これの続き。 手はず通りなら三代目を先に説得するつもりだった。 あの人の罪悪感はずっと俺にとって鬱陶しいものにすぎなかったけど、今はありがたい。 色々付け入る隙があるってことだもんね? 父さんへの中傷を抑えきれなかった程度とはいえ、あれでも里長だ。味方についてくれたら面倒ごとは確実に減るだろう。 …取引に応じる代わりに使い捨てにするってことは、今の内はまだないだろうから。 子どもだということを武器にできるうちは、それを存分に利用する。 そのために一応書置きも残したし、イルカを強引に奪ったりもしていない。 でも、先生の言葉がヒントなんだとしたら、むしろうみのさんから行った方が落しやすいんじゃないだろうか。 「わからずやで意地悪言う父ちゃんなんかに見つかってやるもんか!カカシ!こっちからやっつけよう!」 イルカは…なんだかやる気まんまんだ。 そういえば二人の親子喧嘩はみたことがなかったけど、イルカは意地っ張りで頑固なところがあるから、こじれたら…うみのさんにとっては俺とやりあう以上にやりにくいだろう。 何せ行動力は俺以上にあるから、この分だとイルカをそのままうみのさんにあわせたら、大変なことになりかねない。 …それはそれで利用できるけど、イルカが酷い目にあうのは絶対にいやだ。 「ううん。だって俺のせいだもん。ちゃんとうみのさんには説明するよ」 うみのさんにはイルカを貰うってことは伝えてあるけど、きっとそれがどうしてかなんて理解していない。 まさかそういう意味でだなんてことは、想像もできなかったのかもしれない。 奥さんの方は俺の性格を把握した上で手を打ってきそうな気がするから、梃子摺るとしたらそっちだ。 でも、それを先生は抑えるって言ってくれた。 あの言い方だと、うみのさんなら俺でもなんとかできるってことだと思う。 修業と称して戦場のど真ん中に放り出されたときも、同じようにヒントをくれたっけ。 つまりうみのさんには、説得の余地があるってことだ。 いかつい髭を生やしている割には人の良さそうな顔をしていた。 ひょっとして…なんとかできるんじゃないだろうか。 へたに騒いで事を大きくするより、手の打ちようがあるなら相手を丸め込んだほうがいい。 「でもさ!父ちゃん…カカシのこと怒るかもしれないだろ?そんなおかしいもん!」 こうやって俺を守ろうとしてくれるイルカのためにも、穏便にことを済ませることができるならそのほうがいい。 …誰にも渡すつもりはないから、いざとなったら手段は選ばないけど。 「大丈夫。そしたら、一緒に怒られてくれるでしょ?」 「うー…!父ちゃんが変なこと言ったら怒る!でも…俺が悪いって思ったら一緒に謝る。そしたらカカシが怒られないよな?」 「…ありがと」 不安そうに俺を見るイルカの手をぎゅっと握り締めた。 この温もりを手に入れるためなら何だってできる。 「へへ!気にすんなって!…あの人、カカシの先生なのか?」 「あー…うん。ま、一応」 先生…先生と言えば先生なんだけど、どうしてあの人はああなんだろう。 確かに強いし頭もいい。でも確実にどっかずれてるんだよなぁ…。 基本的に穏やかで、優しい。ただ自分のしたいと思ったことを絶対に曲げないだけで。 なまじ能力があるから、ある意味たちが悪いんだと思う。 里を、仲間を守ろうという意思は誰よりも強いだろう。但し、自分が気に入らないことがあれば、巧妙に手を打って、任務内容を捻じ曲げることくらいはする人だ。 逆にどんなに困難でも、必要だと思えば一人ででも成し遂げてしまう人でもあるんだけどね。 いずれは里長にとまで言われているらしいけど…いつかなんだかとんでもないことをしでかしそうで怖い。 俺とイルカの平和のために止められる所は止めたい。今はまだどんな手を使っても敵わないけど、いつかは。 「そっか。…うちはさ、父ちゃんも怖いけど、母ちゃんも怖いんだ。すっごく。怒ったらきっと父ちゃんより怖いから、あの人無事だといいな」 「…うん」 イルカは優しいよね。いきなり魚奪い取って食べたあげくにきゃあきゃあ騒いで消えた相手にも。俺の先生だからだろうか。 …あえて先生は多分そんなの気にしないくらい強いよって言うのは止めておいた。 「よっし!作戦会議しよう!」 「え!」 「だってさ、父ちゃんと戦うんだろ?父ちゃん強いんだ!母ちゃんには勝てないけど!」 イルカの必死さがすごくすごく嬉しい。 やっぱり…どうしても欲しい。俺だけのものにしたい。 そのためには…ちゃんと罠を張らないとね? 「そうだね。…ちょっと、協力してくれる?」 「うん!」 悪戯に瞳を輝かせたイルカと、内緒話するみたいに顔を寄せ合って、それから。 「あのね…?」 真剣な瞳のイルカにお願いごとをした。 …この作戦が上手く行くことを祈りながら。 ********************************************************************************* ど、どんどんつづき!もうすぐに終わらせようとか諦めました。゜。゜(ノД`)゜。゜。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |