夏のおでかけ10(よめばなし)


これの続き。


「起こしてあげないと」
そろそろここを出なければいけない。
確かに休暇は今日までだ。でも本当ならもう少しここにいられたはずなのに…眠るイルカ先生のよだれを拭いてあげながら見つめていたら、変色老人から任務の式が届いてしまったのだ。
腹立たしいことこの上ない…!やっぱりあのジジイいつか…!
…ていっても、今回ばかりはありがたいかもしれない。
ここの地下に隠し部屋でもつくればあのジジイでもイルカ先生を見つけられないだろうとか、このままここに閉じこもっていたいっていう願望を押し殺すのにも無理が出てきていた所だ。
好き放題に貪れる俺だけしか見ない、俺だけに愛を囁く俺だけのイルカ先生。
それを独り占めすることになれすぎるのが怖かった。
任務なら、幼い頃から刷り込まれてきた条件反射のように割り切れる。…ていってもイルカ先生関係だとそう上手く行かないもの事実なんだけどね…。
まあとにかく、俺が任務に行っている間、ここで待っていてもらってもいいんだけど、暗部の連中は俺のかわいいイルカ先生に興味津々だ。
うっかり目を離した隙に血迷った馬鹿に妙なマネでもされたら場合によっては里ごと滅ぼさなきゃいけなくなるじゃない?
そんなことしたらイルカ先生が悲しむ。…一楽とナルトたちがいれば平気そうな気がしないでもないんだけど。
ああ、あとあのろくでなしの爺さんもか。
ていっても、確実にあの爺さんより俺の方がずーっと愛されてるって自信がある。
最初の頃はどうだったのかわかんないけど、イルカ先生が俺に注ぐ愛情は、今や里中の誰よりも激しい。
自分のよめだって公言して憚らないし、小さなことでかわいい嫉妬もしてくれちゃうし、その激しい報復っぷりのせいで、俺にくっついてくる面倒くさい連中も、イルカ先生のファンも今の所決定的な行動に出られないでいる。
たまーに外回りの連中がうっかり俺の大事な伴侶だってことを知らずにうっかりちょっかいかけたりもするけど、大抵は俺か、俺が留守の間は俺のかわいい後輩たちがなんとかしてくれる。
もつべきものは優秀な後輩だよねぇ?それと、物分りのいい部下。
あの人になにかあれば俺がどうするかをちゃーんと分かっている。
新しく部下になった下忍たちも一人を除きある程度はそのことを把握しているだろう。
…それ以上に、あの子達はイルカ先生が悲しむことを絶対に望まない。
つまりそれだけ俺は愛されちゃってるって訳だ。俺の愛しいイルカ先生に。
「イルカせんせ…ね?おきてください」
「んぅ?ぅー?んや…」
もごもごとむずかるイルカ先生に思わず股間が疼いた。
…でも流石にマズイよねぇ?多分今だってたって歩けるかどうか怪しいもんだし。
「イルカせんせ…お願い。おきて?」
「ふぇ?お願い…?お願い!え!何があったんですか!?」
うーん。やっぱりおねだりには敏感に反応してくれるなぁ?
…今度はもっとコアな…。
ああだめだめ。今はそれ所じゃなかった!
「任務が入っちゃったんです…。最終日だしゆっくりお散歩とかしたかったのに三代目が…!」
よよよと泣き崩れたフリをすると、イルカ先生が血相変えて俺を抱きしめてくれた。
「まさかまた…!なんて酷いことを!…じいちゃ…三代目には俺から言っておくから、ちゃんと休んでなさい!今すぐ…うっ!」
体を起こそうとしたイルカ先生は、すぐにぺちゃんとつぶれてしまった。
そりゃそうだよねぇ?だって昨日お風呂でシテ、ご飯食べてからもシテ、ちょっと寝て起きたらもう一回シテ、それでもかわいい寝顔で喘ぎ声みたいな寝言いうから全然足らなくてまたしたんだもん。
流石に中忍としてはタフな方のイルカ先生でもまともに歩くなんてできないはずだ。…ま、多少確信犯的なモノがあったってのは否定しないけどね?
「イルカせんせ…無理しないで?…でも、ここにおいていくのは心配だから、ちょっと早いけど一緒に帰って欲しいな…?」
ぎゅっと手を握った。暖かくて優しくて俺なんかよりずっと強い手を。
すぐにそれは握り返されて、力強い笑顔までもらえた。
「一緒に帰りましょう!…じいちゃんにはちょっと色々…!」
あ、殺気。…イルカ先生の本気か。あのジジイ、終わったな。
「いっぱいいっぱい一緒にいられて、すっごく楽しかったです!」
そう、まだもうちょっとだけ我慢しよう。
…先生の顔も忍の顔も好きだから。
「俺も!楽しかった!よめさんと二人っきりって最高だもんなぁ…!後はもうちょっとがんばらないと…!」
この分だとイルカ先生も楽しんでくれてはいたみたいだ。
…俺もだけど、イルカ先生も結構独占欲強いもんねぇ?
つまり、次の機会はいつでも狙える。あの爺さんさえ何とかすれば。
「荷物は忍犬君たちに頼んだんです。だから…はい!」
「ふえ!?わー!ほら重いでしょう!下ろしなさ…ん!」
「イルカ先生、俺、急いで帰ってくるから待っててくださいね…?」
抱き上げたせいでぴちぴちはねてくれたイルカ先生にキスを落として、帰ったら予定していた分のいちゃいちゃタイムをしっかりあのジジイからもぎ取ろうと決めた。
蜜月の記憶ごと大事な大事なイルカ先生を抱きしめて。


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よめ。
一応終わり?ながかった…!
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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