これの続き。 「結構一杯釣れたな!」 かごの中でつやつやした魚が銀の背をうねらせながら跳ねている。 コレだけいれば確かに大漁と言えるかもしれない。 普段は効率の良い食料確保が目的だから、雷遁で感電させて一気に捕まえている。 もしチャクラを使えない場合でも罠を仕掛けているから、こんなに効率の悪い方法はとらない。 釣り竿なんて使ったことなかったけど、要は気配を読んでつかまえればいいだけだ。 多少慣れるまで時間はかかったが、一度釣れればあとは簡単だった。 釣れる度にイルカが嬉しそうに笑うのが楽しくて、つい夢中になって片っ端から釣り上げた。 あまり自分ばかり釣れすぎるとイルカが不満そうな顔をするのもかわいかったしね? イルカはどうやらかわいい顔をしているくせに、結構な負けず嫌いらしい。 途中でコツを教えたら見る見る内に上手くなったから、筋は悪くないみたいだ。 俺を口寄せできるくらいにはなってもらわないといけないし、少しずつ術も教えてみようか。 閉じ込めるのも魅力的だけど、分かちがたくつないでしまうのも悪くない。 体も、心も。 …今はまだそれを実行するにはイルカが幼すぎるけど。少しずつ。 閨房術の類なら、書庫にいくらでも蔵書があるはずだ。 里に取り上げられる可能性を考えて禁術の習得を優先したけど、今の所入り込んでくる連中はいない。 血にまみれたあの部屋だけは綺麗に塵一つ残さず片付けられて、まるで何もなかったかのように整えられているけれど。 …上忍の、それも名の売れた忍の私室だ。狙われるのが必然。むしろ面と向かって里に差し出せといわれてもおかしくない。 それをしないのは、お目付け役につけられたあの男の仕業か、それとも三代目の差し金か。 鬱陶しく思ったその気使いを、今回は利用させてもらう。 同じ部隊の者さえ近寄らない。亡者の怒りや恨みなど欠片も信じていない連中すら、だ。 つまりはいくらでも隠れ蓑に出来る。 …たとえばこの子を閉じ込めることも。 「ん。そうね?釣りなんて始めてだったけど」 なんでもないフリは得意だ。 弱みを見せないための習い性でもあるし、こうして隠し事をするにも役立つ。 「うそだー!だって俺もそんなにやったことないけど、こんなに釣れたことない…」 「忍だからねぇ?」 「…そっか」 大げさなほど肩を落として見せた。 忍であることを、この子どもは望まないのだろう。少なくとも今は望んでいない。 どうせこの子の父親とのことだけが原因だろうから、いずれは殆どの里人がそうなるように、忍であることを望む。 きっとそう仕向けられる。 …里を、群れを守るために。 群れの犠牲であることへの誇りなど、何の役にも立たないというのに。 「ま、俺がそうはさせないけどね」 一緒に抜けるとなったら、一般人よりやりやすいからよく考えなきゃ。 あまり強いと目立つ。少しずつ慎重に仕上げなければならない。 この子を群れから隠してしまうために。 「ん?なに?焼いて食う?」 無邪気に勝ち取ったモノを喜ぶこの子どもに、何も言う必要はない。 「ん。そうしよっか?」 まだ、なにも。 ********************************************************************************* 適当。 うすっくらい。みじか… ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |