これの続き。 お湯はしっかりためておいた。自分だけならそんな面倒なことしたくないからシャワーで十分だけど、お風呂好きだもんね。 ゆっくり湯船に浸かるようになったのもこの人と暮らし始めてからだ。体を洗うって行為に匂いや毒や血を洗い落として消すって意味以外のものを見出してこなかったから、風呂に入るという行為そのものを楽しむってこと自体が新鮮だった。 ま、一人だといまだにわざわざ時間をかけてしたいこととは思わないんだけどね。 「シーツが…洗わねぇと」 「ん。洗濯機回すから大丈夫」 この期に及んで非常に現実的な心配をするところも好き。もうちょっと色っぽい雰囲気に持っていきたいと思ったこともあったけど、この人の場合、そういうところが隙を作って、かえっておいしいってことに気づいちゃったんだもん。 たっぷり注ぎ込んだモノを滴らせながら震えてるくせに、シーツだなんだってよろつきながら、もうこぼしても大丈夫なところに移動した途端に自力で歩こうとしちゃうもんね? 「任務帰りなんだからもう寝なさい。今日は休み取れたんですか?」 もうね。きりっとした顔でかっこいい。それに情事のけだるさをまとったままで言われたら、労わりの言葉は誘い文句にしか聞こえない。 「お休みとれましたよー?」 「なら、よかった!へへ!」 あーもう。この顔。たまんないよね。 心底うれしいって、たかが任務明けの休みのために。 ま、確かに任務明けだからって休みがあるとは限らない生活送ってるけど、できるだけそばにいたいといつだって思ってる。 ちょーっとばかりこの人のスケジュールに手を回すくらいには。 「ね、明日お休みとりましょうよ?」 ついでとばかりにだめもとでそそのかしてみた。だって折角の休みなら、一緒にいちゃいちゃしたいじゃない? どうせ中々休みなんて合わないし、駄目なら一人で修行するだけだ。 どっちかっていうとオネダリというよりは甘えてみたって方が正しい。 「あ、その」 んー?この反応。もしかしていけそう?意外だ。 たしかにどうしてもだめな予定はなさそうなのは確認済みなんだけど。アカデミーはもう休みに入ったし、受付の予定と通常任務の予定なら結構自由が利くはずだ。この人、腕がいいし、事務仕事も速いし、それなのに驕ったところがないから周りも結構融通をきかせてくれるんだよねぇ? 上忍の権力をちらつかせてやろうとして、あいつ無理するんでよろしくお願いしますなんて言われて、嫉妬と誇らしさでちょこっとばかり八つ当たりしちゃったこともあったくらいだ。 でもそんな立場にあっても、絶対に自分勝手な理由で仕事に穴をあけることはしない人でもあるんだけどね。今日も、無理かなー?どうかなー?いっそもうちょっと甘えてみせようかと策をめぐらせたとき、耳元にささやき声が届いた。 「…もう、休みとってあります」 えーっと。それは馬鹿がつくほど真面目なこの人がわざわざ俺のためにってことで。うそでしょ?めちゃくちゃ嬉しいんだけど。 「…イルカせんせ。大好き」 抱きしめついでに尻とか二もちょっかいかけてみたんだけど、俺の感動の眼差しの方がイルカ先生にとっては重要らしかった。 「俺も離れたくなかったんで。へへ!ま、まあその、とりあえず風呂、入りましょう?洗濯は俺が」 「ん。お風呂入りましょうね?」 幸い服は脱ぐまでもない。脱がせたのもシーツも洗濯機に放り込んで、この人の思考を家事から引き剥がしておいた。俺がやるっていえない状態にしちゃえば、それ以上のことは言ってこないだろう。 恋人を抱え込んだままちゅーなんかしつつ、下心をたっぷり隠しつつ、洗ってあげるなんて言っちゃうつもりだったんだけど。 「背中、流します」 シャワーをひねってそう口にしたのはイルカ先生の方だった。 ******************************************************************************** 適当。 超低速更新。 |