記念日13(適当)

前のお話はこれ⇒記念日12の続き。


「カカシさん」
ふわふわする。ここはどこだったっけ?まあなんでもいいか。
大切な人が側にいて、笑ってくれていて、寝ごこちは最高だ。
ずっとこうしていられたらいいのに。何もかも全部忘れて…忘れて?
冷や水を浴びせかけられたように一気に酔いにも似たそれから覚醒した。
そうだ。忘れていた。何もかもが曖昧で、それで、俺は。
「ん、起きたの?」
「俺は、いつからここに?アカデミーは?そ、それに!執務はどうなってるんですか?」
「…大丈夫。ちゃーんと影分身がお仕事してるから。息抜きするくらいいいでしょ?」
微笑んで貰えることが嬉しかった。でも、それが取り繕うためのものなら、到底受け入れることなどできない。
「六代目!」
息抜きは必要だ。だがこれは違うだろう?
この人をこうしてしまったのは俺なのか。そうだ。この人は俺をここに閉じ込めて…閉じ込めて、それから?
「その呼び方、やめて。さっきみたいにちゃんと俺を呼んでよ」
「うっ…あ、あ…!?」
頭が軋むように痛む。ぐらぐらと世界が揺れていて、全身の感覚がブレる。吐きそうだ。
「ッ!息、吸って。ほら、しがみついてていいから」
「や、あ…!」
触れられるのが恐い。狂ったようにこの人を貪ったその断片が、飛び散ったガラスのように頭の中で煌いて突き刺さる。
俺は、なにをしでかした?
「大丈夫。ね?」
宥めるように触れてくる手が背にまわって、気持ちいい。
この手に、何度も何度も、自分でも触れたことがないところまで好きにされた。
…そしてそれを悦んで受け入れたのは、俺だ。
「おれ、は。なにをしたんですか」
「逃げられないようにしようと思っただけ」
不貞腐れた顔さえさまになる。ああくそ。今そんなことを考えてる場合じゃないのに。
「逃げる、なんて…」
逃げたいのは俺からだ。俺の中にあるこのドロドロしてあふれ出しそうなこの感情から、俺はどうしても逃げ出したかった。
「任務には他のをやったから。あなたは俺の傍にいてくれればそれでいい」
「え?」
「アカデミーもちょうどいい時期だったし、いいでしょ?」
「…なにを、したんですか」
そうだ。この人から離れようとした。離れて、ずっと思い出だけを糧に生きていければそれでよかったんだ。
任務、なくなったのか。
こんなことで泣きたいほど安堵している自分に反吐が出る。
この人からもう、逃げなくていいと、その言い訳ができたことを俺は確かに喜んでしまっている。
そんなことを望んだはずじゃなかった。この人の邪魔になるようなら、俺は俺を許せない。
一生分の秘密を飲み込んだまま死ぬまで隠しておきたかったのに、俺のせいで、この人はなにをしてしまったんだ?
「ま、建前上はね、言い訳が必要でしょ?側近になってもらったって言ってあるよ。極秘任務に引っ張り出したいからごめんねって、ちゃんとお願いしてきたの」
「なぜそんなことを!」
極秘任務だと火影直々に命じれば、誰もそれを疑わないだろう。万が一不審に思ったとしても、逆らうことはありえない。
…だが、どこかでそれが漏れれば、致命傷になりかねない。
女遊びは黙認されても、男を囲って洗脳してるなんてことがばれたら。そう、洗脳だ。どうしてそんなことを?命じられればなんでもする。こんなコトをしなくても。
何がこの人をこんなにも傷つけてしまったんだ。
「言い訳があれば、アンタ逃げないでいいでしょう?ついでにここなら逃げ場もないし。ま、うるさいのが外で喚いてるかもしれないけど、アンタには届かない。ここで叫ぼうが喚こうが泣こうが怒鳴ろうが、絶対に外には漏れないように作ったの。だから好きなだけ喘いで大丈夫よ?」
「…何が、目的ですか?」
それがどうしても知りたかった。
俺がこの人を傷つけてしまったってことだけはわかる。でも、どうしてこんなことを。
いっそしんでくれと命じてくれたら、喜んでこの首を差し出せたのに。
「そうきましたか。目的ね、目的…うん。そうね。アンタを俺のモノにするコト。かなぁ?」
ふわりと笑うその顔は、とてもじゃないが口にしたその内容にそぐわない鋭さを持ちながら、同時にぞっとするほど甘い。
「こんなことをしなくても、アンタのためならなんだってしたのに…!」
顔を覆って目を隠して蹲って…どんなに見たくないモノから逃れようとしても、現実は変わらない。
俺が悪いんだ。繊細な人なのに、自分のことだけ考えて逃げようとしたから。だから、こんな風に壊れてしまった。激務で、ずっと執務室に詰めていて、家に帰ることなんてほとんどなくなっていたことを知っている。関われば嫌がられると知っていて、でもどうしても心配で、消えない明かりをいつだって目で追っていたから。
好きだからって、この感情を言い訳になんて使えない。…使いたくない。
嘆いても取り返しがつかない事ことはわかっていた。…この罪を購う方法なんて、命で償うくらいしか思いつかない。
「ウソツキ。だからねぇ。もういいんだって。全部忘れさせちゃおうと思ったけど、やっぱり狂ったアンタが苦しむのは見たくないから。ねぇ。好きだって言ってよ。俺のモノだって信じさせて。…もう俺ばっかりアンタが好きなのが苦しい」
「へ?」
今、なんて言った?
「ちょっと、なにその顔。もしかしてわかってなかったとか言うつもりじゃないでしょうね?」
詰め寄る人の眉間に深い深い皺が刻まれていて、つり上がった目にはあの赤い目はなくなったはずだってのに炎が踊っているのが見える。
…普段機嫌が悪いと思っていた表情なんか、たいしたことじゃなかったんだということをはじめて思い知らされていた。



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適当。
ドロドロルートも考えつつも、ドロドロすぎるかなーと思うのでこの辺で。
中忍はハンパなく天然ということで。
時間的な都合で、中途半端でもあげちゃうことにします。

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