これの続き。 「寝てる、よね」 前から思ってたけど、寝てる時のイルカ先生は本当に無防備だ。 朝はぼんやりしながらもそこそこ動けてるみたい…というより、ただ単に俺に朝飯を食わせると言う使命に燃えているからかもしれないけど。 俺を抱え込むように抱き締めたまま、すーすーと健やかな寝息を立てて幸せそうに眠っている。 …忍なのに、こんなに油断してていいのかって思うくらいに。 俺がこんな風に無防備に眠ったことってあっただろうか。 任務のときなんて眠ることすらしない日だってザラだ。 そうじゃなくても一人で部屋に帰ってきて、適当に飯を済ませて忍具の手入れをして布団に潜り込みはするけど、大抵眠りは浅くて、どろどろした薄暗い夢ばかり見ていた気がする。 イルカ先生に会ってからは、更にタチが悪い夢を見るようになった。 あえないのに。どんなに欲しいと思っても触れることすらできないのに。 夢の中で微笑むイルカ先生にぎゅっと抱き締められて、カカシって、俺の名前を呼んでくれた人に手を引かれながら平和な何もない草原を歩く。 好きだと告げると俺も大好きだぞ!なんて開けっぴろげで優しい笑顔をくれて、思わず抱き締めようとするのに。 一瞬で、それは消えてしまって、代わりにほくそ笑む俺の面影を強く残した男が、運命を求めろと嘲笑う。 そのくせ最低の捨て台詞を残して、大切な大切な人を悪魔のように釣りあがった唇で奪いながら呪いを寄越す。 おまえなんかにやらないよ。 結局、本音はそれだろうが。 夢だと気付きながら毒づいて、目覚めてからの気分はいつだって最低で、あの男の高笑いと、奪われているのにそれを受け入れて歓喜の声を上げるイルカ先生の顔が焼きついて、喪失感と怒りと血反吐を吐きそうなほどの嫉妬に苛まれる。 それが、毎日だ。任務で眠らない日以外の殆どを、大事な人をあっさり奪われる夢に塗りつぶされてしまう。 それでこんな風に眠れるわけないよね。 「んが?んー…うカカシ」 「わっ…うん。イルカ先生は、温かいね」 寝ぼけながら大事なモノを守るように抱き包んでもらえる事が嬉しかった。 俺なんかを抱き締めて、蕩けそうな顔で笑ってくれる。 この安らぎをまた取り上げられるのか。 「へへ…カカシ…」 むにゅむにゅと何事か呟きながら、にこーっと笑ってぎゅうぎゅう締め上げられた。ちょっと苦しいけど、物凄く幸せだ。 イルカ先生がこんなに側にいるんだもん。 父さんをあんな目に合わせたのに、こんなに幸せって、許されちゃいけないのかもしれない。だからアレは俺をこの人から引き剥がすのかもしれない。 「イルカ先生」 ポロリと零れた涙に気付いてなんかいなかったはずだ。気配もチャクラも完全に眠ってるときのものだった。 でも。 「だいじょうぶ。だいじょうぶだぞ。おれがいる」 ふにゃふにゃしながらそんなことを言ってくれた。 何にも言ってないから何にも知らないはずなのに、どうして一番欲しい言葉をくれるんだろう。 「うん。ずっと、いてね」 何度引き離されても、絶対に手にいれる。 この優しくてあたたかくてちょっと抜けてるところもあるけど強くて可愛い人を。 「すき」 「へへ!そ、だな、おれもだ!」 さらにぎゅーっと抱き締められながら、こうやってすごすことがいつか当たり前になることを祈った。それが、できるだけ早くであることを。 ******************************************************************************** 適当。 朝起きてカカシ少年が側にいて、何かいいことあったのなんて聞かれて、おれさ!すっごくいい夢見たんだよ!っていい笑顔で返されてもふもふされた少年の内心が大騒ぎになるといいと思います(*´∀`) ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |