これの続き。 「おはよ」 「…ん、ふ…っ」 あまりにも近すぎて視界が銀色一色だ。 寝ぼけた頭で今唇を貪っているものが男の舌らしいことに気付いても、抵抗などできるはずもない。 言葉すら紡ぐのが億劫なほど怠い。 男の行為は際限なく続き、意識を手放してからも恐らく続いたのだろう。 おかげで腰が痺れたように言うことを聞かない。 長らくそこが自分の居場所だとばかりに居座っていたものは抜け落ちているらしく、代わりにふさがれていたそこから溢れたモノで湿ったシーツが、さらされたままの素肌に張り付いて気持ちが悪い。 眉を顰めてそれに耐えた。この男がまだここにいるということは…俺はもしかすると腎虚で死ぬかもしれない。 男が欲しがっていたのものはどうやら性欲処理に使えるおもちゃってとこだろうか。 「ねぇ。ぜーんぶ俺で一杯でしょ?」 肯定も否定もしない。 …確かにこの男で一杯だ。腹の中までたっぷり満たされた他人の体液は、溢れて零れ落ちてもまだなお居座っているに違いない。 そういえばそのままにしておくと腹を壊すんだったか。 この分だとそんなことはお構いなしにちょっかいをかける気だろうから、いなくなってから急いで洗わなくては。 そのときまでに自分の腰がもっと馬鹿になっていることは簡単に予想できて、溜息をついた。 …ああ、一杯だとも。この男のせいで心の隙間まで余計なもので満たされた。 俺には不要なものだ。 それにどうせまがい物なのに、そんなものに縋ってしまえば弱くなる。 守りたいものを最後まで守り通すためには…一人でいい。 「つれない。ま、予想してたけど。素直じゃないもんねぇ?」 これ以上ないほど密着してつながっていた体温が離れていく。 その寒さに一瞬だけ身震いした。 「ま、折角全部俺のモノになってもらったんだし、逃がすつもりないし、意地っ張りもかわいいからいいけどね」 戯言だ。きっと飽きる。 …逃がすつもりはないなんて物騒なセリフを信用なんてできない。 「うっ…!」 軋む体から止め処なく流れ落ちるモノが不快だ。 早く出て行ってくれればいいのに。 「あ、そうだ。起きたんだしお風呂はいろうね!」 男は惨状に一応気付いてはいたらしい。 どうせなら起きてないと反応がなくてつまらないだの、ちゃんと縋ってねだの、頭の悪いセリフを吐いては、零れ落ちたもので汚れた太腿に手を這わせ、ほぅっと溜息をついてうっとりと目を細めている。 …きっと風呂場でも散々な目に会うのは間違いない。 だが自力で身動きできない以上、諦めるしかないだろう。 「風呂…」 「いこ?」 この笑顔だけは評価してもいい。 みてるだけで楽しくなりそうなほど浮かれた顔は、うす赤く染まって何故かこっちの方が恥ずかしくなった。 もう今更だ。なるようになれ。 そう思って素直に男に縋った。 ***** 軽々と抱き上げられたことに今更ショックを感じつつ、あっさりと風呂場に連行されて…予想通り洗ってるんだか汚してるんだか訳の分からない時間を経て何とかベッドに逆戻りすることはできた。 しかもいつの間にかシーツまで取り替えられていた。変な所でまめというか…手早い男だ。 「いーながめ」 …服は与えられなかった。 全身を飾る赤い痕をながめてご満悦な男は、どうにも出て行く気配がない。 明日はアカデミーもある。こんな状態でこの体は言うことを聞いてくれるだろうか。 「寒い」 「なぁに?足りなかった?…温めてあげようか?」 たちの悪い笑みだ。不埒な行為の終わりは見えない。 この男が望むようにおもちゃにされる気などないはずなのに、いつになったらこの遊びに飽きるんだろう。 布団の代わりのように巻きつく手が、悔しくなるほど暖かい。 「…ん…っ!」 「往生際の悪いとこも好きだから…覚悟してね?」 いつだって抱きしめてアンタが誰のものか教えてあげるし、愛の証でどろどろにしてあげる。 嬉しそうに微笑むのは…俺の支配者。 この男の言うことなど俺は欠片も理解できない。 …ただ、確かなこの温もりだけは受け入れてやってもいい。 「あったかい」 素直な感想を追いかけるようにぎゅっとその腕の中に閉じ込められて、それは酷く心地がよかった。 「だってこれが愛してるってことでしょ?」 眠りに落ちる寸前に囁かれた言葉の甘さは、夢に溶けて。 その甘さを、心地よさを、…肉体を傷つけられるのとはまるで違う痛みを。 その全てを誰よりも恐れているというのに。 「ねぇ、堕ちておいで」 繰り返された痛みの代わりに与えられた甘い毒がしみこんで…それに溺れてしまう日はもうすぐそこまできているのかもしれない。 ********************************************************************************* カカシてんてーおたおめ適当小話10。 なんか綺麗に落ちなかった(´・ω・`)かきなおすかもしれません。 続かせたくないのだが続いたら笑って流してやってください(´・ω・`) ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |