これの続き。 傷の手当もそこそこに担ぎ上げられ、途中までは必死に意識を保とうとしていたものの、あまりの移動速度に途中で体の方が限界を迎えた。 まあその、有体に言えば失神したわけだ。 …おかげで上忍には寝顔がかわいかったなんて恥ずかしいコメントまで貰う羽目になったんだが。 この人、目が悪いんだろうか。 その上病院にでも連れて行ってくれるのかと思ったのに、今なんでこんな所にいるんだろう。 「三代目」 「おお!イルカ!無事であったか…!ようやったのうカカシ!」 じいちゃん…もとい、ここは三代目の執務室だ。 報告は式で飛ばしたもんだと思ってたんだが、何か他に追加事項があるんだろうか。まさか俺の無事を見せるためなんてことはないだろうし。 「あの、この方に助けて頂きまして、任務中だったんですか…?」 「ん」 頷いてくれた所を見ると…つまりこの人任務ほっぽりだしたってことじゃないか!? それに俺を置いていった部隊の連中にも連絡できていない。まだあの辺りにいるんだろうか。 俺の焦りを見て取ってか、三代目が苦虫を噛み潰したような顔をして語りだした。 「アヤツらはすでに帰還した。お前が死んだという報告と共にな。…処分ももう決まっておる」 なるほど。やはり計画的なものだったか。 …死んでるなんて実際に止めも刺さずによくも言えたもんだ。せめて確認くらいはしておけば、誤魔化しも利いただろうに。つくづく頭が悪いってことか。 俺の命を狙う理由は、死ぬつもりはないけど百歩譲ってわからなくもない。でも里に損害を与えるようなウソまみれの報告をするなんて、処分してくれといってるようなものなのに。 っていまはそうじゃなくて、この人の任務だ任務! 「すみません…!こちらの方に助けて頂いてしまいました。任務が…!」 「そうだった。あの、今日俺誕生日なので、この人を貰うことにしました」 「へ?」 わけがさっぱりわからない。何を言い出したんだこの人!? 「…お主…!よもやイルカに無体な真似を…!」 頼みの綱の三代目まで青筋立てて怒り出してるし、頼りになりそうにない。 こうなったら、自力でなんとかするしかないだろう。…なんとかできそうな気がしないけどな…。 「あの、任務は大丈夫なんですか?」 まずコレが先だ。勿論俺がプレゼントとかいう辺りは激しく問い詰めたい所ではあるが、公的なモノを片付けてからでも十分だ。 幸いここには里長がいるんだし、説得、いやむしろ実力行使しないようにしてもらわないと…!じいちゃん怒るとキセル投げるんだよな。機密まみれのこの部屋の壁の修理は、最終的に俺たち内勤の中忍が…。 「現在も継続中ですよ?そうですよね?三代目」 「…なるほど。いや、そうじゃな。確かに継続中…」 だめだ。なんだかじいちゃんが落ち着いたのはいいんだけど、二人だけで納得されても俺には事情が飲み込めない。 「あの。任務の内容は?」 「貴方を守ることです」 うわぁ…綺麗な顔!じゃなくてだな!なんで笑ってんだこの人!なに素顔さらしてんだ!覆面忍者なんて珍しいと思ったけど、隠してるのは隠さなきゃいけないだけの理由があるからじゃないのか!? …あれ?ちょっと待てよ? 「あのー…守るってことは」 くるりと三代目に目を向けると、ぷかりと煙を吐き出して頷いてくれた。 「お主を狙う計画がわかってすぐに、コヤツを向かわせた。じゃがの、もうこの任務は…」 「だから俺のモノになってもらった方が安全ですし。犬たちもいるし、俺のモノに手をだすような連中はいませんしね。それに部下たちも俺のモノに手を出す連中を許さないでしょう」 さも褒めてくれとばかりに微笑む男を前に、思わず俺は倒れこみそうになった。 めまいがするなんてもんじゃない。この人は目的と方法をもうちょっと理解すべきというか…方便にしろ男を自分のモノにだなんて、正気を疑う。 「あのですね。そもそも俺はモノじゃ…」 「誕生日のお祝いはなんでももらえるはずですよね?」 不思議そうにそう聞かれると、思わず頷きそうになるじゃないか。 なんていうか、疑うことを知らない子どもみたいにまっすぐな目を向けられると、ついつい…。 誰に言われたのか知らないが、素直すぎる気がするんだが大丈夫なんだろうか。この人。どこの箱入りむす…ああ男だよな。この人。凄くきれいな顔してるけど。 「この任務はこやつの無事を持って終了じゃ!…お前の祝いはワシからまた考えておく。今日は帰って休め」 「はーい」 返事はあっさりしたものだったから、自分の勘違いを理解したもんだと思ったんだ。 だから、油断した。 「え?わっなにすんですか!」 「帰りましょうねー?憩いの我が家へ。これから愛の巣にもなりますし」 「え?え?えぇぇえぇ!?」 満身創痍の俺には、凄まじい速さで飛び出した男の背にしがみ付くのが精一杯で、真っ赤な顔で喚く三代目の言葉を聞き取ることもできなかった。 これからどうなるんだろうと不安になりながら。 ********************************************************************************* 適当。 もうちょいつづ、き…! 一生かけて守るつもりの上忍と、なにがなんだか分からないうちにプレゼントになった中忍。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |