これのイルカてんてー視点。 初対面からして変わった人だと思っていた。 確かにあの子を引き受けてくれた喜びの余り、多少騒ぎすぎたかもしれない。 だが、それにしても。 挨拶した時の、一瞬でも見逃さないとばかりにじっと観察するように俺を見つめ、静かな緊張感を漂わせていた様子は、どう考えても初対面の…それもたかが中忍に対するものじゃなかった。 まるで任務さながらだ。 恐らく三代目からなにがしかの指示があったか、それとも俺がこの人に不安を持ったように、この人も俺がどんな人間か調査でもしているんだろう。 だから、しばらくすれば変わるだろうと思った。 笑いかけたとき、その瞳の奥がかすかに揺らいで、一瞬だがうろたえたような気配を出したことだけにはかすかに違和感を感じたけれど。 ***** じっと俺を見つめ、視線が合うと僅かに戸惑いを見せるくせに、すぐさまいかにもなんでもないと言わんばかりに胡散臭い微笑みを浮かべてくる。 やたらとこっちを見てるくせに、すっと視線の方に目をやると、見てなんかいませんでしたよー?とでもいいた気に、視線をさっと逸らして愛読書に目を落とすか、いなくなるか…。 だがいなくなったかなーと思うと、何だかしらないがいつの間にかまた見てたりもした。 最初はちょっと面倒くさいなぁと思っていたソレも、繰り返されるうちに慣れ、なんだかなれない猫みたいだなぁと思ってたら、ある日突然話しかけられたのだ。 「イルカ先生、今晩どうですか?」 杯を傾ける仕草にも驚いたが、何が驚いたって、近づいてきたコトにだ。 書類提出のときならいざ知らず、普段こんな風に俺に声を掛けてくることなんてなかったのに。 「あ、その。はい」 その時思わず頷いてしまった。…だからきっとそのせいだ。 いや、もしかするとうなずかなくても結果は代わらなかったかもしれないんだが。 一度近づくことを許してしまえば後はなし崩しで、相手が俺をなぜこんな行動を取るのか分からないのに、酒食を共にすることに…もっというなら側にいることが当たり前になっていく。 それがどうしてなのかは、結構早い時期に気が付いた。 この人が踏み込んでくるのを許したのは、俺がこの人を知りたいと思っていたからだ。 そして、この人が近づいてくるのは…。 鈍い俺でもいい加減その意図を察していた。 それなのに、側にいて、離れようとしないし、時には独占良くじみたものまで発揮するくせに、何を躊躇っているのかそれ以上先には進もうとしない。 …そろそろ、俺から仕掛けるべきだろうか? そう思っていた矢先、誘われた席で、唐突に酒を勧められたのだ。 普段は飲めとも飲むなとも言わず、ただ俺に酔いが回り始めると、なんとも言えない目で見てくるのは知っていた。 ソレが急にこの態度。 下忍だって何かおかしいと気付きそうなものだが、この男にはどうやら自覚がないようだ。 こうなると…自分から据え膳になってやる必要があるらしい。 強いられるままに杯を干し、意識を飛ばすまで飲んだ。 もう一度目覚めると予想以上に事態が進行していた。 「…っあっああぁ!」 俺に覆いかぶさり、その欲望をねじ込もうとする男はヤケに真剣で色気があって、いくらなんでも今日ここまでするつもりはまだなかったのに受け入れてしまった。 「イルカ、せんせ…」 浮かされたような声にこっちまで流されて、それからさきはあっという間だ。 意識も理性もとろとろに蕩かされて、計画とは違うがどうやら欲しかったモノは手に入ったみたいだと理解した。 ***** 「イルカせんせ…」 不安げな目で見上げる。納得できない問題にぶち当たった時の子どもみたいに真剣で苦しげな瞳。 どうしてかしらないが、ここまでの関係になっておいてもなお、未だにこちらの気持ちはおろか、自分の心まで理解できていないようだ。 「なんですか?」 「どうして、そんな風に…」 ああ、また余計なことばっかり考えて。 どうせなら俺のことだけ考えていればいいのに。 思考を奪い取るように顔中を啄ばみ、あやすように抱きしめた。 抗いきれずに眠りの海に落ちていく、その不安げな顔が愛おしい。 「変わった人だよなぁ…?でもまあ、そこが好きなんだけど」 …自分も同類か。 しがみ付く男を起こさないように隣にもぐりこみ、ほくそ笑んだ。 いつになったら気づくんだか楽しみだと思いながら。 ********************************************************************************* 適当でー!なにやってんだなバカップル続きー。 黒イルカとかどうでしょう?のようなそうでもないような? ではではー!なにかしらつっこみだのご感想だの御気軽にどうぞー! |