とある上忍のけいかく20(適当)


これの続き。



買い物に出て、手も繋いでくれて、それはよかったんだけど、イルカが商店街のおばちゃんに捕まった。
取り返そうと思って帰ろうって言ってみたんだけど、今度は俺まで餌食にされかかり、やたらと詳しく身元を聞こうとするから草かなんかなのかと思ったけど、あれはああいうイキモノらしい。
…白い牙の息子ってひそひそされることはあっても、こんな風にあけっぴろげに色々聞いてくるようなヤツ、はじめてみた。
おまけにイルカ先生にべたべた触る。物凄く不愉快になってさりげなく殺気をぶつけて威嚇してみたら、さらっと流された。
「なんだい?このチビすけは威勢がいいねえ!あたしの旦那のちっちゃい頃にそっくりだよ!」
レジの後ですーかーイビキをかいているおっさんを見る限り、それは明らかに間違ってると思うんだけど、とりあえず黙っていることにした。
…この女、秋道一族でもないのにこんなに太ってるけど多分忍だ。いや元かもだけど。
でもイルカ先生には触られたくない。限られた時間しか俺には与えられていないのに、どうしてこんな小うるさい女にそれを分けてやらなきゃならないんだ。
「カカシは、その。ちょっと人見知りやさんなんですよ。でもすごくいい子なのでこれからも宜しくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、小うるさい女が任せとけっていいながらまた背中を叩く。
なんだよ。触るな。それは俺のだ。
イライラして悲しくて、でもこれからもって言ってくれたってことは、本当にずっといていいと思ってくれてるんだなって、それは素直に嬉しかった。少しはさっきのイライラも我慢できると思ったのに。
でもそれは、何事かもそもそとイルカ先生の耳元に小うるさい女が囁いたときに決壊した。
「カカシ?」
折角一緒にいるのに、俺以外なんて見ないでよ。
こんなこと言ったら嫌われちゃうと思うのに、我慢できなくて、側にいたら傷つけてしまいそうで。
「…イルカ先生。すぐ戻るから」
あんなに一緒にいたかったのに、何があっても耐えられると思ったのに。
…瞬身まで使って逃げた俺を、あの人はどう思っただろう。
「イルカ先生の馬鹿…!」
こんなことで泣けやしないけど、あの日から泣いたことなんてないけど、それでも今泣けたらいいのに。
そうして一人になるところを探して、いつもの所に足を向けたはずが、ここは木の葉だけど俺の知っているところとは微妙に違っていることを忘れていた。
雑木林だった所は綺麗に整備され、里を一望できる公園のようなものになっている。
こんなにどこからでも見えるところにいたくない。…ここに俺を狙うヤツなんていないし、俺の本当の正体を知るヤツもいないだろうけど、それでも居心地が悪かった。
父さんなら喜んだんだろうな。綺麗だろうって、昔ここで。すっかり様変わりしてしまっていても、里を眺められることを喜んだだろう。綺麗だろうって、きっと。
…今はもういない人のことを考えていても仕方がない。少しは頭が冷えたし、もったいないからもう帰ろうと踵を返して。
そこに、いた。
とぼとぼと背を丸めて牛乳らしき物が入ったビニール袋を提げて歩いている。
先生と同じ色彩の子ども。
「お前が」
「なんだよ!お前ぇもなんか文句あんならかかってきやがれ!いーっつも遠巻きにしてこそこそこそ…気持ちわりぃんだってばよ!」
ああ、先生の子どもだ。チャクラのタチはクシナさんに似たみたいだけど…ん?歪み?
「封印…?」
腹を中心に歪なチャクラの流れがある。そうか。
この術式は俺も叩き込まれた。カカシ君ならできるとか、無責任なことを…なら、きっと先生も。
寒くなんてないのに、一気に体温が下がった気がした。
「ふーいん?何の話だってばよ?」
このクソガキのことは気に食わないけど、きっと一人で生きている。
先生がいたらこんな時間にフラフラさせたりはしないだろう。
…もうとっくに中忍になった俺にまで、その手の注意をする人だから。
「なんでもない。…お前、さ。腐ってないで修行しろよ。俺のイルカに負担かけるんじゃないよ」
同情もする。それに多分動揺もしていた。でも言いたいことは言っておく。
…イルカは、きっとこういうイキモノが大好きだからだ。
きっとタイミングだ。俺の方が先だったから、イルカは俺を大切にしてくれるけど、コイツにだって隙をみせてしまうだろう。子ども好きのお人よしだもんね。
好きになったのは俺が先だ。だから絶対に譲らない。
「俺のって…俺のってなんだよ!」
「俺のは俺のなの。…せいぜい精進しなよ?忍になるんでしょ?」
早く強くなってもらわないと。…イルカの懐に潜り込むのは俺一人だけじゃないと。
「そーいうおめぇはどーなんだよ!言ってみろってんだ!」
「もう中忍だよ。…多分もうすぐ上忍になる」
これは逃れようがない。能力的にも今の戦況から言っても、俺は貴重な戦力で、年齢なんて物を考慮してもらえる状況じゃない。スリーマンセルなんてものに放り込まれたのもそのためじゃないかと思っている。
もうすでに単独で上忍並みの任務をこなしている事実がある。昇進というよりは、ただ単にさっさと指揮権を持たせたいってことなんだろう。
「へ?う、うっそだあ!だってイルカ先生だって中忍だってばよ?」
「そ。ま、年に実力は関係ないしね」
優しい人。強さもチャクラのバランスなんかも悪くないのに、きっと非常になりきれない。
俺がやってきてからせっせと増やしていた家のトラップを見る限りじゃ特別上忍クラスだと思うのに。
「それに、それに!イルカ先生はみんなの先生だってばよ!お前のだけじゃねーんだからな!」
「…ふぅん?」
そうだね。お前も、奪われたんだ。それもずっとずっと早くに。この分じゃ先生の子だってことも伝わってない。
だからイルカだけなんだ。それ以外を知らないから。
「な、なんだよ!やんのか!」
怯えているくせに威嚇してくるのは、それがどうしても欲しいものだからだ。
自分だけのものじゃなくても、みんなのものでも、向けられる感情を独り占めしたいからだ。
…でも、それがなんだっていうんだ?
「俺のだよ。…だから、誰にも渡さない」
「ひっ!」
軽く殺気を浴びせかけただけで、へたり込んで立てもしないらしい。
弱いね。こんなんじゃ話にならない。さっきの商店街の女と比べたら、コイツなんて虫けらみたいな弱さだ。
「じゃーね。…教師としてのイルカは貸してあげるけど、迷惑かけたら許さないよ」
「…な、なんだったんだってばよ…」
大分離れてからぶつくさ言いながらそれでも動く気配がないらしいクソガキには、注意が必要だ。それが学べただけでも無駄じゃなかった。
商店街をうろちょろしながら俺を必死で探していてくれたらしいイルカ先生に抱き締められながら、そう思った。

これは、俺の。だからだれにもやらないよ。


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適当。
ちびっこ狼は縄張りの主張に忙しい。中忍はいなくなっちゃったらどうしようと半泣きだったとかその分ごはん大盛大サービスだったとか。
ご意見ご感想お気軽にどうぞ。

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