これの続き。 「んっと、がんばってね!父ちゃん!」 かわいいかわいい一人息子は、今日も朗らかで一生懸命で…本当にそれはもういい子に育っている。 妻に似てやさしい子で、目に入れても痛くないほどかわいがり、いずれは里を支える礎となって欲しいと、色々と心を砕いてきたというのに…。 ある日突然、ずっと一緒にいたいんだ!なんてそのかわいいかわいいかわいい一人息子が連れてきたのは、あろうことか男。 性格のよさからか、人に好かれる息子には同年代の友達が山ほどいるというのに。 商店街でもそこここから声を掛けられて、女の子の友達もいるというのにだ。 何をまかり間違って、あんな小僧に…! いつかは気立ての良い女性と所帯を持って、幸せになって欲しいと願っていた。 孫の顔が見られるかどうかは、この不安定な情勢では望み薄かもしれないとしても、生きている間にはこの子の幸せを全力で守るつもりだ。 それが!なぜ! 俺の腕の中にすっぽりと納まる小さな体で、あのクソガキを守るなどというのだ。 相手が何者かも理解していまい。 白い牙の息子。…息子とそうたいして年が変わらぬ幼子は、すでに中忍となっていると聞く。 確かに利発そうではあった。 強くありさえすれば、あのような幼子を戦場に引きずり出さざるを得ない情勢にも憤りを感じた。 …息子の嫁候補などという、馬鹿げたものでなければ。 「イルカ。いいか。あの銀髪小僧にはできるだけ近づくな」 相手が幼子だからと警戒を緩めるわけには行かぬ。 アレは違う。…隙を見せればイルカを掻っ攫って行かれかねない。 それだけの意思の強さと、厄介なことに実力もある。 それにあれは…あのケダモノの息子だからな。 アレが協力すればあるいは、里抜けさえ…。 そう思うとぞっとするなどというもので収まらない。 やはり三代目にもご助力を願い出るべきかもしれぬ。 なにせあの方もイルカをそれはそれは大切にしてくださっているからな。 「なんで!カカシはいいやつだよ!いつも父ちゃんはそういうけどさ…カカシ、悲しそうにしてるんだぞ…」 しまった!つい正直に言い過ぎた! 「いやそのだな!な、泣くな!あの子供とは節度をもって付き合うようにという…そのだな!」 「うん!ちゃんと任務の邪魔にならないようにしてるよ!」 にこっと笑うと本当にかわいい顔をしている。 このかわいらしさがまずかったのか…。 どこであんなモノと知り合いになってきたのか、いつか問い詰めねばなるまい。 今日のところは、その、泣いているしな。アイスでも買ってやろうか。息子の今のお気に入りは、当たりつきの棒アイスだったはず。 「…帰るか」 「うん!父ちゃん!…俺、がんばるから!」 心配そうに俺を見上げる愛息子。それに家に帰れば愛しい妻も待っている。 それをそう簡単に壊されてなるものか…! 「いい子に育って…!父ちゃんは負けん!イルカも…」 「父ちゃん!?」 悲鳴の後、背後の殺気染みた気配に圧倒された。 「また貴様か!」 「…いた」 ゆらりと立ち上るチャクラは、白い牙と謳われるだけある。 今ではコイツの気配がしようものなら鳥肌が立つまでになった。 と言ってもこうしていつの間にか張り付かれて…くそっ! 「はなれんか!イルカ!逃げろ!」 「匂いが。…もっと」 同じ上忍の中でも格が違う。 自分もそこそこ名が知れているとはいえ、この男のようにはいかない。 それを理解していても、容易く組敷かれてしまう己の不甲斐なさに憤死しそうだ。 そもそも意思の疎通がほぼまったくと言っていいほどできんのはどういうことだ! 「ぎゃあああ!?舐めるな!」 「足りない」 「くっ!この…ケダモノめが!そう簡単に思い通りになると思うなよ!?」 「逃げる、から」 小首をかしげて何をおっしゃりやがっているのか。この白い牙と言う名の変態は。 「当たり前だろうがあああ!」 そもそもお宅のクソガキがうちのかわいいイルカにちゅ、ちゅーだとかなんだとか破廉恥な行為を仕掛けるのを即刻止めさせろと言いに行っただけのはずだった。 それがいきなりいいにおいがするだの何だの言われて、ごまかす気なのかと怒鳴る前にいきなり服を…! 今もそうだ。何の脈略もなく現れては、こうしていきなり襲い掛かってくる。 その瞳を欲望に揺らめかせ、躊躇いなど一切見せないその様は、まさにケダモノそのものだ。 最初から本気で抗ってはいたが、この所のやり取りは実践さながらだ。 殴ってもこともなげに…むしろ拘束用の縄まで持ち出して…!それもアレは俺も使ったことがある。暗部の支給品だ。 クナイを抜いてでもと思いつめているほどに、この男の性懲りのなさは筋金入りだ。 「欲しい」 「断る!」 夕日の赤が別の赤に変わるのも、そう遠くはないのかもしれないと涙した。 ********************************************************************************* とりあえず子カカイル祭り継続中。 うふふふふ(´∀`*)ウフフ←やりたい放題。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |