気の長い話4(適当)


これの続き。


目的地はすでにきまっていた。
「ここどこ?」
突然つれてこられた見知らぬ場所に瞳を輝かせ、きょろきょろとあたりを見回している。 興味津々の様子からすると、どうやら気に入ってもらえたらしい。
「秘密基地」
ここは里の近辺に作っておいた隠れ家の内のひとつだ。
洞窟を利用してあるから、そこそこ広い。
自分ひとりのときはそのまま使っていたここも、イルカと出会ってからいざって時のために過ごしやすいように土遁なんかも使って整えてある。
入り口は三代目の遠見の術も防ぐくらい強力な幻術結界を張ってあるし、生い茂った木々に覆われて元々外からは分かりにくい。
里に帰る忍が使うルートからも外れているから気付かれるまでにしばらくは時間がかかるだろう。
寝心地のいい寝台と、食料、それから明かり、イルカが喜びそうな本とかここを掘り出したときについでに集めておいた鉱物標本もどきも置いてある。
イルカが喜ぶと知ってから任務のついでに少しずつ集めたそれらは、結構な量になったから、しばらくはイルカも退屈しないはずだ。
いつでも使えるようにメンテナンスを欠かしたことはないから、外敵にも十分に対処できる。
…イルカを取り返しに来るだろううみのさんを含めて。
「すげぇ!あー!このでっかい石キラキラしてる!こっちのって化石だよな!」
「うん。イルカが前に好きだって言ってたでしょ?どう?」
「この青い石とかさ、ホントにすごい…!いいなぁ!俺もいつか任務に出たらこういうの一杯集めるんだ!そのときはさ、一緒に行こう!」
「うん」
イルカと一緒に。それは酷く魅力的な話だ。
間近で笑うイルカはきっととても可愛いだろう。
それに…これなら、きっと上手くいく。
「ね、イルカ。ここ本拠地にしてしばらくこの洞窟探検しない?」
この喜びようならまず間違いなくいけると踏んだが、イルカは想像した以上に俺の罠を喜んでくれた。
「探検…!するする!そっか!だから誘いに来てくれたの?」
興奮を抑え切れないのか手足をそわそわとばたつかせ、今にもこの部屋を飛び出していってしまいそうなほどだ。
「そ。ここは過ごしやすいように整備したんだけど、奥の方は調べきれてないんだよね?」
ま、これは嘘だけど。
鉱脈を読むなんてそう難しくないことだし、イルカには絶対怪我をさせたくなかったから細心の注意を払って崩れそうな岩には補強も施したし、ある程度案内するところも調査済みだ。
それに浚った挙句に怪我させたりしたら、うみのさんがどれだけかたくなになるか分からないしね?
…かわいそうな子供に優しいあの人たちが、俺の決意にどれだけの戸惑いとそれから恐怖を感じているかよくわかっている。
俺がただの子供じゃないことは分かっているのに、俺が一人ぼっちの子供だってことも無視できないあの人たちを利用する。
この負けられない賭けに勝つためなら、なりふりなんて構ってられない。
「ありがとう!カカシ!…よおっし!いーっぱい見つけて父ちゃん驚かせてやろうぜ!きっと怒るけど…男なら冒険しないとって言ってたのも父ちゃんだもん!」
子供は元気一杯に育てる主義のうみのさんらしい発言だ。
丁度いい。ある意味言質を取ったようなものだ。
イルカには思う存分冒険してもらおう。
…俺と一緒に、ふたりっきりで。
「ここ、イルカに見てもらいたかったんだ。…うみのさんには一緒に謝るから…」
「そんなの父ちゃんが悪いんだ!カカシはなんにもしてないのに!」
素直で優しくて情に厚いところは、教育の成果ってやつだろう。
…一瞬だけ失ってしまった銀色の影を思ってちくりと胸が痛んだ。
ごめんね。父さん。…でも、きっと俺は後悔しないよ。
「ふふ、ありがと」
ぎゅっと抱きしめると、イルカの方から抱きしめ返してくれた。
「大丈夫!気にすんなって!俺前にもちょっとだけ父ちゃんと母ちゃんに秘密で出かけたことあるけど、そのときもめちゃくちゃ怒られたし!」
「え」
それは流石に想定外だ。ま、イルカならやってもおかしくないけど。
「そのときもちゃんと謝ったら許してもらえたんだ。…今度からちゃんと出かける前にいっていけってのと、怪我しないようにしろって言われたけど!今だって手紙置いてきたし、俺とカカシと一緒だし、昔みたいに木からおっこちたりしないもん!」
「そうね?」
そういえばやんちゃが過ぎて鼻傷作ったって聞いたことがあったっけ。
鼻傷はイルカのかわいさを損なったりはしなかったし、むしろ照れたときとかにそこを書くしぐさは愛嬌があってかわいいと思っている。
…これはこれで手が打てるな。
「よーっし!ずーっと部屋にいると暇でさ、寝てばっかりだったんだ!今日は思いっきり遊ぼうぜ!」
「うん!」
まだ夜明けまでは遠い。
状況の変化から目を離すのは危険だけど…今なら、きっと大丈夫だ。
二人っきりの秘密の時間。
折角だから満喫しないとね?
「そうと決まったら準備だよな!…あ、でも…俺何にも持ってこなかった…」
泣きそうなイルカに差し出したのはそろいの背嚢だ。
「ちゃーんと準備してあるよ。明かりと食料。すぐ行くよね?」
「行く行く!よおっし!お礼に…でっかい宝物見つけたら、カカシにやる!」
「楽しみにしてるね?」
「行こう!」
つないだ手に湧き上がる歓喜と期待に胸を震わせながら、俺たちは一緒に歩き出したのだった。


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ながい。なぜ?
でも続くのでしたよ。うみのさんへの戦線布告編がつぎあたりだろうか。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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