武将の人9(適当)



これの続き。


「まずは、お詫びを。この間はろくにご挨拶もできなかったので」
「そうか。だが小僧に謝られてもな。その、別にお前が悪いわけではないだろう」
うん。つかみはこれでよし。
語調は強いままだけど…うみのさん、早速動揺してる。
この人って、本当にいい人だよね。
奥さんも人がよさそうだけど、くノ一だけあって、うみのさんよりずっと現実的で…多分敵にまわしたら相当に手ごわいと思う。
父さんがこの人にちょっかいかけても放って置いてるのって、いざとなったらどうとでもできると思ってるか、夫がヤられるくらいなんてことないと思ってるからなのか…。
調べたら戦績も奥さんの方がずっとすごいみたいだし。
イルカがあんなに天真爛漫なのって、絶対お父さんに似たんだと思うな。
…おかげで、作戦が立てやすい。
「父がご迷惑をおかけしているのは事実ですから。あの決して性格が悪い訳じゃないんです!今までもずっと男手一つで俺を育ててくれて、忍術だっていっぱい教えてくれました!」
これは本当だ。
性格は悪いっていうより…うーん?なんていうんだろう。
変。その一言に尽きる。
母さんがいてくれたし、三代目や、エッチなことばっかり教えてくるけど、自来也様も色々教えてくれたし、母さんが先立ってからは任務にでるようになってたから、早い段階でそれに気づけてよかったと思う。
イルカみたいに普通の子供だったら、俺はきっともっと父さんの影響を受けていただろう。
忍としては最上級にあっても、人としてはちょっと…うーん大分?普通じゃないもんね。
でも、俺には大事な父さんだから。…だからこの人に父さんを嫌って欲しくない。できれば、だけど。
「…そうか」
痛ましげな視線は、今は俺を安堵させてくれる。
こうやって普通の子供扱いされるのは、初めてかもしれない。
忍には片親の家なんていくらでもあるからっていうのもあるけど、それ以前に、俺が父さんの子供で、普通よりずっと早く忍になったからだ。
こんな風に撫でてくれた人は、今までほとんどいなかった。
俺を子供扱いしてくれたのは、母さんと三代目と、それから限られた人たちだけだ。
玉にガキの癖にとか言われることもあって、そいつらは力の差を見せ付けてやったけど…この人のこれは、俺を見下してるわけじゃないってわかるから、安心できた。
…それに、作戦にも有利だし?
「父さんは母さんがいなくなっちゃってから、ちょっとその…うみのさんにご迷惑をおかけしているのはわかってるんです。でも…でも父さんが…父さんがあんな風に自分から動いてくれるなんて、ずっとなかったから」
これも本当。
父さんはあの日から普通の人のフリを止めてしまったんだと思う。
無意識に母さんの言いつけを守りはするけど、笑ったりすることもほとんどなかった。
つなぎとめていた鎖を失った父さんを支えるには、きっと俺の力だけじゃ足りない。
…この際多少強引な手段を使ってでも、この人が必要なんだ。俺には。
「小僧。ガキは余計なことを考えるな!」
「…ごめんなさい…」
失敗、しただろうか。
だって、父さんを失いたくない。今のままだとふらっとどこかへ行ってしまいそうで、怖い。
俺がイルカを欲しいのと同じように、父さんがこの人を欲しいんだとしたら…多分失ったら死んでしまう。
「小僧。お前、しばらくうちに泊まれ。あのケダモノには…俺が今から言いにいってやるからな」
首がもげそうな勢いで撫で回された後、うみのさんはすっくと立ち上がった。
まるで通り名の武将のように。
「うみのさん…!でも!」
父さんには、ハウスって言っちゃった事を謝りついでに、一応いきなり襲っちゃだめだって言ってある。
でも、父さんは父さんだから、いきなりうみのさんを洗脳したりとか、とんでもない方向に行ってもおかしくない。
止めようとした手は、不適な笑みを浮かべるうみのさんにあっさりと拒まれた。 「ガキはガキらしくしていろ。こういうのは大人の仕事だ」
そういって飛び出していったうみのさんを、俺は呆然と見送ることしかできなかった。


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とりあえず子カカイル祭り継続中。
父ちゃん墓穴。
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