とある上忍のけいかく10(適当)


これの続き。


母さんが逝ってしまってから、俺を任務に出したいって声が抑えきれなくなって、少しずつ高ランクの任務についている。 父さんは最後まで反対した。でも俺がそれを望んだ。
強くなるために。…強くならなければあの人を手に入れる事が出来ないから。
それに、いくら父さんが強くても、今の情勢じゃいずれ押し切られるのは分かっていた。
使える手ごまだ。年齢なんて関係ない。
どんどん戦わせて敵を退けないと、里ごと消されてしまう可能性だってあるから、そうなるのは仕方がないことなんだろう。
でも父さんはそういうのをすごく嫌がっていて、俺だけじゃなくて、他にも若い忍をできるだけ戦場に出さないように言っていた。
父さんは強くて、尊敬もされてる。だから余計にそれを煙たがる奴らも多くて、心配だった。
母さんがいなくなってから、父さんはぼんやりする事が多くなった。
任務中はなんとかできてるらしいけど…。それなのに俺のことをいつも気にしてて、でも任務に行かなくちゃいけなくて。
だから少しでも立場を悪くしたくなかった。
戦うことは嫌いじゃない。
…イルカ先生のことばかり考えないで済む。
強くなりたかった。誰よりも何よりも強く。
戦って戦って、いつかはあの人を俺だけの物にして、守りきる事が出来るくらいに。
そればかりを考えていた。
七光りと呼ばれても気にも留めなかった。そう罵る連中こそ、自分よりずっと年下の子どもに実力で敵わないと認めているようなものなのにね。
逆に鬱陶しく纏わりつく女たちもいて、そういうのは大抵父さん狙いだった。
白い牙の息子だというだけで、女たちにとっては獲物にも等しい。
戦場でも母さんに操を立てて決して他の女に手を出さなかった。
でも、母さんはもういない。
母さんがないくなったからって、父さんが母さんだけが好きなのは変わらないのに、それがわからないのか、ひっきりなしに女たちはやってきて、母親になってやるだなんて下らないことを言う。
俺の母さんは一人だけだ。父さんが選ぶならとめはしないけど、…きっと父さんも母さんだけだ。
俺と父さんは外見も良く似ているけど、多分中身も似たんだと思う。
こんなにもあの人だけだ。1年経って、それからまたもうすぐ1年が経とうとしている。
あっという間に名が売れた俺をやっかむ連中も多いけど、里で修行しているうちにおもしろいヤツにも出会って、たまに一緒に修行することもある。
ライヴァルっていうのはいまいち良くわかんないけどね。滅茶苦茶弱いし、自信満々に覗いてきたくせにアレもちっちゃいし、変な髪形だもん。
情勢は少しずつ悪くなってきている。こういうときが一番恐い。
徐々に徐々に悪くなっていって、それが当たり前だと思うようになって、ある日突然事態は最悪の方向に向かうから。
…父さんの周りもキナ臭さをましている。
父さんは真面目で真っ直ぐすぎるから、焦れた連中が里内でちょっかいを掛けてくることも増えた。
里を守るために戦ってるのに、俺を狙うヤツまで出た。
もちろん片付けたけど、父さんを消耗させるのは許せない。
うっかり負った怪我を見て、父さんは紙みたいに真っ白になった。
俺のせいだ。もっと俺が強かったら。父さんにあんな顔させなかったのに。
…結局状況を重く見た父さんが護衛を依頼し、父さんの知り合いって人が何人か交代でついてくれることになった。
一人でやれるといいたかったけど、それは言えない。父さんを安心させる方が先だ。
この所やつれてずっと悩んでいる父さんを少しでも楽にしたかった。
「カカシ。すまない」
「あやまんないでよ。父さんは何も悪くない!父さん。父さんこそごめん。俺が弱いから…!」
父さんを安心させて上げられない。こんなんじゃあの人にも届かない。
それが悲しい。少しずつ弱っていく父さんを、俺じゃ支えられないのかもしれないということが、恐くてたまらなかった。
母さんがいてくれたら。…もっと父さんは笑ってくれただろうか。
「行ってくる」
「うん。気をつけて!」
いつも通り見送った父さんが、中々帰ってこなくて、それから。

俺は人が狂うということの意味を知ることになった。


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適当。
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