獣を拾った話2(適当)




これの続き。


「お前いい加減どけろ!」
「えー?なんで?」
「重い!それに食器洗えないじゃん!」
うっかり怪我をしたときはそれなりに落ち込んだものだが、拾われた先の暮らしは思ったよりずっと待遇がいい。
まだ随分と子供っぽく見えるのに傷の手当ても丁寧だし、飯なんて、俺がまだ動けないと思ってるのか、任務に出る前に昼飯まで準備して出て行った。
なんだかんだと世話も焼いてくれるこの子供に、いっそのことこのまま飼われてしまいたい位だ。
「食器なら後で洗うから…あとちょっとだけ」
ひざの上でまどろむ時間なんて最高だ。
子供の体温は暖かい。太陽と、それからどこか甘い匂いがする。
一切の匂いを断つことが当たり前の世界からすると、ここは酷く異質なのに。
ここ以上に安らげる場所なんて、俺は知らない。
「お前そんなこと言って、動かないだろ?座布団やるからちょっとまってろ!」
まるで親のように何くれとかまってくれるこの子供は、その実俺より年下だ。
登録証で確認した限りでは、そこそこできるという域を超えることはないにしろ、周りの信頼も厚い。
俺を担いで移動したときのすばやさも、体格から考えるよりずっと早かった。能力的にも伸び代は十分にありそうだ。
「えー?下りなきゃだめ?イルカったら冷たーい」
「う、うるさい!風呂入ったら一緒に寝てやるから!おとなしくしてろ!」
「はーい」
イルカは甘えられるのにとても弱い。
ちょっとかまって欲しいそぶりをみせれば、こうして怒ってみせるくせにすぐほだされてしまう。
うれしいんだけど、それってちょっと怖いんじゃないだろうか。
俺がこっそり任務に出て帰ってくる前に、イルカが新しいのを拾ってきちゃったら…俺の居場所はなくなるかもしれない。
特にそれが俺よりも弱かったりちびだったりしたら、きっとあっという間だ。
そうなる前に、俺を怪我してたから拾った野良犬から、家族とまではいかなくても、ペット位までには昇格したい。
ついでに言うと隙を見て…そうね。恋人とかどうだろう。
一度そうなってしまえば、イルカはきっと絶対に俺を手放さない。
「どうしよう、か」
強引にヤっちゃってもいいけど、問題はこの傷だ。
イルカはその手の知識に疎そうだ。その証拠に、この家にはエロビデオ所か、エロ本の一冊もない。
理解するのに時間もかかるし、怪我した相手じゃ抵抗し辛いだろうし、それにきっと泣くだろう。
意識して欲しいのは事実だが、それはちょっと、いや大分嫌だ。
「でも誰かにこの場所譲る気なんて、さらさらないんだよねぇ?」
念のため虫除けに犬を使ってはいるけど。
そこまで考えてふと気づいた。
この子供は、いつの間にか俺の帰る場所になってしまったらしい。
そして、俺はきっとそれを楽しんでいる。
「ほら!風呂行くぞ!」
早々と食器を片付けたらしいイルカに引きずられながら、俺はどうやってこの面倒な悩みを解決するかで頭を悩ませたのだった。



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子カカイル祭りを続けてみるとか。
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