これの続き。 やんでるのでちゅういー! 気がつくと見知らぬ家の中にいた。 どうしてこんな所にいるんだろう。 考えるべくもなく分かっているべきことすら、今の俺にははっきりと思い出すことができなかった。 なぜか酷く眠くて、気がつくと意識が途切れていることが多い。 日々をぼんやりとして過ごし、いつの間にか日が暮れて朝が来て、時間が流れているのは分かるのに、それがどうもピンとこない。 目覚めている時の記憶もあいまいで、柔らかかったとか暖かかったとか、感覚の断片だけが記憶に残っている。 一番最近の記憶は…いつだっただろう。 泣いている子どもを慰めていたような気がする。 子どもは好きだ。 戦続きの今、弱いものから死んでいく。使い捨てにされるのは大抵経験の未熟な子どもだ。 だから教師になろうと思った。 三代目にも直訴して、規定をこなせばとの条件で、受験の許可も頂いてある。 忍としての才を惜しんでくれた親代わりの老翁には申し訳ないことをしているかもしれない。 ああ、眠い。 あと少し、あと少しだけ任務をこなせば、夢が叶う筈だったのに。 どうして俺はここにいるんだろう。 「イルカ」 優しい腕が俺に触れてくる。 この間もこうして…いや、この所ずっとこの手が側にある気がする。 暖かい指先がそっと触れてきて、それから…それから訳が分からなくなるんだ。いつも。 熱に飲まれた記憶の中で、俺はただひたすら喘ぎ、縋りつくことしかしていない。 ひっきりなしにあがる声すらどこか遠くて、熱っぽく吹き込まれる言葉も碌に理解できたことがない。 ただ名を呼ばれていることと、気が狂いそうなほど気持ちイイという記憶だけは残っている。 気がつけばジンジンと疼く下肢をもてあましながら、身じろぎすることもできずに布団に潜り込んでいる。 多分コレもすぐ忘れてしまうんだろうな。 最近の自分はおかしい。 なぜかどんどんものを忘れていっている気がする。そしてそれがわかるのに現状に抗おうと思うことすらできない。 ふわふわと霧の中でもあるいているかのようだ。 先が見えない。 時々触れる酷く生々しい感触のモノだけが、どうやら自分がまだ生きているらしいことを教えてくれる。 ああ、子どもが帰ってきた。最近留守がちだ。多分。 …ただ俺が疲れて眠ってばかりいるせいかもしれないけど。 「ごめん。ごめんね」 何を謝っているんだろう。悪いことをしたら謝ればいいと教えた気もするが、それはいつだったか。 「おいで。…泣かないでいいんですよ。ほら」 無理をするなと囁いて、縋りつく幼子を抱きしめてやった。 こんなに悲しそうな顔で泣くほど辛いなにかがあったのか。かわいそうに。 相変わらずきれいだなぁ。この子は。 …いつだったか、そのときも酷くつらそうな顔をしていた。 あの時は、どうやって慰めただろう。 またすぐ何もかも忘れてしまうだろうが、この子のことをもう少しだけ覚えていられたらいいのに。 「イルカ」 声が、耳に心地良い。 そういえば、これは俺の名か。 「あなたは、泣き虫ですねぇ」 そうだ。きっとまた熱の記憶が始まる。 そうして目覚めたときにまた大事なものがぽろぽろと抜け落ちているにちがいない。 この子のことを、あと少しだけ覚えていたい。 …せめて泣きやませることができるくらいは。 「イルカ。どこにもいかないで」 縋る声の音まで美しい。 この子どもは、まるで良くできた人形のようだ。 でもこの体は暖かいから、きっと違うんだろうな。 人形じゃなくて良かった。人形は簡単に壊れてしまうから。 「名前、教えて」 「え?」 「忘れてしまうかもしれない。でも、名前を」 霞がかかった中で生きている。この所ずっと。 自分の名さえ曖昧だが、もしもこのこの名前を教えてもらえたら…もう少しだけ覚えていられるかもしれないと思ったんだ。 果たして子どもは頷いた。そして。 「カカシ。はたけカカシっていうの。覚えておいてね?」 そうか。この子どもの名前は…カカシ。 何度か口の中で呟いて満足した。 明日目覚めるまで覚えていられるように。 「カカシ。おいで」 名前は、大切だ。失った大切な人たちも、いつだって俺の名を呼んでくれた。 この子の名前を呼んでくれる人を、失ってしまったんだろうか。 ぽろぽろと零れ落ちる涙が美しくて、そういえばこの間も似たような物をみたような…? ああ、思い出せない。…ただ分かるのは、この子には、こういう綺麗なものが良く似合うということだけだ。 「イルカ」 縋る手の力が強くなった。それだけでは足りないとばかりに、おざなりに着込んだ浴衣の隙間から手が入り込む。 どうしてこの子はこんなにも必死なんだろう。 …俺はどこにもいけないというのに。 「カカシ」 安心させたくて微笑んだ俺に、なぜかカカシは酷く苦しそうな顔をして、それから…。 あとはもう熱に飲まれて何も分からない。 ********************************************************************************* 適当。 つづいてしまった_Σ(:|3 」∠ )_ 次はぱっちりさんかわいそうの方かけたらいいな。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |