夏のおでかけ4(よめばなし)


これの続き。


本当は里でも閉じ込めたいっていう欲望を押さえつけるためにも、イルカ先生には協力してもらわなくちゃね?
そう独り決めして昨日より幾分面やつれしたイルカ先生に口付けた。
「イルカせんせ。ほら、もう朝ですよ?」
食事すらままならないくらいくにゃくにゃになったイルカ先生もたまらなくかわいい。
どうも覚悟決めててくれたみたいなんだよね?
出かける前も色々荷物に詰め込んでたし、着いてからもこそこそ丸薬飲んでるの何度も見たし。
それが嬉しくてついつい…抱き潰すまではまだ言ってないと思うんだけど、ちょっと所でなくかわいがりすぎてしまった自覚はある。
ま、それはイルカ先生が一生懸命俺に応えるために折角準備してきてくれたんだし、なによりすごーく男前でかわいいせいってのもあるから仕方ないよね?
もう足だって広げたままでいるのがやっとなくせに、かすれた声で俺の名前なんて呼んじゃってくれるし、キスするとうっとり目を細めて愛してるなんて言ってくれちゃうしで、我慢って言葉の意味を忘れるほどに俺の理性のタガは緩みっぱなしだ。
「う、うぅ…?」
快感の余韻を残して潤み、焦点の定まらない瞳が俺を映す。
ゆっくりとその瞳に意思の光が宿り、その瞬間。
…蕩けるように嬉しそうな顔でイルカ先生が笑った。
「それ、反則」
これから食事だ。そうしないと流石にこれ以上やったらイルカ先生を壊してしまう。
もう大分体にがたが来ているこの人に、さらにダメージを与えるのは避けたいし、なにより…これ以上やったらこの一時的だったはずの蜜月を永遠のものにしたくなる。
ここで、ずっと。愛しい人とドロドロに溶け合って混ざり合うだけの時間を過ごすために、
与えられた能力も使命も忘れて、いや、むしろそれら全てを退けてでも、この閉ざされた巣のような空間にいたいと望んでしまったら…きっとこの人が一番悲しむだろう。
里を愛し、里を守り、子供たちを、里の未来を育てることを望む人だから。
側にいてくれる。そしてそうありたいと思ってくれている。
…それだけで我慢できたらいいのにね?
でも…どんなに欲しくても、これ以上は駄目だ。
「うぅ?ああ、飯の匂いが…」
「そうですね。そろそろご飯にしましょう?」
この人を壊したいわけでも、悲しませたいわけでもないのだ。
そっと抱き起こして背を俺の肩に凭せ掛けた。テーブルの上には俺が指示したとおりに、イルカ先生の好物と、イルカ先生が気にしそうだから俺の好物も乗っている。
食事が終わったら、俺も一緒に少し休もう。隣にこの人がいて眠れるわけがないにしても。
「ん。もうちょっとだけ…」
ぽてんと頭が俺の肩に懐いた。眠そうに目を瞬かせて、乱れた髪もそのままに擦り寄ってくる。
こういうときに限ってどうして誘ってきちゃうの!
「イルカせんせ。…ねぇ。ご飯食べましょう?イルカ先生が食べないなら俺もご飯…」
欲望に追いやらせそうな理性がひねり出した策は、なんとか功を奏してくれたらしい。
「え!そんなの駄目だ!食べる!食べるか…つぅ…!」
カッと目を見開いて大慌てで目を覚ましたイルカ先生が、慌てすぎて痛むらしい腰を抱えて呻いている。
ああ、ほんっと俺って愛されてる!
「ほら、無理しちゃ駄目ですよ?…ね、俺にこうやって凭れててください」
「あ、はい!…本当にできたよめさんだよなぁ…!」
しみじみという顔が本当に嬉しそうで、自分まで嬉しくなる。
俺はきっとこの人のためなら何だってできる。里を滅ぼすことも火の国を消すことも…それから、この湧き上がる欲望を押さえ込む事だってきっと。
「一杯食べてくださいね!」
欲望を笑顔の奥に押し隠し、無防備に口をあけたイルカ先生に次々と食料を放り込んだ。
…あとちょっとだけなら、きっと我慢できると己に言い聞かせながら。


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よめ。
ちょっとした祭り???
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