かわいいは正義8(適当)




これの続き。


 少し熱いくらいのお湯が肌を打つ。この人の好みの温度だ。その横で一生懸命タオルに石鹸をぐいぐいこすり付けて泡立てている。もちろん全裸だ。
 指の間から泡がこぼれて、二の腕を伝って排水溝に消えていく。足元はまだ怪しいみたいなのに、俺のために必死だ。
うわー!なにこのサービス!なんてことは言えないし、言わない。
 今は帰ってきた俺を労わりたいって気持ちで衝動的に動いているだけだろう。自分がどれだけおいしそうな状態かなんて、それに俺に無防備な姿をさらすってことがどれだけ危険かってことも忘れているに違いない。
正気に戻ったら恥ずかしがって大騒ぎしちゃうだろうから、下手に刺激せずにおとなしくしてた方がおいしい目に遭える。
こういうときはいい子にしてないとね!理性がどこまで保つかは自信ないけど。
「はい。背中ながしますよ」
「はーい」
 おとなしく風呂椅子に座ったら、がっしがっしタオルをこすり付けられた。きもちいい。背後を取られても平気なのってこの人だけだし、ちょっと力強すぎるけど一生懸命やってくれてるんだろうなって思うともう舞い上がっちゃうしかないでしょ。
 しかも全裸。見えないってのは残念だけど鏡に映る真剣な顔だけでも、ちょっと元気になってきちゃいそうだ。どこがって、下半身が。
 むらむらしつつ気持ちいいからがんばって大人しくしていたら、どうやら至福の時間は終わりを告げたらしい。
「うっし!背中終わったし体は…」
「はーい。今度は俺の番ね?座って?」
 洗ってもらう間に理性の糸が切れる自信がありすぎたし、俺も触りたかったからタオルをさりげなく奪い取って、ついでに腕を引いて椅子に座らせた。
 目を白黒させてる間に背中を流す。ガシガシ洗われるのが好きなのは知ってるからちょっとだけがんばってみた。
 ちょっかいかけるなら洗ってから。ちゃんと油断させてからじゃないと、色々。ね?
「俺はいいから!」
「気持ちよくない?俺、下手?」
「そんなことあるわけないでしょうが!」
「そ?なら良かった」
 あーちょっと別の意味にも聞こえて興奮する。一回聞いてみたいって思わなくもないんだけど、あれだけいい声出して濡れて出してドロドロになってる人に聞いちゃうのもなーって。演技とかできる人じゃないし。腕は今後も磨くつもりだけどね?もちろんこの人と実地で。
 そう。今からでも。
「っあ!そこ、背中じゃ…んっ!」
「うん。折角だし」
 背中を流し終わってイルカ先生がタオルを取り返そうとそわそわしだしたのを見計らって胸に触ってみた。後ろから抱き込んでるのをいいことに、触り放題しちゃうのもいいよねって思って実行しただけなんだけど、タオル越しにこすっただけでこんなにエロい顔してくれるとか最高でしょ?
 逃げようとする体を抱きかかえて、すかさず今度は俺が椅子に座って、上に乗せたままさらに際どい所にタオルを滑らせる。
「やっ!ちょっ!まっ!うぁ…!」
 いい反応だ。なんだかんだ言うけどイルカ先生のも元気になってるんだし、ここで一回はしたい。一回で終われるかどうかは怪しいけど。
 湧き上がる期待と欲望の赴くまま、耳かじったりもう芯を持ち始めて震えているところにだって指を絡ませてみたいんだけど。
「っ待てって、いってんでしょうが…!」
 あらま。形勢逆転?
 振り払われたタオルは泡を飛ばしながらタイルの上に落ちた。首の後ろなんて限りなく急所に近いところをつかまれてもこの人相手だから興奮するだけだし、向き合う姿勢は鏡越しじゃなくても顔が見えるからそれはそれでいいんだけど、えーっと?もしかして怒ってるの?
 それならさっさと謝っちゃわないとって謝っても振ってくるだろう拳骨を覚悟したのに、圧し掛かった体はそのままやる気に満ち溢れていた俺の性器を飲み込んだ。
「えっちょっ!」
「っ!くっ!ってぇ…!」
「ああほら、無理するから!」
 散々やった後でまだ緩んだままだとはいえ、無理やり突っ込んだら痛むに決まってる。なにせいつもは俺が腕によりをかけて痛みなんか感じさせないように丁寧かつ逃げられないようにちょこっとだけ甘えつつ、イルカ先生が言い訳できるようにやや強引にコトに及んでいる。それに慣れた体には衝撃が強すぎたらしい。
 呻いて苦しそうにしてる顔なんて見たくない。抜くにもこの体制じゃ痛みを与えてしまいそうで怖かった。
「っい、いから…じっとしてろ」
 乱れた息と共に寄越された言葉はまるで命令のようで、とにかく目的のためになら割と無茶をする恋人をこれ以上傷つけないために、とりあえずは素直に動きを止めた。
「ね。無理しないで?」
 そう口にしたのはこの人が心配だっただけだ。別に負けず嫌いなこの人を煽ってどうこうしようだなんて欠片も思っちゃいなかった。
「そっちこそ」
 にやりと笑ったその顔はぞっとするほどの色気があって、背筋が震えた。唇はぶつかるように重なって、それを合図にゆらゆらと目の前の体が上下する。
「っ…ッ!まって、ホントに無茶は…!」
「気持ち、イイですか?」
 はっはっと暑い日の犬の吐息にも似たそれが首筋を撫でる。すがり付いたのは多分体を支えるためなんだろうけど、耳元でそんなことされたら、滅茶苦茶にしたくなる。こんな状況だってのにそれはマズイでしょ?一緒に気持ちよくなりたいだけで、傷つけたいわけじゃないんだから。
「そんなの!当たり前でしょ!あなたとしてるんだから!」
 …ま、うん。ちょっとあまりの事態に珍しく取り乱してたんだと思う。こんな台詞聞いたこの人が何をするかなんて、考えてみればわかったことなのに。
 にかっと、こんな状況に不釣合いな笑顔を寄越したと思ったら、ガンガン腰を使ってきた。この人も男だ。こんな状況じゃ止まれないのはわかるけど、こっちは気が気じゃない。
 そのくせ、こんなに求められていることに、それから愛読書にあるような積極的な恋人にも興奮することを止められない。
「へへ…俺の、勝ち」
 慌てたまま快感に引きずられかけた体を、その言葉が引きずり落とす。
「っもうがまんできない」
「…俺も」
 駆け引きなんてどうでもよくて、ただこの最高にかわいい恋人に目がくらんで。
 休みだからといういい訳も手伝って、本気で失神するまでやっちゃったっていうのは、さすがに反省しなきゃかも?


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適当。
超低速更新。

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