気の長い話9(適当)


これの続き。


「イルカ。おきて?」
ぐっすり眠ってたから起すのはちょっとかわいそうだったけど、一緒に過ごせる時間が勿体無くて結局我慢できなかった。
「ん…おはようカカシ」
寝ぼけた顔もかわいい。
とろんとした瞳は生理的な涙で潤んで、そのまま食べてしまいたくなる。
「ご飯食べて、お風呂はいったら出かけよう」
「うん!え!?今何時だ!?うわっ寝すぎた!もったいない!」
イルカが俺と同じ気持ちでいてくれることが嬉しい。
俺とは違う理由でも、少しでも一緒にいたい。…そう思ってくれているなら。
もう捜索の手は伸びている。
流石に里抜けまではしないだろうってあたりは読まれているとして、潜伏先を里の中にするかそれとも里の周囲を囲んでいる山の中にするかってあたりも…先生には読まれているだろう。
定石なら里の中だ。子供は目立つけど俺なら変化ができる。
潜むだけなら里の中にもそれなりの闇はあるし、子供にしては自由になる金もある俺がそこを選んだとしてもおかしくはない。
でも、イルカがいればそれも難しい。
俺がイルカを傷つけないってことだけは信用されていると思う。
…うみのさんにも、先生にも。
物資さえ確保できれば潜伏先にこういう所を選ぶことはありうる。それはある意味忍なら誰でも思いつくことだ。
後は捜索にどれだけ人手と時間を割いてくるかってことだ。
三代目はうすうす俺の危険性を察していただろうに、止めなかった。
俺が絶対にイルカを傷つけないと知った上での行動だとは思うんだけどね?
里長が動かないとなると、大掛かりな捜索や、うちはや日向が差し向けられる可能は少ないだろう。
そう簡単に俺たちの匂いは追えない。一気にここまで文字通り跳んだから、犬たちを使ってもここを探り当てるには大分手間取るだろう。
ただ、イルカは愛されているから。
…もちろん三代目にも。
独り占めするには…きっと、まだ早い。
でも、きっとこんな荒業が使えるのは俺が子ども扱いされている間だけだ。
懲罰は覚悟してるけど、子供の悪戯の域は出ていない。
ちょっとだけ友達と家出する子供なんて、きっといくらでもいる。
ここまで本格的に隠れる能力がないだけで。
「魚焼いて、それからご飯は準備しといたから握り飯作って出かけよっか?」
「うん!」
里の様子を探らせている犬が持ち帰ったのは不穏な気配。
…多分、先生が動いている。
三代目の所に早速直訴に向かったうみのさんたちにあの人はついて行ったらしい。
あっさり俺の犬に気づいたのに、ただ止めるでもなく、「がんばってね?」なんて言ってきたらしいから、今は多分どっちにもついていないだろう。
むしろこの状況を楽しんでさえいるかもしれない。
幸い体力は恐ろしいほど回復した。こんなにぐっすり眠ったのは初めてかもしれない。
…これならきっと戦える。
「カカシー!獲れた!」
犬たちはうみのさんの動きを追っている。報告にくる跡を追われないように気をつけさせているから大丈夫だと思うけど。
「いっぱい食べようね?これから体力使うんだし」
「うん!いーっぱい冒険しような!」
「…うん!」
何も知らずに笑うイルカを抱きしめたら、イルカも笑ってくれた。
この笑顔のためならなんだってできる。
次の定時連絡辺りで、きっと敵の動きも分かるだろう。
そこからが、勝負だ。
密かに気合を込めておいた。
…とりあえずは腹ごしらえだ。
細工は流々。後は、うまくいくように祈るしかない。
「うまくいきますように」
はしゃぐイルカの耳に聞こえないように、小さく祈った。
最高の幸福が手に入りますように、と。


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つぎは父ちゃんのターンかもしれない。
鬼のように眠いです。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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