とある上忍のけいかく28(適当)


これの続き。



イルカ先生は半分以上眠っていたけど、一瞬だけでも最後にキスできてよかった。
原因には殺意さえ覚えたとしても。
「クソガキ…!」
…ま、この男は納得してないみたいだけど。
「アンタに言われてもね?」
コイツの言うクソガキである俺が、いずれコイツになるんだから、きっとコイツがガキの頃に同じことをしているはずなんだ。
だから腹が立たないかっていうと、俺なら八つ裂きにしたくなるだろうけどね。
「タイムリミットだ。お前は返してやる」
お前は?ってことは、やっぱりしばらく会えないのか。
一瞬の恐怖と、だがそれ以上にその続きが気になった。
「次は、いつなの?」
「うーるさいね。ああくそ!クソガキ一匹八つ裂きにしても、良く考えたら次のヤツの方が!」
…こういう所はやっぱり俺だよね。いくつになっても変わらないって言うか、いくらでかくなっても中身はそう大して変わっていないらしい。
でも俺はこんなに下種じゃないと思うけど、これから色々あって変わっていくのかもしれない。
その結果としてイルカが手に入るならそれでいい。
今はそう割り切ることにした。
この男のように強くずる賢く、時を超えられるだけのチャクラと知識を手に入れなくてはならない。
そのためになら今会えなくなっても我慢できる気がした。身を切られるようになんていうけど、任務で切られたときなんかとは比べ物にならないくらい辛いんだとしても。
「…どうすんの?俺を、消す?そうしたらアンタも消えるんでしょ?」
「そーね。…嫌なこと思い出したから、お前はさっさと片付けて、次を考えなきゃ」
一人でぶつくさ言っているところを見ると…キスでも八つ裂きだったんだから、次こそはこの人に触れて、一つになる事が出来るんだろうか。
「楽しみ、かも」
想像するだけで細胞全部が喜びに震えた気がした。
次に会う時は、この人を俺のモノにできるんだとしたら。
…もうそれだけで生きていける気がした。
きっとまた下らないちょっかいは掛けてくるだろうけど、俺もこの男も俺だ。最終的にはどんなに苦しもうと結果を受け入れざるを得なくなる。
俺が何をしても、どうせこの男にはなにもできないのだから。
「…いやだねぇ?まだチビガキのくせにスケベ臭い笑い方しちゃって。せいぜいイルカせんせに迷惑かけないようにしなさいよね」
「それはこっちの台詞だろ。…さっさとしろよ」
しっかりしがみ付いていたイルカの手は、さっきこの男の手により引き剥がされてしまった。本当は縋りつきたいけど、今は無理だから。いなくなったら泣いてくれるだろうかとか、考え始めたら止まらなくなるだけだから。
だから、男に催促してやったのに。
「そーね。…消毒してから」
そういって、男がイルカを抱き上げて…あろうことかキスをした。
「殺してやる…!」
頭が沸騰した。コレが俺の未来なんだとしてもそんなことなどどうでも良くなる。
飛び掛った所で勝ち目はなくて、イルカを傷つけるわけにはいかないからうかつに手も出せない。
くそ!最低だコイツ!
「はは!できるもんならね!…イルカが泣くよー?そりゃもうちょっと怪我しただけで、大変なコトになるのに」
未来でも俺は愛されている。そしてそれは俺が今与えられている親のような兄弟のような愛じゃなく、俺の望むような伴侶としての物なんだろう。
そしてそれをこの人からもぎ取ったのは、今の俺じゃない。
「…黙れ」
「じゃ、チビガキはかえりましょうねー?俺は帰ったらいちゃいちゃしようっと」
にやにやしながらスキップまでしている男が自分の未来だというのは、紛れもない事実だろう。
怒りに染まった頭は、だが恐ろしいほど冷静で、あまりにも己に似すぎていることに吐き気がした。
いつか、俺はこうなるのか。…あの人が手に入るのか。
「…イルカ。好き。待ってて」
こんな男より絶対に幸せにしてみせる。
その誓いがどんなに矛盾していようが構わなかった。俺にとってはイルカがすべてだから。
「つまんないのー。…ま、せいぜいがんばんなさいよ。最低でも時空間忍術はモノにできてないとね」
「そ」
「かわいくないクソガキなのにねー?イルカせんせったらもう!」
「触るな」
イルカを間に挟んでもみ合いになって、男が俺の手を振り払おうとして、そうしたら、イルカの手が俺を掴んだ。
「カカシ…へへ」
にへらっと笑って、でも意識はないんだろう。口の中でモゴモゴと何か言っているが、聞き取ることはできなかった。
「「かわいー…!」」
意図せず被った声にお互いに目を見合わせると、なんとも言えない間抜け面がこっちを見ていて、怒っていたこともどうでもよくなるくらい脱力してしまった。
「…行くよ」
「…ああ」
イルカ。待ってて。
そうして、それきり押し黙ってしまった男の手によって、俺はまた元の時間に放り出された。
…予想以上に怒りも悲しみも薄くて、ただイルカに会うためだけに生きようと思えたんだから、あの男の馬鹿さ加減も少しは役に立ったのかもしれない。


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適当。
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