これの続き。 「せんせい、は。俺の上忍師で」 あからさまに言いよどむところをみると、後ろ暗いことがあるのは間違いない。 …ほんっと忍だってのに嘘が下手だ。 任務達成率を見る限り、プライベートだけなのかもしれないけど。 この人にあの暗闇を植え付けたのは、その先生とやらだろうか。後で裏を取ってみる必要がありそうだ。 「上忍師かぁ。俺といっしょですね」 「そうです。先生は上忍で」 突然黙り込んでしまったのは、言えない事があるからか。 ヒントが手にはいっただけでもよしとしよう。 …いじめたい訳じゃないんだもの。 泣きそうな顔でうつむいてしまった人を、これ以上追い詰めたら思い余ってとんでもないことしでかしそうだし。 この人のいざと言う時の度胸と思い切りの良さは筋金入りだ。 背中に大穴開けたって聞いたとき、本人はあっけらんとしてたが、ぞっとしたなんてもんじゃなかった。 この人は簡単に自分を粗末にする。俺と違って勝算があるからじゃなく、とっさに誰かを守るために脊髄反射で飛び出していく。 しかも自分の身の安全にあまり頓着しない。しなすぎる。 致命傷スレスレの大怪我しといて、平気な顔で飯食ってたっていうんだからもうあぶなっかしいったらない。 自分の痛みに鈍感すぎる人は、今追い詰められた顔をしているくせに、俺に何かを語ろうとしている。 でも言えないのだと葛藤している。 …隠し通そうとするなら暴くだけなんだけど、こういう顔されちゃうと決心が鈍る。 「言えない?」 「いいえ。カカシさんは巻き込んでしまいたくないんです」 “カカシさんは”その言い方に引っかかった。 俺の前にも巻き込んだ人間がいるってことか。 「いいじゃない。巻き込んでよ。っていうかもうあなたは俺のモノなんで、むしろとっくに一蓮托生ですよ?」 テーブルの上に置かれた手を握りこむと、冷え切って震えている。 そんなに怯えなくったっていいのに。 この人がたとえ化け物だろうが、人でなしだろうが、俺のモノならそれでいい。 人でなしというなら俺の方がずっとそうだから、この人に取っちゃ災難かもねぇ? 押し隠しているものを少しずつ引っ張り出して、全部見る事が出来たら…きっとこの人は完全に俺のモノになる。 それが待ち遠しくてたまらない。 「話したら、ダメだと思ったら早く逃げて下さい。…いや、違うな。俺を牢にでも放り込んでください」 「それもいいかも」 この人を牢につなぐ。それは最高に楽しいだろう。 誰にも見せないで誰にも触れさせないで、俺だけのために生きてもらう。なんて、なんて幸せな夢。いやむしろ野望かも。 「…その前に、俺を拘束してください。様子がおかしくなったらすぐに火影様に突き出して…それから、二度と俺に関わらないようにしてください」 揺れる瞳に簡単に欲情する体に、この人は気づいていないだろう。 拘束ねぇ?そりゃ楽しそうだけど、それほど怯える何かがこの人にあるってことだ。 …それを見せてくれる気でいるってことだ。 「痛くないように縛りますね?」 抵抗されたら使おうと思っていたモノはたくさんある。まずは一番シンプルな縄なんていいかもしれない。 もうちょっと慣れてから、他にも色々見せてあげたいけど。 取り出した縄を巻きつけられ、動きを制限されていくにつれ、何故かこの人はほっとしたようにため息をついた。 「ありがとう、ございます」 両の腕を祈るように纏め上げられた姿は、異国の宗教画のように神聖さとをたたえながら、どこか淫猥ですらある。 「教えて」 「…先生には、大事な人がいたんです。誰よりも何よりも、全てを失ってもいいほどに」 ********************************************************************************* 適当。 ご意見ご感想お気軽にどうぞー |