これの続き。 「離せ!この野郎…!」 繰り出した拳はあっさり交わされた。 とは言え腕は痛いほど強く掴まれたままだ。 このままじゃ距離を取ることすら難しい。 そういえば殴ってやろうと思っていたのを忘れていた。 だが…この男にとってはのた打ち回る連中さえおもちゃのようなものなのだろう。 いっそ哀れに思うほどあっさりと返り討ちにされたコイツらの何割が、まだ正気を保っていられるだろうか。 勿論自業自得だ。 多勢に無勢だと、一方的に暴力を振るうために仕掛けてきたのだから、やり返されても文句は言えない。 そもそも私闘そのものが禁止されている上に、さらに自ら里の禁忌に…化け狐の機密に触れている。 それなのに、今コイツらが見ているものが何なのかを知ってしまえば、憎むことすらできなくなりそうだ。 これは同情なのか哀れみなのか…割り切れないこの思い。 苛立ちは全て、その元凶に向かった。 「ねぇ。怒ったのはなんで?」 「なんでもなにもないだろ!」 飄々と訳の分からないことを言う。 おもちゃにされて逆らわないとでも思うのか? たとえ敵でも、馬鹿でも。 …足元に転がる連中はあの日の痛みを知っている。 心底不思議そうな顔で言うこと事態、この男が狂っているとしか思えない。 「違う。ねぇ。あの日、アンタは何で怒ったの?」 あの日?あの日って…。 血の上りきった頭がそれに気付くのが少しだけ遅れたが、男の言葉の意味はすぐわかった。 そうか。あの襲撃の日か。 襲撃が続いていて疲労していたとは言え、情けなくも逃げ損ねてしまったあの日、これに拾われて…おかげで今まさに面倒なことになっている。 怒った?ああ、確かに怒っていたさ。 あの連中に、ままならない己に、結局あの日から失ってばかりのこの里に。 それから、あの子を、傷つけ続ける世界に…なにもかもに。 「ねぇほんとに怒ったのはなんで?あの子のせい?それだけじゃないでしょ」 「ちがう…違う!」 何を言っているんだこの男は。 「泣き顔もそそるけど…どうせならもっと違う理由で泣いて欲しいなー?」 こんな状況で笑っていられるのだから、男は正しく暗部なのだろう。 理性を、人としての大切な何かをうしなわなければ、任務を遂行できないほどに、厳しい所だとはきいている。 だが…こんなのは違う。…違う、はずだ。 何が違うのか自分でも分からない。 ただ認めたくない何かへの激しい拒絶の感情に振り回されるままに、男をにらみつけた。 楽しそうにわらったまま、俺を離さない男を。 ふいに安っぽい電子音がひびくまで。 「タイマー?」 それは男のポーチの中から出てきた。 男の手の中にあると、可愛らしく見えさえするのがこっけいだ。なにより場違いにも程がある。 こんな状況で一体何に使おうというのか。 だが男は嬉しそうにそれを眺め…それからあっさりと握りつぶした。 粉々に砕け散ったそれは地に落ちて、まるで自分の未来の姿のように思える。 「ほら、時間だ。…誕生日プレゼント、ありがとう」 そういえば男の誕生日を確認していなかったのだと今更気付いてももう遅い。 満面の笑みに感じたのは…恐怖。 得体の知れない男が求めていたものが何か、これで分かる。 …それがとてつもなく恐ろしかった。 ********************************************************************************* カカシてんてーおたおめ適当小話4。 ねーおーちーたー。゜。゜(ノД`)゜。゜。続きは近いうちに…!次農家の予定! ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |