武将の人―温泉編13(適当)


イベント会場で読みたいとおっしゃってくださった方がいらしたのでこそっと連載予定。
前のお話はこれ⇒武将の人-温泉編12の続き。



朝起きたらカカシじゃなくて父ちゃんがふがふがうなされながら寝てたから、物凄くびっくりした。時々白目剥いて寝るんだよなー。朝起きて一番に見るのはカカシの顔だと思ってたから余計びっくりした。
びっくりするついでに隣を見たらもうすぐご飯よって言う母ちゃんがいて、父ちゃんの隣にはサクモさんとカカシが寝てて、サクモさんが何かちょっと変だった。
なにがって、いつもいつも父ちゃんばっかり見てるのに、今はカカシを顔が見れないくらいぎゅーってしたまま目を閉じている。でも、多分寝てない。だって分かる。こんなにピリピリしたサクモさんを見るのは初めてだ。
「カカシ?」
 カカシに何かあったんじゃないかって恐くなって名前を呼んだら、もそもそ腕の中から這い出してきた。
「…イルカ?あれ?ああ父さん。おはよう」
「…?カカシ。どこへ行く?駄目だ。外は」
「大丈夫だよ。ご飯作らなきゃ!ほら、うみのさんだってお腹空かせちゃう」
「ウミノサン。…ああ、そうか」
 えーっと。サクモさんはまだぼんやりしてるけど、父ちゃんのとこにいったから大丈夫だよな?きっと。寝ぼける所はじめてみたからちょっとびっくりした。
それにしてもサクモさんっていつも素早いよなー?いつも一瞬で移動しちゃうから、最初は術でも使ってるのかと思ったもんな。術使ったらもっと早いって教えてもらったから、いつか俺も使えるようになりたい。そしたらカカシが遠くにいるときだって、すぐに手伝いにいけるもんな!
そして父ちゃんの寝顔も凄い。眉間の皺が深すぎて、間に何か挟めそうなくらいで、ちょこっとだけ白眼剥いてるのもちょっと恐いんだけど、サクモさんはじーっと見てるから多分あの顔見るの楽しいんだろうなー?変わった趣味だ。
「あなた。起きて?起きないと…」
「ウミノサン…」
「ふが?ひぎゃあ!うお!なななな!え!あ、イルカ!イルカは無事か!」
 あ。父ちゃんまたサクモさんに起こされてる。すーって首のとこ触られるから物凄く驚くし、しかも速攻プロレスごっこに持ち込もうとする事が多いから、朝からどすんばたんって凄いことになるんだよなー?ここんとこ。
でも父ちゃんのが寝ぼすけだと思ってたけど、サクモさんもそうだったんだな!知らなかった!カカシもそうなのかな?ちょっと見てみたい気がするけど、寝ぼけたカカシって今まで見たことないんだよなー?朝起きたらすぐおはようのちゅーで、後は一緒に布団畳んでるもんな。ちょっと残念だ。
「なぁカカシ。サクモさんちゃん大丈夫かな?」
 父ちゃんの寝ぼけっぷりは結構酷い。疲れてる時なんかは、特にだ。
白目剥いたりとか口が半開きになったりとかするから、おもしろい顔になっちゃうし、寝言も何かと戦ってるかと思えばラーメン食べようとしてたり温泉入ってたりしておもしろい。あと突然笑い出すこともある。昔、同じ天幕で寝てた人が泣いちゃうくらい凄かったんだって。夜襲を受けたのに、父ちゃんの笑い声でびっくりした敵が逃げてったこともあるらしい。流石父ちゃんだ!
 でも父ちゃんは起きたら結構しゃきっとするし、すぐに歯を磨いて顔を洗って髭もささっと整えていつもの父ちゃんに戻る。
サクモさんはどうなんだろう?こんな風になってるのはじめてみたんだけど、ほっといたら父ちゃんみたいにシャキッてなるのかなあ?元々ふわふわしてるもんな。術を教えてくれてるときは早いしかっこいいんだけど。
寝ぼけて家に穴が空いたりしたら困るなと思ってカカシに聞いてみたら、今日もかわいい顔でにこっと笑ってくれた。
「うん。ちょっと寝ぼけてるだけだと思う」
 カカシが言うと安心する。なら大丈夫だよな!って気がしたから、とりあえず叫んでる父ちゃんとそんな父ちゃんの顔を舐めようとして母ちゃんにメッってされてるサクモさんを置いて、台所へ急いだ。
半分寝ぼけた父ちゃんたちを母ちゃんに任せちゃったのは大変かもだけど、朝は戦場だからのろのろしてたら駄目なんだ。父ちゃんは任務だし、母ちゃんも時々任務だし、俺はアカデミーだし、カカシは任務だし、サクモさんも任務だ。
 しかもサクモさんとカカシは一緒の事が多いから、皆で一斉に行ってきますになっちゃう事が結構ある。ご飯は母ちゃんが作ってくれるけど、準備はカカシが申し訳ないからってお泊まりの度にやるようになって、手伝ってるうちに俺も上手くなって来た。…と思う。時々がっちゃんってしちゃうこともあるけど!
 宿題も一緒に見てくれるから、わからなかったところも簡単にできるようになって、カカシってやっぱりすごいなぁっていつも思っている。
 二人で手を洗って顔も洗って服も着替えてる間に、大体父ちゃんがぎゃーって言いながら着替えてご飯一緒に食べる。今日はなんでかみんな同じ部屋にいたからどうなるんだろうってちょっと心配してたけど、父ちゃんの服がちょっと乱れてるのもいつも通りだったし、サクモさんもいつも通り父ちゃんとくっついて…あれ?いつもより距離が近いかも?
