とある上忍のけいかく29(適当)


これの続き。



「うー…あ?」
外が暗い。ってことはちょっと昼寝のつもりがしっかり寝ちまったってことで、晩飯の買い物が!
「カカシ!すまん!寝過ごした!」
大慌てで起き上がって冷蔵庫の中身でも出来る晩飯を考えつつ、カカシに謝った。
でも、いない。隣に確かにいたはずなのに。
「え?」
腹をすかして何か作っているのかと思って台所も探したし、トイレに行ってるのかもと思って真っ先に確認した。風呂場や押入れ、果ては冷蔵庫の中まで覗いたのにどこにもいない。
買い物に行ってくれたって可能性はあるけど、カカシは結構な甘えん坊だから、俺を置いていくってことはまずないはずだ。
「まさか…ゆゆゆゆゆうかい!?」
ありうる。十分にありうる。だってかわいいからな!うちのカカシは!
親…というか、保護者の欲目を差っぴいても、傾城とか傾国とかそういうレベルだと思う。現に、商店街のおばちゃんから、通りがかる同じ年頃の女子から、果ては小さな子どもまで、カカシを見てはため息をついたもんだ。
カカシはまだちっこいせいか、そういうのにあんまり反応しなくて、ただおまけをくれるときだけはちゃっかりお礼を言ってたくらいだ。
つまり、いつ変態に狙われてもおかしくない。
想像するだけで血の気が下がった。
でももう下忍以上、もしかすると中忍程度の実力がありそうなカカシを襲うってことは、むしろ敵の忍かなにかに捕まったという可能性もあるじゃないか。
どんどん悪い方にいく想像に、涙と共に鼻水まで出てきそうだ。
心配で心配で心配で、うちの子になにかあったらどうしたらいいんだと叫びだしそうになりながら、手だけは素早く必要そうな武器や札や、追尾やトラップに必要になりそうなものばかりを選び取っていく。
誘拐か、それとも襲撃か、どっちにしろ今すぐにでも助けに行かなきゃいけない。
どこかなんてわからん。だから片っ端から探すしかない。
その前に三代目にも連絡し、場合によっては増援をと、素早く印を結んで式を作ったところで、飛び立つ寸前のそれを、何者かが捕まえた。
「…誰だ!」
武器は揃っている。もちろん対侵入者用の仕掛けもだ。男の一人暮らしだったころならそんなもん気にもしなかったが、なにせカカシがいたからな。
複雑な事情がありそうなあの子を、安心して過ごせる環境で育てたいと思って何が悪い。もしかしてこいつがカカシに何かしたんだろうか。タイミングからしても怪しすぎる。
そういえば昼寝のときも妙に早く眠くなったし、それに…最後にカカシと。
…まてまてまて。今それは思い出すな!こんな誰か分からんヤツの前で隙を見せるわけには行かないんだ。
「ええと。ごめんね?」
「え?」
その声は幾分低くなっていたけど、話し方には聞き覚えがあった。
カカシそっくりだ。いやカカシはこんなにでっかくはないんだが、だってこの男は、俺と殆ど変わらないくらいの背丈がある。
カカシも大分でっかくなったとはいえ、ちょっと昼寝しただけでいきなりこんなに育ったりはしないはずだ。
ということは、血縁、か?死に別れたと聞いていたが、まさか暗部だから伏せられていたとか?
良く見るまでもなく、侵入者は暗部装束をその身に纏っている。しかも髪の毛の色までカカシそっくりで、嫌な予感が湧き上がるのを眩暈と共に感じていた。
奪うつもりか。俺から、カカシを。
心臓がバクバクと五月蝿く騒いで、怒りなのかそれとも奪われ失うことへの恐怖なのか、頭にガッと血が上るのが分かった。
「えっと。上手く言えないんだけど。…とりあえず、続きから」
「は?え?あ?」
面が外されて無造作に投げ落とされたそれはカランと予想以上に軽やかな音を立てて床に転がった。
髪の色だけじゃなかった。カカシが育ったらこうなるんだろうなって顔の男がそこにはいた。あの整った容姿もそのままに、幼さだけが綺麗に抜けている。奇妙な余裕さえ感じられる笑みに、どこか落ち着かない気分にさせられて、さっきから戸惑ってばかりだと情けなさに涙が滲んだ。
「カカシを…返せ!」
親戚だろうがなんだろうかかまうもんか。
あの子は、うちの子だ。
ま、まあその、下半身やらなにやらに色々と問題も起こったりもしたが、そんなもん気合で何とかしてみせる。
火影様に掛け合って許しも貰ってるんだ。後からのこのこきたって、いくらそっくりだってそんなもん構ってられるもんか。
中忍の威嚇なんて暗部に効きやしないだろうと分かっていても止まることなどできなくて、とっさに掴みかかった腕は、だが振り払われることもなく、代わりに包み込むように頬をなでられた。
な、なんだよ!なんだコイツ!外側だけじゃなく、仕草までそっくりなんてどういうことだ?
まさか、まさか本当に?
疑念を確信に変えてしまいそうなほど、その瞳に宿る光さえカカシそっくりで、なんでか勝手にぽろぽろ涙が零れてきた。
「事情の説明はちょーっと難しいんだけど、ただいま。イルカ先生」
「え?え?」
「俺にとってはすっごく長かったんだけど、イルカ先生にはわかんないよね?」
「え?え?え?」
「…あーどうしよ。いいかなぁ。あの時はへたくそなキスしかできなかったけど、色々ちゃんと勉強してきたから」
「なにをだ!なんでだ!カカシ、なのか?どうして?」
「…うーん?なんていうか、運命?」
チャラけた物言いは、カカシじゃないんじゃないかという思いを増強してくれたが、照れたときに頭を掻く仕草は、逆にいつものカカシそのものだ。
なんで。なにがあったんだ?
へたり込みそうになる足を叱咤して、目の前にいるカカシのそっくりさんが本当にカカシなのか見極めようとした。
混乱していても、チャクラを感じ取るくらいはできるから、まず真っ先にそこから探る。
「…チャクラ、いっしょだ」
うそだろ。いやもしかして変化か?
色の違う瞳だけは渦を巻くような別のチャクラを感じるんだが、もしかして妙な術でも掛けられちまったんだろうか。
想定外の事態に焦っているのは俺ばっかりで、カカシもどきの方はというと、熱心に俺に触れては何かを堪えるような顔をしている。
なんだよ。なんなんだよ。俺のカカシを返せ。お前は誰なんだ。
「あのね。今日はアイツみたいになりたくないから、これだけ貰っておくね」
ふっと重なった唇は、次の瞬間我が物顔で進入してくる生暖かくぬめるモノ…舌からめてきやがった!ななななななにすんだ!
「んぐ!もご!うー!」
カカシが心配で倒れそうなのに好き勝手されて、怒りのあまりクナイを抜きかけたが、あっさりいなされてそのまま担ぎ上げられた。降ろされた先はさっきまで二人で、カカシと一緒に転がっていたベッドの上だ。
「ただいま」
どうしてくれようこの男。好き勝手しやがってぶん殴る!
そう心に決めていたのに、その縋るような声が、瞳が、その全部をへし折ってくれた。
ああくそ。反則だ!
「おかえり」
カカシなのか、そうじゃないのかは置いておいて、里に戻ってきてこんなにも迷子みたいに心細そうな顔されたら、放ってなんておけないだろ。
「うん。ただいま」
嬉しそうにしがみ付いてきた体はしっかりとした大人のもので、それなのに縋りかたがあの子そっくりで。
…訳も分からないままその場で大声で泣きたくなった。カカシかもしれない男の前じゃできなかったけどな。


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適当。
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