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「ねぇ…何でオレの瞳、見ないの?」




何でちょっと指先が触れたくらいでそんなビックリすんの?
何でオレのカオ、ちゃんと見ないの?
オレのこと、『何にもわかってない』って思ってる?
オレのこと、『傷つけちゃイケナイ』って思ってる?
でもそんな言い訳、今更ダメだよ
だってもうオレは決めちゃったんだ




『翔び越えてやる』って─────


 

 

 

 

 

 

 

 

       翔んでみせろ by Riko

 

 

 

 

 

「テメェ…自分がナニ言ってんのか、わかってんのか?」
三蔵の唇から、不自然なまでに押し殺された呟きが漏れる。だが、いつもなら明確な意思を持って真っ直ぐに向けられるはずの紫の瞳は、微妙にかわされて悟空のそれと噛み合うことがない。そんな三蔵の反応に軽い溜め息を一つ吐いてから、悟空は再び口を開いた。
「自分の言ってるコトくらい、わかってるよ。わかってないのは、三蔵の方だろ…?」
ふてぶてしさすら感じるほど落ち着き払った悟空の返答に、三蔵の柳眉が険しく上がった。
「俺が言ってんのは、その後どうなっちまうかわかってんのかってことだっ」
声を荒げる三蔵の眼差しが、ようやく悟空に向けられる。二つの金の瞳はもう目を逸らすことを許さない強さで、目の前の相手をみつめ返した。
「ンなモンわかりっこねーじゃん。向こう岸の景色がどんな風になってるかなんて、そこに辿り着かなきゃ見えっこない…だから、俺はもう決めちゃったんだ。三蔵と二人で、『翔び超えちまえ』って───。」
何か見えない力にでも弾かれたように、三蔵の目が見開かれる。深い紫の瞳には、躊躇いの片鱗も無い笑顔の悟空が映っていた。
ゆっくりとした足取りで、三蔵が悟空との距離を縮める。すぐ目の前まで来た三蔵がおもむろに両腕を伸ばし、小柄な身体を軽々と抱き上げた。
「…後悔すんなよ。」
その唇からぽつりと零れたのは、たった一言。真っ直ぐに見下ろしてくる眼差しは、もう揺らいではいなかった。悟空はもう一度三蔵に笑いかけ、迷うことなくその肩に腕を廻した。
「しないよ。だってさぁ、こんなに好きで好きで、迷うヒマなんかないくらい好きで…もし今離れたりしたら、もったいなくて窒息死しちゃうよ。」
見上げてくる金の瞳は、クルクルとひどく楽しげで。三蔵は何とも複雑な苦笑いと共に、その両瞼に口づけを落とした。


戯れのようなキスをひっきりなしに繰り返しながら、ベッドに倒れ込む。互いの熱を確かめるのに邪魔だと言わんばかりに、指先がもどかしげに衣服を剥ぎ取っていく。口の周りがベタつくのも構わず、付け根が痺れるほど滅茶苦茶に舌を絡ませ合う。息苦しさを感じ始めてようやく離した唇が、ツゥー…ッと名残の糸を引いた。
「…要領よく加減なんて、してやれねぇぞ…」
自らも呼吸を整えながらの三蔵の言葉に、肩で息をしていた悟空が、反射的にカッと目を見開いた。
「だ…れがンなコト頼んだんだよっ…フザケんな…っ、それより…」
華奢な様子に反して力のある腕が、がむしゃらに三蔵の首を引き寄せた。

『もっともっと、深いトコロまでキテよ』

薄らと色付く婀娜めいた唇から、ほとんど吐息だけの囁きが零れる。烈しい接吻に淡く滲んだ金の瞳が、挑発的に閃いた。
「…上等じゃねぇか。」
僅かに口の端を上げて笑みを返す三蔵の瞳に、ゆらりと蒼い炎が立ち上った。


じんわりと心身を蝕んでいく、悪い毒のような甘い熱に、二人で溺れる。先刻の宣言とは裏腹に、三蔵の態度には荒々しさは微塵も感じられない。寧ろその声も、唇も、指先も、ひどく繊細で優しかった。しかし物馴れていない悟空には、却ってそれがつらい。ゆるゆるとたゆたうように、それでいて確実に侵蝕されていく感覚がじれったく、目眩を起こしそうなほど息苦しくて堪らない。触れるか触れないかのギリギリの際どさで、未だ成長しきらない腰骨のラインを三蔵の指先が辿っていく。敏感な部分をじわじわと嬲られる歯痒さに、細い喉元から、「ヒュッ」と息を呑む音が漏れた。
「さん…ぞ…っ、も…や…だ…ぁ…」
内側からの熱でほんのり染まった唇から、艶めかしい悲鳴が零れる。悦楽の波に翻弄され、むずがる子供のように首を振るその目許が、透明な雫に濡れた。
いっそのこと高ぶる激情のまま、もっと乱暴にされたなら。それならきっと、これほど苦しくはないだろうに。
「何がイヤなんだ…?」
息を吹き込むように静かな声で囁きを落としながら、熱を帯びた唇が小さな耳の形をなぞっていく。その間も、緩やかに肌を滑る手は止まらない。
「加減なんかしてやらねぇって言っただろうが…『痛み』で誤魔化してなんかやんねーよ。」
誰が痛みで意識を逸らさせてなどやるものか。身体中の至る処、神経の奥底までグズグズに蕩けそうな、甘い酔いで満たしてやる。
ひとかけらの逃げ場も、与えてなどやらない。

「ゴチャゴチャ言ってねぇで、テメェは俺だけ感じてろ。」


自らの猛りを受け入れさせる時も、三蔵は徹底して痛みを与えぬよう、根気よくじっくりと悟空の最奥を解いていった。そのあまりの慎重さに悟空の方が根を上げてしまい、細い爪先が焦れたようにシーツの波を掻いた。
実際に三蔵が腰を押し進めてきても痛みはほとんど無く、只々焼け付きそうなほどの彼の熱に圧倒されるばかりだった。己の内側がざわざわと蠢く得体の知れない感覚に、悟空の腰が無意識に引けていく。だが勿論、三蔵がそれを許すはずもない。
「ん…っ…ぅ…」
少しでも気を緩めるとあられもない声を上げてしまいそうで、口許に当てた人差し指にきつく歯を立てる。それに気付いた三蔵が、半ば強引にその手を外させた。
「ナニ声殺してんだよ…きっちり聞かせろ。」
「だっ…て…」
容赦の無い三蔵の物言いに、悟空の薄い肩がビクリと震えた。連動するように三蔵を受け入れている処が反応したことを自覚した悟空が、気恥ずかしさから顔を背けようとする。その顎をグッと掴んだ三蔵が、金の瞳を捉えた。
「だってじゃねぇ、テメェが決めたことだろうが…だったらその声の一滴まで全部、俺のモンだ。出し惜しみなんて許さねぇ。」
大きく目を見開いた悟空が何か言葉を継ごうとする前に、三蔵はその唇を塞いでしまう。互いの口腔を探り合う濡れた音の合間から零れるくぐもった声を、悟空はもう抑えようとはしなかった。
「…ん…あ…ぁっ…さん…ぞ…っっ…!!」
三蔵の熱の放出を身の内で感じたのとほぼ同時に、悟空もまた自らの熱を解放した───。


「…しかし随分とまぁ、挑発しまくってくれたなぁ…」
嵐の後の気怠い空気の中、深く紫煙を吐き出しながら、三蔵の指がクシャリと悟空の前髪を撫でる。情交の名残に淡く潤んだ瞳が、ふうわりと微笑った。
「ヘヘ…だってさぁ?全部見せてほしかった、死んでも手加減なんかされたくなかった、俺が奪い取れるトコ、全部かっ攫いたかった…だから今…ホントに嬉しい…」
煙草を揉み消した三蔵が、覆い被さるようにして悟空の顔を覗き込む。
「…で、どうだ?『向こう岸の景色』は見えたかよ?」
茶化すような口ぶりとは正反対に、見下ろしてくる瞳の色は何処までも柔らかい。悟空ははにかむような笑みを返し、月明かりに煌く金の髪にそっとキスを送った。

「見えたよ…眩しい空に、とびっきりの『太陽』が見えた───…。」


                               …Fine.

 

 

 

 

 


《戯れ言》
…如何でしたでしょうか?従来の私のテイストとは、かなり違うという自覚はあるのですが。どうもウチって「何だかよくわかっていない子をロクな説明もしないまま頂いちゃう」みたいなパターンが圧倒的に多いようなので(苦笑)たまには「どっちも確信犯」的な二人をやってみよう!という気にフトなったのでした。このテの話は結構好き嫌いがはっきり分かれそうですね(^^;)
今回のタイトル及び全体のイメージは私が学生時代に愛したバービーボーイズの、幻の一曲から。打ち込み中、久々にCDかけっぱなしにしてました。
いや~、懐かしかった(笑)。

 

 

 

 

 




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