晩夏(農家)


「さ、これでいいかな?」
大量に並べられた野菜。
そう、これは夏の終わりに俺とイルカ先生の二人で収穫したものたちだ。
なすとかきゅうりとか…思わず挿れ…いやその!どれもつやっつやで新鮮で美味しそうなものばかり。
さすがイルカ先生が手入れした野菜なだけあるよな!どれも育てた人に似て美味しそ…いやいや。うん。まあとにかくだ。
「壮観ですね!」
この量をこれから一気に使い切ってしまおうって言うんだからイルカ先生の言うとおりだ。
場合によっては影分身だそうかな?って思う位、野菜たちは小山のごとく積み上げられている。
ま、こんなのあっという間に食べちゃう欠食児童と…それからこれ全部放り込んでもまだ余裕がありそうな大なべがあるからなんとかなっちゃうんだろうけどね?
その美味しさも、きっとまた俺を驚かせてくれるに違いない。
「さってと!これから忙しくなりますよ!」
「はい!下ごしらえなら任せといてください!」
大分腕を上げたとは言え、まだまだ俺の技術はイルカ先生と比較にならないくらい低い。
っていうか、イルカ先生が尋常でなく料理の腕がいいんだけだと思うんだけど。俺だって任務で必要な程度には料理だってできるし。
まあとにかく、繊細な味付けはイルカ先生に全任しちゃうしかないけど、野菜を洗って切るとか、大なべをかき混ぜるくらいなら俺でも十分何とかできる。
ま、時間はかかるのは確実だけどね?適当に切り刻めばいいって訳じゃなくて、ちゃんと野菜によって切り方もいためるタイミングとかも違うし。
それも全部イルカ先生から教わった。食べるときに命を頂く感謝の気持ちを忘れるないようにして、命をちゃんとつないでいくんだとか、色々他にも。
…イルカ先生は多分そんなつもりじゃないけど、俺は勝手にその台詞に許されたみたいに思えて。
それ以来なんとなくやっていた飯を作るって言う行為の意味が、変わった気がする。
おかげで料理の腕もそこそこにはなったと思うんだけど…どうしてこうも味が違っちゃうのかなぁ?イルカ先生の飯の美味さはある意味武器ですらあると思う
勿論、それ以外にもたくさん武器があるけどね?主に俺にとっては。
「ふふ…!期待してますね!」

笑顔がまぶしい。コレだって十分に俺の心に突き刺さる武器だ。いつだって何度だってこうして俺はこの人に落とされる。
夜の別人のように艶かしい顔も好きだけど、こういう思わず息を飲みこんでしまうイタズラっぽい笑顔も大好きだ。
「心配だからちゃーんと見ててくださいね?」
イルカ先生はがんばってる俺を置いてどこかに行ったりなんてこと、考えもしない人だっていうのは分かってる。
だから早めにこう言って置くのはどっちかっていうと単に保険っていうか…構って欲しいだけ。
だってこうやって教えて、構ってっていうと、必ずイルカ先生は困った顔しながらでも俺の側にいてくれるんだもん。
「美味しいカレーにしましょうね?」
料理をするときの気合は相変わらず凄い。この姿を本当なら誰にも見せたくない。
だって、この人が欲しくなっちゃうでしょ?そんなことになっても俺の手で血祭りに上げられちゃうだけなのに。
被害者が増えるのはかわいそうだもんね?
これからガキんちょ共にしばらくとは言え貸し出さなきゃいけないってのもちょっと所じゃなく苛立つけど、イルカ先生発案だし、こういうときの生き生きしたイルカ先生もかわいいからちょっとだけ我慢だ。
終わったら…達成感に甘い空気を混ぜて、何よりも美味しいイルカ先生を頂けばいい。
「楽しいカレーパーティにしましょうね!」
さりげなく手を握ってじっとその瞳を見つめると、揺れる濡れた瞳に俺を映したイルカ先生が頬を赤く染めた。
あーもう!我慢我慢!
とりあえずはカレーの仕込が最優先だ。煮込み料理はしっかりじっくり時間をかけて!がモットーのイルカ先生の教えてくれたポイントは全部ちゃんと覚えてるもんね!
「…ええ!」
照れくさそうに笑ってくれたこの人のために、いや、この人と過ごすいちゃぱらな時間のために…俺は気合を入れてマイ包丁を振るうことにしたのだった。


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リクエストをいただけたので農家にしてみたり。
実はいじめっ子もいただけているのでがんばってみようと思うのですが何ねたがいいかなぁ?オタオメ?
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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