねぇ!ああでも狭いか」 そこでしょんぼりするのがまたね。まあらしいっていえばらしいんだけど、さっきまであんたを強姦しようとしてた男なんですけどね。俺は。知らないとはいえホンットーに聞き管理意識が低い。色んな意味で。 ま、計画の遂行には有利なんだけど。 「風呂、広い方が好きなの?」 そ知らぬ顔で服を脱ぎつつ男を観察する。さっき隅々までみたつもりだけど、生き生きと動き回るというか…落ち着きなく一緒に風呂に入れることを喜んでいる男をみるのは中々楽しかった。あーヤリタイ。まだだ、あと少し。もう少しだけ我慢しなければ。 「ああ、俺温泉が趣味なんですよ!カカシさんも良かったらご一緒しませんか?」 「んー。そうね。それもいいかも」 温泉で思いっきりやり倒すってのも中々楽しそうだ。そういうのはとりあえずバレンタインで、がっつり全部いただいてからだけど。 「へへ!温泉楽しみだなぁ…!」 すっかり中忍の夢…温泉で美味い飯と変わり湯を堪能するという旅行プランを聞く時間になってしまったが、一緒に入るせまっくるしい風呂は、それなりに楽しかった。 ******************************************************************************** 適当。 バレンタインその4。まにあうといいなー_Σ(:|3」 ∠)_ |