これの続き。 「…っ!うっわー!すっげー!」 広々とした洞窟の中を見回して、イルカが興奮仕切った声を上げた。 奥深くまで広がった空洞に良く響く声にもおもしろがって、わざと大声を出しては遊んでいる。 これなら寂しがったりするのはもう少し先だろう。 「そ?でもこの奥の方が…」 水を向けるとパッとキラキラした顔を俺に向けてきた。 「え!行きたい!」 「うん!行こ? 」 こういう素直な所もかわいい。 そのうかつさが心配でもあるんだけど、その辺は俺がこれから守ればイイだけの話だ。今度こそ、誰にも奪われないように慎重に、ね。 「すっごいなー!カカシ一人で見つけたんだろ?」 「まーね?」 賞賛の言葉も視線もくすぐったい。本当をいうともちろん偶然もある。 里に帰るのが煩わしくなって、寄り道したときに見つけた所だから。 最初は逃げ込むためのねぐらだったが、今や二人の愛の巣だ。 ま、イルカにはまだ自覚してもらってないけど。 …二人っきりで過ごせるここは俺にとっては楽園だ。 いずれ出て行かなくてはならないのが分かっているからこそ、この時間を楽しまないと。 「ほら、そこ」 「うっわぁ!すごい!これ全部石だよな!すごい…!」 「きれーでしょ?」 指先くらいの小さなものから、俺たちの背丈ぐらい大きなものまでたくさんの青い結晶で一杯になったこの空間は、狙い通り気に入ってもらえたみたいだ。 「ホントに、きれいだなぁ…!」 イルカは自分の背丈よりも大きい一際大きな結晶を覗き込んで、うっとりと目を細めている。 自分にとってはただの鉱物で、換金すればそれなりになるだろうけど、それ以上の価値は見出だせなかったが、今は宝の山に変わった。 イルカが喜んでくれるってことが、今の自分にとっては最高の価値を持つから。 …イルカがそばにいてくれるから、この静か過ぎる空間が美しいと感じられるんだ。 「この奥まだちゃんと見てないんだ。明日見に行こうよ」 「え!明日ー?なんで?今行こうよ!」 気になって仕方がないんだろう。足はもう奥に向かおうとしている。 それならそれで構わないんだけど…さすがにちょっと、ね。 「だって、お腹すいたでしょ?」 そういったとたん、イルカの腹が盛大に音を立てて空腹を訴えた。 浚ってから一度も食事を取っていないのだから当然だ。 「うっ!…うん…そう言われたら減ってるかも」 「じゃ、帰ろ?」 しょんぼりしてしまったイルカの手を引いて、寝室に向かって歩き出した。 本当はいざって時のために非常食ももってきてはいるけれど、折角のチャンスなんだからそれを逃すわけがない。 「明日は…絶対あっちまでいこうな!」 「うん!」 約束までキラキラ輝いているような気がする幸せな時間に、後もう少しだけ溺れていたい。 うみのさんたちにはもうそろそろ気付かれていることだろう。 …イルカの不在に。 「カカシ?」 心配そうに覗き込むイルカに気付いて、慌てて笑顔で返した。 「ん。なんでもないよ。ただご飯何にしようか考えてただけ」 「あー!そっか!ご飯!俺も手伝う!」 「そ?じゃあお願いしようかな」 「まかせとけ!」 野営みたいだとはしゃぐイルカの手を握って足を速めた。 折角だし、いろいろ楽しんでもらわないとね? 短い蜜月はひたすら甘い。 指先の温もりを確かめるように握り締めた。 幸せを欠片も残さず自分のものにするために。 ********************************************************************************* いちゃいちゃ中。 まだもうちょいつづきます(;´∀`) ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |