これの続き。 仕掛けに反応があったから、すぐさま駆けつけた。 時空間忍術覚えといてよかったよ。 部屋の外を探るだけで、うみのさんたちの必死さがよくわかる。 この間の比じゃないトラップの量に、威力も恐らく上がっている。 ま、イルカの元に直行できるようにしてあるから、意味ないんだけどねー? 「あ!カカシ!平気か!よかった…!父ちゃんが何かへんな事言ってよくわかんないんだけど、お前の事怒ってるみたいなんだ…」 俺にしがみ付いて涙ぐむイルカは可愛らしい。 あー食っちゃいたいなぁ。 涙と閉じ込められることに抵抗したのか、汗でほんのり湿った髪に触れて口付けた。 今は、流石にマズイ。 こんな所ではじめちゃったら、うみのさんたちが発狂するだろう。 最中に踏み込まれたら、かわいい姿を俺以外にも見られちゃうし、なにより確実にイルカを手に入れるための障害になる。 奪うと決めてはいるが、強引にするつもりはない。…ある程度までは、だけど。 それはもう厳重に精緻に作られたトラップたちは、イルカを俺から守るためのものだけど、今は逆に進入した俺を匿ってくれている。 まさか直接入り込むなんて思っても見てないだろう。 だからこそ、イルカの部屋には監視用の仕掛けは何一つ仕掛けられていない。 代わりのように扉が開いた瞬間から発動する連鎖トラップだのなんだのがしっかりたっぷり仕掛けられているけれど。 流石にその腕前で上忍になっただけはある。 捕われの姫君って言うか王子様っていうか…どっちにしろうみのさんたちが俺のことを認めてくれはしないだろうってことは、予想済みだけどね。 「あーばれちゃったみたい?」 「ばれた?あー!わかった!カカシいたずらしたんだろ!ちゃんとあやまんないとだめだぞ!父ちゃんすっげー怖いんだからな!」 それは知ってる。 …子供相手に大人気なく宣戦布告してくれるくらい子煩悩だってことも。 ま、それは俺が普通の子供じゃないってのもあるんだろうけどね。 「謝るって言ってもねぇ?…ねぇ、イルカ。俺のこと嫌い?」 「え!?なんでいきなりそんなこと言い出すんだよ!カカシいいヤツじゃん!嫌いなわけないだろ!…そういっていじめられたのか?誰かに」 「んー。ならいいの」 まだ好きだって言ってもわかんないだろうしね。 俺にこうやってなついてくれてるだけで今は良しとしとこう。 「とにかくさ。俺、外に遊びに行くのもだめとか言い出したんだ…。なんだろ。里になんかあったのかなぁ?」 「だいじょぶ。ちょーっとね?」 「なんだよそれ!俺だけのけものかよ!」 ぷくっと膨れた頬にキスを落とした。 …イルカとの未来を勝ち取るためには、戦わなければならない。 「あのね。イルカ。俺と一緒にいてくれる?」 「別にいいけど?どうしたんだよ!父ちゃんもカカシもおかしいぞ?」 そりゃそうだろうな。うみのさんの取り乱し具合からして、何かしら俺がここに進入してるって言う証拠を掴んだんだろう。 この間調べた限り、感知式のトラップはなかった。 ってことは…多分イルカが言っちゃったのかな?友達になったとか。 銀髪の子供は、この里にはお礼外殆どいっていいほどいないから外見情報が伝わってしまえば、一発で気付かれる。 「じゃ、遊びにいっちゃおうか?」 「え!できるの?…でもさ、父ちゃんが怒る…」 「んー?だって、怒ってるときこそびっくりさせたら冷静になってくれるかもよ?」 「そうかなぁ?」 黒く輝く瞳が揺れている。遊びたい盛りの子供をこんな所に閉じ込めてるんだから当たり前だ。 ちょーっと予定より早いけど浚っちゃおう。 宣戦布告は早い方がいい。 …まだ親から取り上げるつもりはないってことを理解してもらえるようにはするつもりだし。 「よし!俺もいく!…父ちゃんには後で馬鹿っていってやるんだ!」 「そーね?俺も手伝うから」 共犯者の笑みを交わして、小さな体を抱きこんだ。 …これで、この子は俺のモノ。 夕食が入っていたらしき食器は扉の横に置かれている。つまり次の食事の時間まで大分間がある。 残した手紙に気づくのは…多分朝になってからだろう。 「へへ!なんかドキドキするな!」 「うん。俺も」 さぁ。勝負の始まりだ。 切り札は俺の傍らで微笑んでいる。 絶対に負けられない賭けだからこそ、腕によりを掛けて何十にも策を仕掛けた。 イルカが俺についてきてくれた時点で、ほぼ俺の勝ちは決まっている。 「じゃーね。うみのさん」 空間を飛ぶ瞬間残した言葉は、きっと俺以外の誰の耳にも届かなかった。 ********************************************************************************* うっかりつづけてみる。 元気な子イルカちゃんと危険生物カカシと子煩悩父ちゃんの話。 続かせたくないのだが続いたら笑って流してやってください(´・ω・`) ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |