これの続き。 「あ!魚!魚がいる!」 「川につながってるからそっちで獲れるんだ。それからこの池にうつせば逃げないし弱らない」 簡単に逃げないように生け簀がわりの池に魚を捕まえて入れておいただけなんだけど、イルカは楽しそうに水に入って魚を捕まえてくれている。 おかげでこの魚みたいにイルカも閉じ込められたらいいのになんて考えはひとまず忘れられそうだ。 基本は持ち込んだ食料がベースだけど、篭城する可能性も考えてある程度は自給自足できるようにはしてある。 イルカの読んでいた冒険小説と自宅に仕込んである隠し扉や術を参考にしたこの隠れ家は、ある意味俺の要塞だ。 うみのさんたちレベルの上忍にとっては稚拙にみえるかもしれなくても、そう簡単に突破されるってことがないようにしたつもりだ。 あとは、時間とあの人の出方次第だろう。 先生が敵に回らないでくれるといいんだけど。 「よっし!捌けた!」 「あ、すごい!早くなったね!」 前につりに誘ったときは、内臓とるだけでどうしてこんなになったんだろうってくらい魚の身がぐちゃぐちゃになっちゃったりしたんだけど、今回はちゃんと身が残っている。 「だ、だってさ、いっつもカカシのほうが早いから…」 どうやら悔しかったみたいだ。ほっぺたを膨らませてふいっと視線をそらしてしまった。そんな所もかわいい。 「だって俺のが年上だし」 年上の余裕なんてものはまるでないけど、それでもちょっとだけ年上っていうのはありがたい。ま、イルカが年上でも俺は全然気にしないんだけど、うみのさんに頼りないとか、子供だからこんなことしたんだなんて思われたくない。 「うー…でも俺のがでっかくなるからな!今だって俺のがちょっとだけでっかいもん!」 背の高さは…実はあんまり変わらないからすごく気にしてはいた。 イルカと出会う前はそれこそ非常食ばっかりのいい加減な生活をしていた。父さんがいないなら、自分が食事をする必要なんて感じなかったのもある。 任務で動けないと困るからって理由だけで流し込んだそれらは、多分俺には足らなかったんだろう。 ときどき先生が食事に誘ってくれはしたから、そのときくらいだ。 つまりそれなりに長い期間、普通の食事なんてものとは随分と縁遠い生活を送っていた。 でもイルカ出会ってからは、それが全部変わった。 だってお嫁さんより背が低いのはちょっとその、気になるじゃない? だからちゃんと牛乳飲んだり野菜食べたりして、ちゃんとした食生活を心がけてるつもりだ。 それでもやっぱり任務に出ているときはあんまりきちんとした食事を摂ってないし、そもそもちゃんと寝るなんて忍やってたら無理だ。 …直接イルカから言われるなんて、流石に結構なショックを受けた。 「あんまりかわんないじゃん。そのうちどうなるかなんてわかんないよ?ちゃんとご飯食べないとね?」 父さんのがうみのさんより大きかったきがするし、俺だってまだまだ育ち盛りだし、食べて動いてちゃんと寝て…いざとなったら禁術でも禁薬でもつかって成長を早める手だってある。 …実はもう一回試そうとして先生に取り上げられたから、最後の手段にするつもりだけど。 上忍になってイルカに何不自由ない生活ってやつを送ってもらうつもりだから、体はその資本だ。あんまり無茶して使い物にならなくなったら困る。 「うっ!…ちゃんと食わないとだよな。負けねー!」 「俺も、ちゃんと食べるよ。…イルカより大きくなる予定だから」 「俺だって!あとカカシよりかっこよくなる!」 「それは…うん!ちょっと楽しみかも」 きっとかっこよくてかわいくて、優しい忍になるだろう。 …俺のそばだけで笑ってくれるように。 「…俺も、カカシはかっこよくなると思うから、それはその、楽しみって言うか…!」 「ふふ、火、熾すよ」 「あ、うん!」 かまどモドキに火を入れて魚を焼くと、あっという間に美味そうな香りが辺りに立ち上った。 「早く焼けないかなー?」 「んー?もうちょっとだと思う」 「…でもさ、実はこうやって食べるのちょっと楽しい」 「うん。俺も」 視線が合った瞬間、お腹がぐうぐうなって二人で顔を見合わせて笑った。 イルカの部屋に仕掛けた術はもう発動している。 追ってくるならきっと…そうだな。あと1日位はごまかせるだろうか。 お腹一杯食べて、それから明日は探検できるといいと思った。 あしたもこうしてふたりっきりで。 ********************************************************************************* いちゃいちゃ中。 おわらないー…(´;ω;`)生暖かく見守ってください… ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |