かぎ 溺れる(適当)


これの続き。




「ん。もうトロトロ…ね、欲しい?」
「っあ…!」
腰をたどり、最奥まで無遠慮に伸ばされた指が、男を飲み込むことに慣らされた後孔に沈められる。
ついさっきまでたっぷりそこを弄られていたせいで、もう男の望むままに口をあけている。
くすぶっていた欲望があっという間に全身を炙り出し、飢えさえ感じるほどだ。
快感に耐えきれたことなど殆どない。羞恥から声を殺そうとしても、男がそれを許さないよう攻め立ててくるからだ。
主導権を握っているのは常にこの男の方で、いつだって受け流すこともできずに押し寄せる快感の波に流されてしまう。
「あなたは、知っていましたね?…んッ!」
わざわざ俺に強請らせるために焦らすつもりらしい。
ああ欲しいとも。全てを自分のものにできたらと思わなかったはずがない。
…コレが誤魔化しのための行為でも、それでもおぼれてしまいたいと思うくらいには惚れている。
ただ所有され、愛でられる人形でいたくないだけだ。
そんなものに成り下がれば、この思いすら偽りになりそうだから。
喘ぎながら睨みつけても一笑に付されるのが落ちかと思いながら、それでも視線は逸らさなかった。
「その目、好き」
とろりと欲望に潤んだ瞳はケダモノの色を宿し、やはり勝ち目はないのだと突きつけられた気がした。
だが答えがなくても、引き下がる気はない。
「はぐらかすな…!アレはなんだったんですか。俺はなぜ狙われて…うわっ!?」
「それ、言わなきゃ駄目?」
覆いかぶさってきたかと思えば、人の胸に頬を摺り寄せて拗ねたような顔をしている。
上目遣いは甘えるときに幾度も目にしてきたものだ。
…普段は傍若無人でストイックな上忍を気取っている割には、甘えるときはひどく幼い顔を見せる。
「言いなさい。…当事者なのに俺にはその権利がないんですか?」
任務なら甘んじて口をつぐむこともできる。
だがこれはどちらかといえば私闘の類だ。
裏切り者の粛清だというのは事実だとしても、隠される理由はない。
「カチカチだよ?後ろだっておいしそうに指しゃぶって、物足りなさそうにしてるのに」
肝心なことは口にしないくせに卑猥な文句ばかりよく出てくる。猛烈に腹が立った。
「っ!…ぅあ!…なんでそんなに、隠すんだ!俺がそんなに信用できねぇのか!」
怒鳴りつけた途端、男は全ての動きを止めた。…それも驚いた顔で。
「なんでそうなっちゃう?」
「何も言わずにアンタが俺を狙ってた連中を片付けて、それで俺だけ蚊帳の外でのうのうと過ごせってそっちの方がおかしいだろ!」
ごまかしに掛かると思った所に予想外の反応が返ってきて、こっちも戸惑ったが、言いたいことは言ってやった。
これ以上うだうだ言うなら、ぶん殴ってでも白状させるつもりだったんだが。
「えーっと?…なんだか思ったより俺のこと大事にしてくれるんですね」
「は?」
「…うん。言わないのがイルカせんせらしいですけど、ヤバイ。滅茶苦茶嬉しいかも」
「アンタ、何言ってんですか?」
人の足の間を強引に割っておきながら、勝手に納得して勝手に照れている。
何なんだよ!
「あのね。守りたかったのは本当。ツレナイ人だし、俺のことなんてセフレみたいに思ってたでしょ?」
「そ、れは…」
その方がお互いのためだと思っていた。いや、むしろ男の本当に気持ちなど知りたくなかった。いつか捨てられるときに傷が浅い方が忘れられる。
…そう思い始めた頃にはもうとっくに手遅れになっていたけれど。
「俺ばっかり好きなんだと思ってた」
泣きそうな顔で笑われたら、もう。
抱きしめる以外ないじゃないか。
「俺は、アンタが好きです。アンタにおいていかれるのが恐くて…でも」
「ん。ああもうやっぱり無理。…したい」
「え?あ…っ!」
突きつけられた欲望は十分に熱く、それだけで腰がとろけそうになる。欲望に弱すぎる体に舌打ちしても、間近で言外に俺を強請る男を拒みとおせるわけがなかった。
「後で。…我慢できない」
「…俺も」
回り道をしてばかりの心より、正直すぎる体の方がずっと分かりやすい。…なんでもいいんだ。俺の意思でこの男の側にいられるのなら。
ただ交じり合うことが少しだけ恐かった。…今なら全てを読み取られてしまう気がするから。
「好き」
一番欲しい言葉が降るように贈られて、それに返すように深く口づけた。


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適当。
久々。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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