「あら。よそってくれたの?ありがとう。イルカもカカシ君もほら、座って?」
「はーい!」
「ありがとうございます」
 へへ!褒められると嬉しいよな!何か、ちょっと様子が変なサクモさんは気になるけど、お腹空いてるせいかもしれない。きっとお腹一杯食べたら元気になるよな!
「父ちゃん!ちゃんと大盛りにしといたよ!一杯食べて頑張ってね!」
「イルカ…!ありがとうな。いい子に育って…!」
 父ちゃんは大げさなんだよなー。何で泣いちゃうのかは良く分かんないけど、元気出たらいいな。朝から叫ぶと疲れちゃうだろうし。
「父さん。それはうみのさんの椅子だから、父さんはこっち。そんな目しても駄目。膝に乗っけるのも駄目」
「…」
 しょぼんってしてるのかわいそうだけど、父ちゃんがびくってなってるからなぁ。父ちゃんも大変だよな。サクモさんと趣味が合えばよかったのに。父ちゃんはプロレスより野球が好きだし、サクモさんみたいに日々趣味に没頭したりする方じゃない。
まあサクモさんも銭湯は気に入ったみたいでおそろいのパンツを持ってくんだって言ったらふわって笑ってたからそっちで気が合うといいんだけど。
カカシにお嫁さんになって貰ったら、サクモさんと父ちゃんも家族になるわけだし、今だって家族みたいな感じだし、気が合うに越したことはない。それなのに父ちゃんと母ちゃんはお互い大好きだし、母ちゃんとサクモさんも普通に仲良しなのに、どうして父ちゃんとサクモさんは上手くいかないんだろう?ちょっとだけ落ち込む。
「あなた。時間は大丈夫?」
「あ。ああ!うむ。今日の味噌汁も美味い」
「お茶は?お茶は?」
 おっと!ぼんやりしてちゃ駄目だった!なにせ今は朝で戦場だからな!
そう。今日も母ちゃんの味噌汁は美味しい。でもお茶を淹れたのは母ちゃんじゃない。
 ゆっくりと湯飲みを傾けると、父ちゃんはにかっと笑って頭をなでてくれた。
「おいしいぞ?腕を上げたな!イルカ!」
「へへ!よかった!ね?カカシ!」
「そうだね」
 実は最近二人でお茶の勉強と一緒に特訓もした。サクモさんは潜入?っていう任務につくことが多いみたいで、大名がどうとかっていうので色々できるらしい。
 不思議だよなー?銭湯は上手く入れないし、商店街での買い物のときもカカシが買わないと物凄く適当に買い込もうとするし、洗濯とか掃除とかもいつもびっくりされるのに、難しいことは一杯できるんだもんな。
「…ま、まさか小僧めが…?」
「二人で淹れたんだ!な?カカシ!」
「うん!」
 父ちゃんが一瞬ものすごい顔したけど、急に眉が下がってしまった。なんだろう?今日はピーマン入った卵焼きとかじゃないのに。
「…小僧。貴様の修行はまだはじまったばかりだからな。精進しろよ?」
「はい」
「俺も頑張る!」
 これまでもいっぱい泊まってってくれてたけど、温泉に行くって決まってから、一緒にいる時間がさらに増えて、毎日が合宿みたいで楽しいんだよな!術の修行も楽しいけど、こういうのも大好きだ!それになんでかわかんないけど、父ちゃんがカカシに優しくなった気がする。もしかして認めてくれたのかな?いつかはさ、まだ今は無理だけど、ずっと一緒にいたいから、できれば父ちゃんにも認めてもらいたいんだ。
「と、父ちゃんもがんばるからな…!いくら不憫でもむざとくれてやるものかやるものか…!」
「ウミノサン」
「お前も!しゃんとせんか!息子に世話を焼かれる父親など言語道断だ!」
「ウミノサン」
「…聞いているのか貴様…!」
 えーっと。いつも通り元気みたいだし、もう時間だから行かないと。
「ご馳走様でした!」
食べ終わった食器を重ねてカカシと一緒に台所へ運ぶ。洗って洗いかごに伏せて、まだ熱く語り合ってる父ちゃんとサクモさんの横を通り過ぎて、玄関に向かった。
「いってらっしゃいイルカ。気をつけてね!」
「カカシも任務気をつけてね?」
 俺ももちろん勉強がんばるけど、カカシは物凄く高いランクの任務にもついてるから心配だ。いっぱい修行して、いつかは俺がカカシを守れるようになりたい。
 こうやってずっと一緒にいたいけど、カカシにも任務があるからそうも行かない。
「行ってきまーす!」
「なにぃ!イルカー!気をつけていくんだぞー!決して油断するなよ!特にそこの…ぐえ!」
「父ちゃんもがんばってねー!」
 最近父ちゃんもサクモさんに慣れてきて元気だし、サクモさんもちょっとずつ温泉対策になれてきたから、きっと本番はもっともっと楽しいに違いない。
 早く温泉に行く日がくればいい。そしたら…カカシといっぱいいっぱい遊ぶんだ!トランプも花札も詰めたし、旅行の準備は完璧だ。
もうすぐ温泉。天気がよくなるようにてるてる坊主とかも作っておこうかな?
 晴れ渡る青空を見上げて、そんなことを思った。

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適当。
白い牙不調につき、武将の貞操は守られ…?
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