武将の人5(適当)



これの続き。


緊迫した空気を打ち破ったのは、必死でありながらなんとも間抜けな怒号だった。
「父さん!ハウス!」
「…カカシ?」
一瞬で瞳に理性が宿る。
ゆらりと俺から離れ、銀をまとったケダモノが声の方へ顔を向けた。
その隙を突いてすぐさま身を翻した。
声の主の隣に、守るべきものがいたからだ。
「父ちゃん!」
「イルカ!逃げろと言っただろう!」
こんなケダモノのそばで無防備に…!
あわてて背後にかばったが、ケダモノを押さえ込んでくれた…のか、これは。
さすが俺の子だ…!その手段は不愉快ではあるが、的確でもある。
「すみません!うちの父が…。すぐにつれて帰りますから!」
息子の方が随分とまともであるようだ。
いや、自分の父親にハウス…犬じゃあるまいし。
やっぱり親子ということか…?
「サクモさん。父ちゃんとプロレスごっこするなら、川原じゃ危ないよ!今度うちか…えっとあと…そうだ!演習場でやろうよ!」
「イルカ…父ちゃんは…」
そもそもプロレスごっこじゃないなどと言えるわけがない。
教育に悪いにもほどがある。
それにこんなヤツとじゃれあうつもりもない。何をされるかわからん。
とはいえ、イルカには難しいだろうな…。
人に優しく己に厳しく。
強さはもちろん必要だが、他者を慮れぬ忍などただの兵器に過ぎぬ。
そうやって育てた素直な愛息子は、だれにでも分け隔てなく接する優しい子に育っている。
それに付け込むように銀髪小僧が…!
…そもそも己の父親がしている行為の意味がわかっているのだろうか。
イルカには…その、まだ早いとその手のことはまるで教えていないんだが…。
銀髪小僧も年齢からして理解していなくても不思議はない。
一応この子供はすでに中忍だが、さすがにそこまで知っているかどうか…。
「カカシ」
「父さん。ちゃんと同意を取らないとダメでしょ!任務中じゃないならなおさら」
お前は手練のくノ一か!
…そうか…ということはイ、イルカも危ないんじゃないのか…!?
言葉巧みにイルカを丸め込んで…ある日突然責任とってくださいなどといわれたらどうしたらいいのか。
「結婚は許さん!イルカは確かにかわいいが、貴様なんぞを嫁にもらわせるつもりはない!」
恐ろしい想像のおかげで、声まで裏返ってしまった。
そもそもまだ子供だ。
…できうればずっと手元においておきたい気持ちもあるが、いつかは大きく育って、俺と妻のもとから巣立っていくだろう。
その日は、まだずっと先であって欲しい。
間違っても今すぐであってはならない。というかそもそも相手が…!
「父ちゃん…!」
泣きそうな顔で俺を見上げる息子には、気づかなかったフリをした。
子供だからこそ判断を誤ることは良くあることだ。
そんな時、親以外のだれが道を正してやれる?
俺がこうして動くのは当然のことだ。…そのはずだ。
頼むから泣くな…!父ちゃんもうすでに胃が痛いぞ…!
「…そうか」
「そもそも、なんでうみのさんなの?」
「ああ、そういえば…どうしてだろう?側にいい匂いがして、この人が。ウミノサンというのか。そういえば、イルカ君も…?」
「ま、そうだね。親子だし。…父さん…。名前も知らない相手襲ってたの…」
呆れ顔の銀髪小僧に、このときばかりは同情した。
息子にあんな苦労をかけるなんて…なにやってるんだこのケダモノは。
「おいそこのケダモノ!子供に迷惑をかけるとは親の風上にも置けんヤツめ!」
正直にいうと、金輪際、一切欠片も関わりたくはないが…放置もできん。
こんなヤツに任せておいたら、銀髪小僧までとんでもない生き物に育つだろう。
その結果としてイルカまで…なんてことになったら俺は…!
「ウミノサン」
ぎこちなく名を呼ぶ男が微笑んだ。
…くそっ…!顔が良くても強くても、馬鹿じゃどうしようもないだろうが!
「貴様には金輪際うちには関わらないでもらおうか。…銀髪小僧は茶のみ位なら許してやるが、俺が見ていないときにイルカに近づくな。それからだな。俺がじきじきにお付き合いのいろはというものを…」
「ウミノサンが欲しい」
「だから人の話を聞けといつも言ってるだろうがあああ!」
響き渡る怒号にイルカは瞳を輝かせ、銀髪小僧は深く深くため息をついたのだが…目の前のケダモノは得たりとばかりに微笑んでいる。
俺の受難はまだ終わりそうにもないのだと、頭を抱えるしかなかった。


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とりあえず子カカイル祭り継続中。
暴走中。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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