とある上忍のけいかく21(適当)


これの続き。



「カカシ!」
ふらりと姿を消したカカシを見つけたときは、安堵のあまり腰が抜けるかと思った。
八百屋のおばちゃんには拗ねてるだけだから大丈夫とか言われたけど、そんなのわからないじゃないか。
…前だって、ふらって、急にいなくなって、随分長いこと戻ってこなかったじゃないか。
思わず中忍の本気で捕まえて、ついでにぎゅうぎゅうに抱き締めてしまった。
怪我は…してないな。よしよし!今のところ何かあったって訳じゃなさそうだ。よかった…!
嬉しくなって頭をぐしゃぐしゃに撫でて、そうしたらカカシがだな。こう…ぎゅっとしがみ付いてきたんだよ!かわいいじゃないか!
「イルカせんせ」
その上にこって笑うから、なんだかたまらなくなって、やっぱり俺がもうちょっとしっかりしてなきゃいけなかったと反省もした。
この子は優しいけど人見知りするのかもしれない。知らないおばちゃんと長々話してるなんて恐かったんじゃないだろうか。しかも八百屋のおばちゃんはどっちかっていうとしつこく話しかけてくる方だしな…。そして話が長い。
嫁を貰えとかよく言ってくるんだよなぁ。さっきは可愛いお嫁さん候補だねなんて言われて、カカシがいなくなっちゃったのにとりみだしながら男の子だってのを伝えたら、イルカちゃんがお嫁にいくのかいなんて言われるし!
多分他人とのかかわりに慣れてないカカシには、とてつもなく恐ろしかったんじゃないだろうか。
俺はガキの頃からの付き合いだし、おやつとか時々くれるし、威勢のいいおばちゃんが気に入ってるけど、カカシはな…。
だから、恐い思いをさせたことを謝らなきゃって思ったんだ。
「ごめんな…」
「謝らないで」
固い声。どこか冷えたようなソレに驚く間もなく、カカシがしがみ付く力を強くした。前よりも随分と背が伸びているから、腹が締め付けられてちょっと苦しい。
なんだ?どうしたんだ?
「カカシ?」
「…謝らないで。イルカ先生はさ、悪くないんだから」
顔も上げずにしがみ付いてくる。原因はわからんが、とにかくこんな風に不安にさせたいわけがない。
…まああれだ。ごちゃごちゃ何かを言いたい訳じゃない。なんでもいいんだ。カカシが笑ってくれるなら後はどうだってなんだっていい。
「カカシ。お願いがあるんだ」
「お願い?ってなに?」
「どっかに行くときは必ず声を掛けてくれ。…俺はさ、心配性らしいんだ。ずっと探しちまうだろ?」
「…うん」
申し訳なさそうにこくりと頷いてくれた。素直だよなぁ。言い訳もしないし。流石カカシっていうか…我慢、してたんだよな。我慢強い子を限界まで無理させちまったってことだ。もっと気をつけておかないと。
責めているように聞こえないようにと祈りながら、できるだけゆっくりなんでもないような口調で言った。
「だからカカシが何処かへ出かけるなら教えてくれ。任務とかで言えないこともあるだろうけどできるだけでいいから」
普通の会話みたいにさらっといえたつもりだったのに、視界が急に曇った。涙だ。
あー…まあその。寂しかったんだな。俺は。
カカシが急にいなくなって、取り乱して、不安でたまらなくなるくらいには。
「ごめん。ごめんなさい」
「謝んなって!お前がいっただろ?さっき。まあ悪いことしたならごめんなさいだけどな?」
わっしわっしなでる。手触りは最高だ。
「うん…」
ちょっと潤んだ瞳でにこっと笑ったもんだから、鼓動が煩い。なにがあったかは後でちょっとだけ聞いてみよう。
そう。後で聞けばいいんだよな。カカシがちゃんと側にいるんだから。
そのことが嬉しくて、ちゃんと帰ってきてくれたことも、これから俺んちの子だってことも嬉しくて、手を繋いでいそいそと家路を急いだ。
カカシにたっぷり美味いものを食わせてやりたいと思いながら。


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適当。
中忍、心配しすぎてはげかけるも、無事子狼を捕獲。
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