記念日7(適当)

前のお話はこれ⇒記念日5の続き。


腹がくちくなると眠気が襲ってくるのが常だった。眠気覚ましにはいつも苦労していて、濃い目に入れた茶と、それからちょっと体を動かしてなんとか纏わりつく疲労感と落ちそうになるまぶたと戦ってきた。
だが今度ばかりはいつもとは違っているようだ。むしろ徐々に正気づいてきてしまったというかだな。
痛みは未だ全身に張り付くように残っていて、出血した箇所なんか熱を持って拍動と共にじくじくと存在を主張している。おかげで頭がスッキリしたのかもしれない。
…最初の部屋、あそこに食卓なんてモノはあっただろうか?運ばれたことは鮮明に覚えているのに、そんな記憶さえあやふやだ。
強いられた行為が強烈に体にも心にも焼き付いているってだけじゃない。多分、何か薬を使われているんじゃないだろうか。
そうじゃなけりゃ、このだるさは説明できない。…って言っても、やったことのない行為に体が悲鳴をあげているだけである可能性も否定できないんだけどな。
要は、俺はそんなに柔じゃなかったはずだと信じたいんだ。
使い物にならない体は少しも思い通りにならない。すっかり抜けた腰のおかげで立つことすら危ういなんて、情けないにもほどがある。
食器の片付けすらままならなくて、本当は絶対にそんなことをさせちゃいけない人が、テキパキと何処かへ運ばれて行くのを見送ることしか出来なかった。
それも、そっくり同じ姿の人に寄りかかりながら。
こんなことに術を使うことはないだろうに。…この人しか出入りできない結界があるからだと説明されても、焦りばかりが胸に降り積もって行く。
抱き締められて触れられて、申し訳なさと確かな喜びに板ばさみになりながら、ふと気付いたら分身の姿はみえなくなっていた。
しまった。出入りするところを見ておけば、少しはここを出る方法がわかったかもしれないのに。せめて自分の身の回りの世話くらいは自力でなんとかしたいじゃないか。この様じゃ飯の調達もままならない。
「ん。そろそろお風呂入れる?」
己を責める時間も、残念がる隙も、この男は与えないつもりらしい。
口を開こうとすれば触れてきて、身じろぎしようにもあやすように口付けを絶やさず、思考がまとまりそうになるとこっちを見ろとばかりに噛み付いてくるからだ。
風呂、確かにあんなことをした後で放っておくのはマズいだろう。しかもあらぬところはそれなりに傷ついているはずだ。その手の教本は一度読んだきりだが、多分手当てが必要だろう。
とはいえこの状況じゃ禄に体も洗えない。だがこれ以上この人にどうこうされるわけにも行かない。八方塞だ。
あんなにも深く感じさせられてしまった後で、ただ体を洗ってくれているだけだとしても、この人に触れられて反応しないでいられる自信など欠片もなかった。現にあれだけ散々やられた後だというのに、膝に乗せられているだけで呼吸が乱れそうになっている。もじもじと太腿を刷り合わせていることにだって、隠す物が何もないからバレバレだろう。
この人だけ服をきちんと着ているのが悪い。火影の名を刻んだそのマントを、一瞬でいいから貸して欲しいと言ってしまいたくなる。
…里長の証でもあるソレを、こんな下らないことに利用することなんて、それもとんでもないモノで汚してしまうかもしれないのに出来るわけがないんだが。
「え、あの!じ、自分で!」
背中に大穴開けた時だって自力で何とかしたんだ。死ぬ気になればどうとでもできる。あんなことをさせちまうよりずっとましだ。
そう思ってもがいてはみたものの、あっさり抱きかかえられてしまった。
「立てない位したから無理。しっかり捕まっててね?」
「え!うお!」
「ん。そういう反応、ホント久しぶり。嬉しい」
「…どこがですかなにがですか…!お願いします降ろし…んんっ…!」
降ろしてくれと懇願したが、未だ疼くそこに指を這わされて、思わず息を飲んだ。
痛みももちろんだが、そんな所に触れさせてしまっていることが怖くて情けなくて動けなくて。
それすらも楽しげにしている男が分からなかった。
「中、一杯出しちゃったしね。ここ、洗わないと」
そんなところにこの人を存在を感じていること自体が罪だ。それに快感を隠せないのも、いっそ殺して欲しいと思うほどに恥ずかしくて、叫び出しかけた口は支配者の唇で塞がれた。
「ほら、いこ?」
結局、立ち上がらせてももらえなかった。
抱き上げられて運ばれて、せめて少しでも人の目からこの傷だらけでみっともな苦反応した体を隠したくて縮こまると、くすくす笑いが降って来た。
「あ、の?」
「そうやって縋ってなさいね。ずーっと」
至極機嫌がいい。そのことだけが僅かながら救いになるだろうか。
何も出来なくても、せめて少しでも喜んで貰いたい。…たとえそれが愛玩動物に成り下がることだとしても。
ふっと軽い眩暈を感じて、次の瞬間には脱衣所らしきところに立っていた。
「え」
どう移動したのかわからない。印を切った気配も、チャクラを練った気配も感じなかったのに、どうやって。
「お風呂、好きでしょ?」
思わず頷くと、その扉は開かれた。
「うわあ!」
広い。それこそ泳げそうなほどに。ヒノキの湯船も、黒く艶のある石で整えられた洗い場も思わずため息が出そうなほど美しかった。
「よかった」
「え?あの?」
あまりにも無邪気な顔で笑うから、一瞬戸惑って、そしてその隙を見逃してもらえるはずがなかった。
やわらかな椅子に横たえられているその側でさっさと服を脱いで行くのを見てしまいそうになって、慌てて視線を伏せて、次の瞬間には担ぎ上げられて体を流されて…どうしてこうなったんだろうと考えることなんてできないくらい、とんでもない行為を仕掛けられていた。


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適当。
流され中忍。
時間的な都合で、中途半端でもあげちゃうことにします。

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