武将の人―温泉編6(適当)


イベント会場で読みたいとおっしゃってくださった方がいらしたのでこそっと連載予定。
前のお話はこれ⇒武将の人-温泉編4の続き。



ものすごーく久しぶりに父ちゃんと銭湯にやってきた。しかも今回は、カカシとカカシの父ちゃんも一緒だ!
父ちゃんと銭湯に行くと、サウナでげんかいにちょうせんとか、あとあっつい方のお湯に浸かってごくらくごくらくっていったりとか、冷水を浴びてぬう…!とかいったりして色々かっこいいし、一緒に入ってる爺ちゃんたちも楽しそうだし、俺も色々できて楽しい。あと牛乳一気飲み競争とかも大好きだし!
そんなわけで、カカシと一緒にシャンプーとか石鹸とかタライに入れて、あとタオルも持って、わくわくしながら銭湯に突入した。
珍しく父ちゃんが怒らなかったから、途中までカカシと一緒に手を繋いで、途中から父ちゃんが俺の両手持ち上げてゆらゆらするやつもやってくれた。サクモさんにもやってみろって行ったら、カカシを遠くに投げちゃってカカシもくるくるーって回って着地してて、すっげぇかっこ良かった!父ちゃんは怒ってたけどなんでだろ?
まあそんなこんなで、温泉のマナーってものを徹底的に叩き込むという父ちゃんの気合の入りまくった怒号と共に、銭湯でのもぎえんしゅう?は始まった。
なんでもぎえんしゅうなのかはよくわかんないけど、母ちゃんがそうやってサクモさんに言い聞かせてたんだよなー。なんかさ、よくわかんないけどかっこいいよな!ホンモノの忍者になったみたいで!カカシはもう中忍だけど、俺はまだアカデミー生だし、もっともっと修行して、いつかはああやってかっこよくくるくるーってできるようになりたいよな…! まあいきなりでっかい声だしたから、番台のおっちゃんに「静かにしてくれねぇと困るようみのさん」って、ちょこっと怒られてたけど、サクモさんは静かに辺りを見渡して父ちゃんを見て、それからまた辺りを見渡して父ちゃんを見て、時々カカシをみるって感じでいつも通りだったから、知らないところにきてびっくりさせなくて済んでよかったかもしれない。サクモさんは警戒心が強いから、知らないところに連れてくとずーっと静かに辺りを警戒しつづけちゃうもんな。特に父ちゃんがいないと、トラップとか仕掛けちゃうこともあるから危ない。
父ちゃんがいるとずーっと父ちゃんをみてるから、この作戦を考えた母ちゃんは凄いと思った。
カカシも始めて銭湯に来たって言ってたけど、周りをかるーく見て回ったあとは、普通に銭湯に馴染んでいた。一緒にこれが牛乳で、コーヒー牛乳は邪道だけど、フルーツ牛乳は一周回ってアリなんだってこととか、大人はビールっていう最終手段があるけど俺たちはまだ駄目だとか、ロッカーの鍵は手首にしっかりつけとかないとどっかいっちゃったら弁償しなきゃいけなくて、あと銭湯は忍術禁止だってこととか、湯船がでっかくて楽しそうでも飛び込んだら他の人が困っちゃうからだめだとか、左っかわのはあっついお湯だから、子どもは無理しちゃダメなんだけど、いつかは入れるようになりたいってこととか、それから前に覗きに挑戦した人が、番台の元上忍のおっちゃんの手によりそれはもう恥ずかしい目にあわされたとかいう伝説とかについてもしっかりと話しておいた。時々父ちゃんもうんうん頷いて、その度にサクモさんがじわじわ近寄ってきて冷や汗流したりしてた。
後はいつもみたいに服を脱いで、ちゃんと体を流してからでっかい湯船にじっくりつかるだけだったんだけど。
…なんか、父ちゃんが凝視されてるうちに震え始めて、サクモさんがしずかーに、でも明らかに獲物を見てるときの狼みたいな目で父ちゃんを狙っていて、裸を見るとプロレスごっこしたくなるお年頃なのかもしれないけど、そこは困った。
だって銭湯じゃ暴れちゃいけないんだぞ?それなのにサクモさんはなんかこう…今にも父ちゃんに勝負を挑みそうっていうか、空気はぴりぴりするし、他のおじいちゃんとかおっちゃんとかも皆冷や汗かいて唾を飲み込んでる音が響いてるし、カカシが止めなかったらどうなっていたか…。
父ちゃんが泣きそうになってたのは、やっぱり練習通りに上手くいかなかったからかなぁ?服を脱ぎ捨てるたびにじりじり近寄ってくのは止めてあげて欲しいよね?
「ええい!よるな!見るな!銭湯で妙な気起こしてみろ…!警邏隊と全裸で渡り合えるというならかまわんがな!」
「?できる。やってもいいのなら…」
「いいわけあるかー!いい加減にしろこのケダモノめ!ここは!公共の!銭湯で!」
「うみのさん。騒いじゃダメだっつってんでしょ!そこの銀髪のあんちゃんもさ、うみのさんばっかりみてねぇでうちの風呂に浸かってみておくんな!壁の木の葉山眺めながらさ!命もきれいさーっぱりつるっつるに洗濯できちまうからよ!湯加減が良すぎて昇天しないように気をつけてな!」
「昇天…?何かの術が?」
「だー!いいからこっちをみるな!…イルカ。髪を洗ってやる。ケダモノ。お前も銀髪小僧の髪を洗ってやれ。いいな?」
「わかった」
「父さん。これがシャンプーで、こっちがリンスで、先に体を洗ってからじゃないとお風呂に入れないんだって」
「そうか」
なんかさ。カカシの父ちゃんって術とかそういうのは得意だし、時々ものすごいの教えてくれたりするのに、他の事全然知らないよな。カカシの方が色々詳しくて、時々どっちが父ちゃんなんだかわかんなくなることもある。
任務中は凄いんだって、そこは父ちゃんも認めてたんだけどなー…。
「イルカ。今日は危険なイキモノが側にいるから、父ちゃんの側から離れるなよ?」
「うん!」
サクモさんは危険っていえば危険だよな。だってあんまり銭湯のルールを守れないと、術かけられて二度とは入れなくなるっていう恐い話をおっちゃんからさっき聞いたばっかりだ。牛乳の味に関しては、イチゴもありっちゃありっていう新たな常識も教わったし、さっすが銭湯のすべてを知り尽くした男…!なんかかっこいいよな!
「イルカ。これどうやって使うの?」
カカシが手に取ったのは銭湯の椅子だ。ここはヒノキにこだわってて、たらいも木で出来ててかっこいい。カカシが持ってるとそれだけでなんかかっこよくみえるしな!
「これはシャワーで一回流してからこうやって座って、体洗うときとかに使うんだ!このたらいも…」
「小僧。座れ。お前は後ろに立て。イルカはこっち」
父ちゃんがさっきより顔色よくなってるのは嬉しいんだけど、カカシを取られちゃったみたいでちょっと寂しい。でも温泉のためだもんな…!ここは一つ!男として我慢しないといけないんだ!
「カカシ。シャンプーは苦いから口開けちゃ駄目だからな?」
「うん!あ。父さん。水遁は駄目だよ?ほら、うみのさんはシャワー使ってるからここのカラン回してシャワーにしよ?」
水遁はここじゃ禁止だ。忍術は全部駄目ってことになってるのに、凄い速さで印組んじゃうし、カカシはカカシでどうやって止めたのかわかんないくらい早いし、凄いよな!
父ちゃんはなんかぐぅ…とかクソガキがイルカと手をつなごうとするなとかなんか言ってるけど、サクモさんがまだじーって見てるから面と向かっては怒れないみたいだった。
「い、いいか?そこの小僧の言っているように、まずは頭を十分に濡らす。イルカ。目を瞑っていなさい」
「はーい!」
へへ!父ちゃんの水のかけっぷりも洗い方も豪快で、楽しいんだよな!もちろんもう自分でも洗えるけど、たまにしか父ちゃんと一緒に銭湯なんて行けない。折角ならいっぱい銭湯堪能しなくちゃもったいないもんな!
父ちゃんのも後で洗ってあげようかな?サクモさんも俺がくっついてるとすこーしだけだけどプロレスごっこ欲が収まるみたいだから。
「父さんもやってみて?」
「ああ」
あ。ちゃんとカカシに向き直った。それに結構手際がいい。手つきがさ、なんていうかせんさい?だよな。サクモさんは。手もでっかいのになんかほそっこく見えるって言うかさ。カカシに似てる。
「かゆい所はないか?」
「うん!大丈夫!」
「うむ。じゃあ流すぞ?小僧の方も洗い終わったら湯をかけろ」
「分かった」
うんうん。一応黙々と髪を洗ってるみたいだ。サクモさん器用だもんな!ちょっと色々変わってもいるけど、カカシのことはすっごく大事なんだって俺にも分かる。色々知らないだけだったら、一緒に勉強すればいい。一回教えたらすぐ覚えちゃうんだからきっとあっという間だ。
ざーっとシャワーのお湯が降ってきて、泡がどんどん解けて消えていって、頭がさっぱりした。ここでいつもならリンスするんだけど、ちゃんとできるかなぁ?
「どうだ?小僧の方は?」
「かゆいところ…は、あるか?」
「ないから大丈夫。ありがと!父さん!」
「そうか」
カカシもちょっと嬉しそうにしてる。よかった!銭湯って聞いて、なんでクナイと起爆札と巻物とかでてきちゃうんだろうと思ったら、一度もきたことないっていうから、心配してたんだよな。でもカカシがさりげなくサポートするから全然困ったりしてない。流石カカシだ!
「ちょっと冷たいぞ」
「うひゃ!うん!」
リンスはこのヒヤってするからびっくりするんだよなー。でもこれやんないと髪がぼさぼさになるって母ちゃんが怒るから、ちゃんとしとかないと。前は父ちゃんもしてなかったみたいだけど、母ちゃんが艶のある髪が好きだっていうからがんばってるらしい。
なんか、すごいよな。父ちゃんも。母ちゃんまっしぐらだもんな。サクモさんも父ちゃんまっしぐらだし、実は母ちゃんも父ちゃん大好きだし、父ちゃんは凄いと思う。
髪の洗い方も上手いもんな!
「…冷たいそうだ」
「うん」
おお!すごい!カカシはびっくりしてない!…俺も早く忍になって、ああやってどーんっと構え照られる男にならないとな…!
でも、ちょっとだけ。うん。ちょっとだけなんだけど、すっごく嬉しそうに笑ったのがほんのちょっとだけだけど、悔しかったような…?いやでもサクモさんは父ちゃんだし!
…でもカカシの背中は俺が洗ってあげるんだ!
「よし。じゃあまず体を洗って、最後に頭を流せば完璧だ」
「父ちゃんの背中流す!」
「イ、イルカ…!そうかそうか…!ありがとな!」
「カカシのも!」
「なにぃ!?」
「父さんはうみのさんの背中流せばいいんじゃないかな?俺がイルカの流すし」
「…そうか」
んっと。なんか、サクモさんから相変わらず無表情なのにピンク色っぽいチャクラが…?体洗いながら戦うのも駄目だって言わないと駄目かな?
まあいいや!背中の流し方、しっかり覚えてもらわないとな!
「お、俺はイルカに流してもらう!い、いいから貴様は…!」
「洗浄液は…これか」
「い、いいといってるだろうが!」
「力加減が大事なんだ!ちゃんと見ててね!サクモさん!」
「わかった」
初めて背中流したときは、俺も加減がわかんなくて背中ざりざりにしちゃったんだよな。お風呂は染みるし寝るとき痛いし、大変なことになるから気をつけないと。父ちゃん我慢強いから…。
サクモさんは意外と力持ちっぽいから気をつけないと。でも勉強熱心だからきっと大丈夫だろう。
「よーっし!いくぜ!父ちゃん!」
「あ、ああ。その、父ちゃんはイルカに全部…!」
「…なるほど。清拭用の布を濡らしてから…」
「こんな感じ!力入れすぎると痛いから気をつけてね?」
「わかった」
サクモさんが楽しそうで、ちょっとだけ嬉しくなってカカシを見たら、ちょっと困った顔をしていた。あれ?なんでだろ?やっぱり心配なのかなぁ?
よっし!ここは俺の腕の見せ所!頑張っちゃうから見ててね!カカシ!
決意も新たに、気合たっぷりにタオルを握り締めた。背中の洗い方をガッツリ身につけてもらうために。

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適当。
愛息子に追い詰められる父。
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