これの続き。 いつも寂しそうな顔をしている人だと思っていた。 何かを諦めた瞳は、その強さとは裏腹に脆い感じがして、俺をいつも不安にさせる。 里最強の忍とさえ謳われる人を捕まえていうのもおかしな話なんだが、どうしても、ふとした隙にいつの間にかどうにかなっていそうで目が話せなくて…気がついたらこんな関係になっていた。 無理ばっかりするくせに自分をないがしろにするこの人は、どうにもなにか勘違いしているような気がしてならない。 何が原因かは知らないが、自分を大切にしないくせに、他の誰かが同じことをするのはこっちが驚くほど忌避しようとする。 こうなった切欠もそうだったかもしれない。 出会った頃、俺は背中にざっくり風魔手裏剣を刺されたせいで、結構な大怪我をしていた。 手当もしたし、通院もしていたが、血の匂いは隠せない。 痛みに耐えることには慣れていたが、動きは流石にいつも通りというわけにはいかないから、人目の無いときは流石にぐったりして過していた。 …俺がこの人を不安に思って見つめている間に、この人も俺のことを見つめていたらしいと、後で知った。 つまり。そんな俺を見ては勝手に不安になってたってことだ。 「心配なんです。ずーっと見ててもどっかで怪我とかしてるんじゃないか不安なんで、付き合ってください」 そんなセリフで口説かれているなんて気付けるわけがない。 「はぁ…?」 不審げな声が飛び出した。…きっと顔にも出ていたと思う。 「だって、どこかで動けなくなってたらとか思うと、息も出来ない」 淡々としているようでいて鋭さを宿した声で、カカシさんが俺を抱きしめた。 ぎゅっと抱きしめられると痛みが走って、思わず呻いた俺に、カカシさんは笑った。 「こうやって側にいたら、痛いとか苦しいとかすぐに分かるでしょう?…今みたいに」 その酷く悲しそうな笑顔に…俺の心は捕らえられてしまったのだ。 ***** それからも、ちょっとでも怪我をすれば大騒ぎし、もしそのまま家に帰ろうものなら、丁寧に丁寧に手当てを施して、まるで確かめるように俺を撫で回して、それからやっと…それでもまだ不安そうに眠りにつくようなありさまだった。 そのくせ自分が怪我をしても、痛みなど感じないとばかりに無茶をする。 それで倒れても、苦しいとも辛いとも言わずにただ耐える。 俺が怒っても宥めてもすかしても…まるで自分を使い捨ての道具みたいに扱うことは止めてくれない。 どんなに言い聞かせても「不安だから」の一言で俺を抱きこみ離さないくせに、俺には心配させさせてくれないのだ。 そんな男の誕生日がもうすぐやってくる。 …当然、少しでも思い知らせてやろうと思うに決まってる。 「サプライズってのも…悪くないよな?」 今日も今日とてチャクラ切れ寸前で帰って来た恋人に、飯を食わせて寝かしつけるのに苦労した。 いつも通り一人で勝手になにか考え込んで納得してるみたいだったが、こうなったら思い知らせてやらなきゃ気がすまない。 …どれだけ俺がこの人を失えないと…愛しいと思ってるのかってことを。 寝息さえかすかな恋人を腕の中にしまいこんで、計画を練った。 どうせやるなら多少派手なくらいがいい。 とりあえず…ケーキもそんなに上手くはないけど、ちょっといつもより豪勢な食事でも用意して。 …それから、まずは抱きしめてキスして押し倒してみようか? 驚くほど臆病なくせに、悲しくなるほど自分嫌いの男のために…そんな理由で俺の思いを無視する馬鹿に、死ぬほど俺を欲しがらせてやりたい。 用意した道具はちゃちだけれど、多分確実に引っかかってくれるだろう。 なにせ自分に対しては鈍すぎる男は、俺に関してだけは敏感だから。 「カカシさん…覚悟しといてくださいね?」 ほくそ笑む視線の先で、俺の膝になついた何も知らない…分かっていない男が、ふわりと幸せそうに笑った。 ********************************************************************************* てきとー! ただいまなのでつづきをかいたのですがねむいのです。 ではではー!なにかしらつっこみだのご感想だの御気軽にどうぞー! |