誕生日特権(適当)


「…ッ!」
もう何度目か分からない攻撃を食らった。じりじりと体力を削られ、そろそろ失血の方もマズそうだ。
消耗戦に持ち込まれたら不利なのは自分の方だ。
…仲間とはぐれたか、それとも意図的に囮にされたのかは知らない。
同じ任務についていた連中は、突然の襲撃に応戦しはじめてまもなく全員姿を消した。
正直任務自体が胡散臭いものだっただけに、これが計画的なものだった可能性すら考えている。
「仲間たってなぁ…あからさますぎんだろ」
突然の依頼に対応するための急ごしらえの部隊編成とはいえ、アカデミー教師まで借り出す理由があるほどの内容じゃなかった。
掃討任務で全員逃げるなんてありえないしな。
幸いにして腕はそれほど落ちていなかったのが救いだった。
内勤が長いとどうしても腕が鈍るから、長期にわたるものはないにしろ、ちょっとした任務を引き受けるようにしていた甲斐があったってもんだ。
だがそうして足掻いてみた所で相手も忍だ。そう簡単に逃がしてはくれない。
いくらなんでも多勢に無勢だ。戦いながら逃げるにも限界ってもんがある。
「一人相手にナニ梃子摺ってやがる!」
「殺せ!」
騒ぐ連中を一度に潰すには派手に暴れなければならないが、ここは国境地帯だ。
騒げば依頼人にも迷惑がかかる。任務内容が他国との問題を避けたい国主からの依頼なのに、ここで下手を打てば本末転倒だ。
…それにそもそもチャクラが厳しい。
「万事休す…なんてな…」
気弱になり掛けたものの、あっさり諦めきれるような性格じゃない。
自爆に見せかけて逃げるか、それともいっそのことチャクラ切れと処分覚悟で派手に大技を…使えないんだよなぁ…。
「なにやってんの?」
殊更暢気な物言いに、驚くよりも呆れた。
「みりゃわかんだろ。戦闘中だ!」
新しい敵かと思いきや、どうやら味方のようだ。
「ふぅん?」
返事は気のないものだったのに、一瞬にして、それこそウソみたいにあっという間に敵を屠りだしたからだ。
その姿を見る限り、木の葉の忍らしい。額宛が斜めになってはいるが、まちがいなく同じ里の印が刻まれている。
その見事な戦いぶりに一瞬ほうけたものの自身も勿論クナイを振るい、気付けばなんとか敵は片付けられたようだ。
「ありがとうございます。その、先ほどは失礼しました」
階級は確実に上だろうし、それよりなにより命の恩人だ。…どうにも胡散臭い男だとしても。
頭を下げた俺に、男が不思議そうに首をかしげた。
「なんで一人?これ確か国境の人浚い片付けて来いってやつじゃないの?」
そうだな。そのはずだった。
さっきまでは逃げた連中のことを慮るほど余裕がなかったが、今は一応命も助かった。
さて、この男にはどこまで告げていいモノだろうか。
…見知らぬ男に忌み嫌われている己の立場の説明などしたくはない。
「はぐれました。たまたま奇襲されまして、ありがとうございました」
説明としてはウソはついていない。
本当でもないけれど。
「そ?…ねぇ。俺誕生日なの。今日」
唐突すぎる物言いにとっさに警戒した。
誕生日、だが誕生日か。それは一応祝うべきなんじゃないだろうか。理解できない行動が目立つとはいえ一応命の恩人相手なんだし。
「そうなんですか。それはおめでとうございます」
「だからさ、頂戴?これからの時間」
「あ、の…時間といいますと。隊長に報告も済ませていないのですが」
「そ?じゃ、式飛ばしとく。…いこ?」
白い鳥は木陰に飛び込んでみえなくなってしまっている。今更ちょっとまてなどとはいえそうにない状況だ。
…まあいいか。俺が勝手に逃げたわけじゃないし、生き残っていることを知られたとはいえ、この男のおかげで却って面倒ごとになりづらいかもしれない。
「お供します」
祝うにも今さっき知ったばかりで、言葉以外に持ち合わせがないが、それでも酒をおごるくらいならできるだろう。
寂しい男に祝われるのが嬉しいとは思えないが、この上忍の気まぐれに付き合うのも悪くない。
…誕生日に一人なんて寂しいもんな。
そんな風に考えていた俺が、これからの時間というのがプロポーズのつもりだったと知るのは…里に帰ってすぐのことだった。


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適当。
つづき、ます。多分。
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