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『sweet kiss』 byRiko

 

「あ~~~っっ!!」

『ベチャッ』という何とも情けない音と共に、床に落ちてしまったチョコレートケーキ。

「う~~~っっ(T-T)」

既に残骸と化してしまったソレを見下ろす金の瞳は、今にも零れ落ちそうな涙目。

「…ンな恨みがましい目して見下ろしたって、しょーがねぇだろ。」

半ば呆れ気味の声に、悟空がそちらを振り返る。

「だって…」

「だってじゃねーよ、そもそもお前の不注意だろうが。」

きっぱり言い切られてしまった一言に、子供らしい丸い頬が更に『ぷくり』と膨らむ。

「…そんなこと言ったって、つい手が滑っちゃって…」

それでも何とか落とすまいとあがいたらしく、その右手はチョコレートまみれ。

それを認めた三蔵の瞳が、ふと何かを思い付いたような色合いを帯びた。

 

己の指など余裕で廻りきってしまう華奢な作りの手首を掴み、ヒョイと引き寄せる。

「へ…?」

何の前触れもなしに、指先に三蔵の唇が触れる。薄く開かれた唇の間から赤い舌が

覗くと、チョコレートだらけの小さな指先をペロリと舐め上げた。

「なっっ…ちょ、さん、ぞっ…」

咄嗟に悟空が腕を引こうとするが、三蔵はそれを許さない。涼しい表情のまま、焦り

まくる悟空の声を聞き流す。指の形を確かめるように、生温かい舌がゆっくりと丁寧に

チョコレートを舐めとっていく。

「や…ぁっ…」

掌を舌先でツゥ…と辿られる感触に、まだあどけない唇から甘さの入り混じった声が

上がる。

次の刹那、自分の口から漏れた声が信じられないといった表情の悟空は、ギュッと目を

瞑って顔を背けた。長い後ろ髪の隙間から覗く頼りない項はほのかに紅く、三蔵に捉え

られたままの指先は小刻みに震えている。

自分で自分の反応に戸惑っている様子の悟空に、まぁ無理もないと、三蔵は心の内で

微かな苦笑いを浮かべる。

三蔵がこれほど明確に自らの衝動を行動に表したのは、これが初めてのことだったから。

口許だけで薄く笑った後、手の甲にきつく歯を立てる。不意打ちの感覚に、悟空が反射

的にその目を開いた。

「…何泣きそうな面してんだよ」

「だっ…て、さんぞ、がっ…」

何もかもが初めてのことに困惑しきっている悟空は、どう応えていいのかわからず、たど

たどしくやっとそれだけを呟く。

「バーカ、カン違いすんな」

そんな素っ気無い言葉とは裏腹に、三蔵は歯を立てた痕にそっと唇を押しあてる。

 

「俺はお前から、何一つ剥ぎ取ったりしねぇよ。」

 

静かなその声に、悟空がおずおずと視線を合わせる。いつもより少し柔らかな紫の瞳は、

まっすぐに自分を見据えていた。

悟空の全身から、フゥー…と緊張が解けていく。

 

今、周りにある全てを与えてくれたのは目の前のこの人で。

大好きなその瞳が「何も心配しなくていい」と告げていて。

ならば自分は、何も恐れたり戸惑ったりすることなく、

ただ受け止めればいい。

この人からもたらされる全てを、あるがままに────。

 

金の瞳に淡い潤みを残しながらも、はにかみがちに悟空が微笑う。

掴まれたままの手首を更に引き寄せられ、三蔵の秀麗な顔が近付いてくる。

 

……そして二人は、馬鹿馬鹿しいくらいに甘い、初めてのキスを交わした────。

                                       

 

 

≪戯れ言≫

「戯れ言P」に載せたショートショートをこちらに移動。どってことないネタ

なのですが、私自身は結構気に入っています(^^)。コレをUPした時何が

驚いたって、その時ちょうどグアムにバカンスに行っていたみかりんが、わざ

わざあちらのネットカフェからツッコミを入れてくれたことに尽きるでしょう

やっぱ(笑)。その節はありがとう、みかりん♪流石にビックリしたよ(^^;)

しかしこの背景をみつけてくるのに、思いの外時間かかりました(汗)お菓子

素材って、結構ありそうなのに少ないんですねぇ~意外や意外(苦笑)。

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