とある上忍のけいかく11(適当)


これの続き。



「くおらああ!ナルト!」
「わぁ!イ、イルカせんせー見つけんの早過ぎだってばよ!」
ふん捕まえた子どもは年の割りに小さい。いつかのことを思い出しかけて、あの子はこんなにめちゃくちゃな悪戯小僧じゃなかったなと思いなおした。
全く!火影岩にちょび髭つけるとは何事だ!
俺だって落ちなかったら困るから、ペンキじゃなくてチョコソースでやったってのに!
…うん。まあ。三代目に同類だといわれた意味がわかりすぎて、最近過去の自分を懺悔する日々を送っている。
大変だっただろうなぁ…。いや、ナルトよりはちょっとは遠慮があったよな?
あとの掃除とか、あとの被害とかにはもうちょっと配慮していた。
ま、まあ連鎖式とかにして追撃して、半泣きになるほど叱られたこともあるけど。
…反省、しよう。ごめんなさい。じいちゃん。あと父ちゃん母ちゃんも。
あれから1年。
血を吐くような覚悟を決めて迎えた九尾の狐を封じた幼子は、驚くほど活発で恐ろしい悪戯小僧だった。おまけに同級生にも筋金入りのやんちゃ坊主が揃っていて、授業中に食ってるとか、めんどくせぇとか言うくせにテストは100点取ったりとか、復讐より復習しろって言ったら鼻で笑われたりとかもうもう…!そりゃもう目が回るほど忙しい。
これは仇だとか、そんなことを考える暇もない。
また何かやらかすんじゃないだろうかとか、この成績じゃ卒業なんて夢のまた夢だとか、そっちにばかり気が行って、殺してしまうかもなんて考えていたのに気がつけばアイツがなにかやらかせば、俺が謝りに行くって周りも認識してしまっている。
大変ねぇという言葉に、ただの悪戯小僧に対してだけじゃない意味が込められていても、笑って返した。
俺だって、きっとこんな状況じゃなきゃ駄目だったと思うから。
アイツはただのガキんちょだ。
いやただのというか、これはもうアカデミー伝説の悪戯小僧と呼ばれた俺を超えるかもしれないレベルの悪戯小僧ではあるが、ただの子どもだ。
…そう呼ばれているのを知ったのは、アカデミー教師になってからだったけどな…。
とにかく、もう1年も経った。経ってしまった。
いつか戻ってくるとそのことばかりを考えていた日々を塗り替えるように悪戯小僧に振り回されて、いつの間にか一人で泣きながら晩酌する日も少なくなってきている。
寂しさは変わらないんだけどな。
「掃除すんぞ!…罰として便所もな」
「えぇえぇえ!またかってばよー!イルカティーチャー!
「こんなことしたお前ぇが悪いんだろうが!里の看板なんだぞ!」
まあ俺もチョコソースまみれにした挙句、カラースプレーでじいちゃんの髭を色とりどりに彩った前科持ちだけど、そこは秘密だ。大人として。
もうちょっとでっかくなったら正直に俺もやったって言うけど、今言っても調子に乗って、被害が拡大するだけだからな。
「ちぇー!しょーがねーなー。やってやるってばよ!」
「当然だ馬鹿者!自分のやったことは自分で責任とるもんだ!」
「へーい」
しぶしぶながら俺が渡したモップと雑巾片手に掃除をし始めた。
…俺も掃除しよう。あの時は水遁で掃除してもらっちゃったけど、本当ならあれも俺が片付けるべきだった。
「三代目は俺がやるから、お前は四代目様をきれいにしろ」
「え!手伝ってくれんの?」
「お前一人じゃ一晩かかっても終わんないだろ?でもだからって手ぇ抜くなよ?」
「あたぼうだってばよ!へへー!掃除!掃除!」
現金にも調子っぱずれな鼻歌を歌いながら掃除し始めた。
まあ早く終わるに越したことないからな。
「さてと、がんばんねぇとな」
あの子に顔向けできないような人間にはなりたくない。
久しぶりに思い出した笑顔は幼いままで、今どんな顔をしてるんだろうと少しだけ寂しく思った。
*****
「じゃーな!もうすんなよ!」
「それはわかんねぇってばよ!」
「んだとう!」
「へへー!じゃーなー!イルカ先生!」
「次やったら便所掃除じゃすまねーぞー!」
掃除が終わるなり、ナルトはぴょんぴょん跳ねるようにしていなくなってしまった。
次か…俺と同じならそろそろ三代目の頭に顔を描くかもしれんが、アイツ気配消すのへたくそだからな…。チャクラを使うような悪戯は無理だろう。復習させないといかんが、させたらさせたでろくでもないことを覚えそうだ。
「俺も、帰るか」
今日は一人でいることが殊更骨身に染みそうだと思いながら、かばんを担ぎ上げた。
夕日に照らされた道に、いつも手を繋いで歩いた子どものことを思い出して、今日はラーメンでも食って帰ろうかと思ったとき。
「イルカ先生」
袖を引く、この手は。
振り返るのが恐かった。だって、だってな?別の子だったらどうするんだよ。今もうこんなにも泣きそうなのに。
「カカ、シ」
「イルカ先生」
小さくない。あのときよりずっと大きい。ぎゅうぎゅうしがみ付いてこられると、腹の辺りに頭がある。
育ったなぁ…ちゃんと食ってたんだな。よかった。…よかった…!
「おかえり。カカシ」
「うん。ただいま」
にこっと笑った顔が、成長しているはずなのにどこかあどけなくて結局俺は涙を堪える事が出来なかった。


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適当。
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