とある上忍のけいかく8(適当)


これの続き。


しにねたちゅうい。可能な限りこれ読まなくても平気な感じで続きを書く予定。





「間に合った、かな」
いい匂いだ。大好きな人の匂い。ずっとずっと嗅いでいたくなる。
でも、もう時間がない。
手紙を枕元に残して、戸締りもきちんとして窓から逃げ出した。
枕に残っていた黒い一本の髪の毛。持ち出したのはたったそれだけ。
「イルカ先生」
今はまだ会えない。
*****
「カカシ?」
「父さん…」
泣きつかれて眠ってしまったのかもしれない。
月光を背に立つ父さんの顔は暗くてよくわからなかったけど、心配してくれているのは声を聞いてわかった。
「…すまない。帰還が遅くなった」
「うん。お帰りなさい。お疲れ様。何か作ろうか?」
この時間じゃ多分面会にもいけない。多少は無理を聞いてもらってるけど、それでも流石に真夜中じゃ母さんの負担にもなる。
どのくらい、俺はここから消えていたんだろう。
あの未来の俺と主張する男に捕まったのは、父さんが任務に発ってから丸三日は経っていた。今回の任務はそう長くはかからないと聞いてたし、多分そんなに長くはなかったんだと思う。
…イルカ先生と過ごした時間はたったの10日。
その間にこっちでは何が起こっていたのか、俺は知らない。
「…カカシ。すまない」
「とうさん?」
「病院に行くから支度をしなさい」
「え」
「…すまない」
なんであやまるの?何で泣いてるの?やめてよ。
「とうさん」
「…行こう」
繋いだ手がものすごく冷たくて、ちょっと前までずっと側にいてくれた人の温かい手を思い出していた。
世界が遠くて、何かもが凍りついたみたいに動けない俺を、父さんが抱きしめてくれたことだけを覚えている。
*****
もうずっと悪かったから、あとほんの少ししか時間がないってことは分かっていたはずなのに、俺を見て笑ってくれた母さんがもう本当に危ないのだと信じる事が出来なかった。
「ごめんね。カカシ」
なんであやまるの?母さんは少しも悪くないのに。
「母さん」
近寄るのが恐い。大好きな母さんなのに。…触ったら消えてしまいそうで。
「ごめんね…。もうちょっとだけがんばるつもりだったけど」
そういって困ったように笑った顔は、青白くて、冷たい指先が頬に触れた瞬間肌が泡立った。
この冷たさを知っている。…それに、もうすぐ動かなくなる生き物の匂いがする。
弱った忍犬が、仲間たちが、最後に纏うあの匂い。
頭が真っ白になった。
何も考えられなくて、俺ごと母さんを抱きしめる父さんが、弱々しく抱き返す母さんが、お互いに何度も何度も謝っているのを聞いていた。
…明け方になって、任務だと告げに来た誰かに父さんが連れ出されて、母さんのベッドの横に椅子を置いて眠ってしまって。
目覚めるたびに少しずつ細くなる息に怯えながら、ずっと側についていた。

父さんが真っ青な顔で飛び込んできて、そうして手を握ってただいまっていって、でも母さんは笑うだけでもうしゃべることもできなくて。
それからすぐ、静かにその息を止めてしまった。

握ったままだった母さんの手が冷たくなっていって、父さんの手が震えてたのと、ぽたぽた零れる涙でシーツに水玉が散って、濡れてるなって、そんなどうでもいいことを思って。
そこからどうしたのかはよく覚えていない。


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適当。
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