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『コイビトまでの距離』by Riko







       二人でドライブに行って 二人で食事をして
       相手の家に遊びに行って 自分の家にも呼んで
       何度も抱きしめ合って  沢山キスをして
       この状況はいわゆる世間一般でいうところの
       『付き合ってる』ってコトなんだと思う…でも
       俺達は案外、お互いのことを知らない────


ある日のこと。いつものとおり天竺ビルへバイトに行った悟空は、まだ会社に残っていた三蔵と帰りの待ち合わせについて軽く立ち話をしていた。一時二人の間がぎくしゃくした際に悟空が担当先を変更したこともあったのだが、一件落着した後は、やはりその方が何かと便利だということで、再び悟空は天竺ビルの担当に戻っていた。待ち合わせの相談が終わり、二人が軽く手を振り合って逆の方向へと歩き出したところへ、一人の女性が悟空に近寄ってきた。
「ねぇ君、玄奘さんと知り合いなの?」
どうやらその女性は、三蔵と同じ商社の社員らしい。軽い驚きを含んだ表情の女性に、悟空はコクリと頷いてみせた。
「うん、ちょっと…玄奘…さんて、会社では有名な人なの?」
少々ぎこちない悟空の問いかけに大きく頷いた女性が、後ろ姿の三蔵に視線を送る。それにつられるように、悟空もまた少し離れた位置にいる三蔵の方を振り返った。
「勿論!ここに勤めていて玄奘さんを知らない人なんていないわよ。何たってアメリカの大学をスキップで卒業して二十歳で入社したっていう、エリート中のエリートですもん…加えてあのルックスでしょ?廊下で擦れ違って振り返らない女子社員なんていないくらいよ…でも、女の子にはてんで冷たいの。」
彼女の口から語られた三蔵の経歴に、悟空は驚きを禁じえない。名の知れた外資系商社に勤めていることや普段の言動などから、頭の切れる人なのだろうとは思っていた。しかし悟空が漠然と考えていた以上に、三蔵は『特別な人』らしい。だが三蔵はそんなことをおくびにも出さないし、そもそも彼はあまり自分のことを話さない。悟空が三蔵について知っていることといえば、このビルに入っている商社に勤めていること、高級住宅街にあるマンションの最上階に住んでいること、中学生の時に養父を亡くして以来ずっと一人暮らしなこと、そして───二人の出会いの場所であるバーに毎回違う女性、それも華やかな美女ばかりと連れ立って来ていたくらいモテるということくらいである。
「あ…ほら、あの人…」
隣りの女性の口から、小さな声が上がる。視線を動かすと、三蔵の傍へと歩み寄っていく一人の女性が見えた。
(…あの人、確か…)
その女性には、悟空も見覚えがあった。昨年の三蔵の誕生日、二人が言葉を交わすきっかけとなったネクタイの贈り主が、あの女性だったと記憶している。
「重役秘書の芙蓉さん。『秘書室一の才媛』て言われていて、男子社員の人気
ナンバーワンなんだけど、玄奘さんと付き合ってるらしいって噂があるのよ…それが本当なら、もう決定的よね。誰が見たって文句のつけようがないもの…ねぇ、君は玄奘さんから付き合ってる人のこととか聞いたことない?」
「え…う、ううん…玄奘…さんて、あんま自分のこと話さないし…」
悟空のたどたどしい返答に、隣りの女性は「そうよね、クールな人だものね」などと相槌を打っている。しかし悟空の耳にはほとんど届いていなかった。
数メートル先で書類らしき物をめくりながらやり取りしている二人は、本当に文句のつけようのないくらい、しっくりと違和感がなくて。
(…「誰が見てもお似合い」って、きっとああいう感じなんだろうな…)
こうして客観的な視点から見ると、三蔵は歴然と「大人」なのだとわかる。
二人でいる時にそれを意識したことがないのは、おそらく彼が自分の位置まで目線を下げてくれているからなのだろう。今まで感じたことのなかった三蔵との『距離感』に、不意に正面から突き飛ばされたような、そんな気がした。


「…空、オイ聞こえてねーのか、テメェはっ」
微かな苛立ちを含んだ三蔵の声に、悟空の思考が現実に引き戻される。既にバイトは終了し、今いるのは三蔵の車の中である。どうやら無意識の内に先刻のことを思い出していたらしい。
「あ…ゴメン…何?」
「何じゃねーよ、着いたって言ってんだ。」
三蔵の言葉に視線を外に向ければ、いつの間にか車は駐車場に止まっている。どうやら目的のレストランに到着したらしい。
「悪ィ、ちょっとボーッとして…て…」
軽い苦笑いと共に口にした言葉が終わらぬうちにグイッと肩を引き寄せられ、ほとんど強引に唇を塞がれる。戸惑う悟空が咄嗟に肩を押し戻そうとしても、三蔵はそれを許さなかった。
「ん…ぅ…さっ…」
息を継ぐ間さえ奪われた悟空が、苦しさを訴えるように三蔵のジャケットを強く引く。それが何度か繰り返された後、三蔵はようやく悟空を解放した。
「…何考えてたのか知らねぇが、二人でいるのを忘れるほど魂飛ばしてんじゃねーよ、バカ。」
形の良い唇からぼそりと零れた言葉は、一言で表せば「子供の駄々」とさして変わるところはない。けれどそんな子供じみた身勝手さを、馬鹿馬鹿しいほど嬉しいと思う自分がいて。
悟空はもう一度「ゴメン」と呟き、コツンと三蔵の肩に額を押し当てる。三蔵はそのこげ茶色の髪に、そっと優しいキスを落とした。

「…友達?」
食後の一服に火を点けた三蔵が、怪訝そうに眉を顰める。悟空はシャーベットをスプーンで掬いながら頷いた。
「うん…俺、よっぽどはっきり顔に出てるらしくて…好きな人ができたんじゃないかって。付き合ってんなら一度会わせろって…あの、でも三蔵がイヤならはっきりそう言ってくれていいし。」
「お前はどうしたいんだ?」
遠慮がちな物言いの悟空に対し、三蔵が率直に問い返す。悟空はシャーベットを一匙口にしてから、俯きがちだった顔を上げた。
「俺は…那托はガキの頃からの幼馴染みだし、今でも一番のダチだから会ってほしいけど…紹介するとか、ンな大袈裟なことじゃなくて、ただちょっと一緒にコーヒー飲むぐらいの感じでいいし…」
そう話しながらも、悟空の視線はまたもや下がり気味になる。「友達に会わせ
たい」なんて、大人の三蔵からすればつまらないことかもしれない。そんな風に思うと、悟空の言葉もつい尻すぼみになってしまったのだが。
「別に構わねぇぞ。」
三蔵の返事は存外あっさりしたものだった。パッと顔を上げた悟空は、少し驚いたように目を見開いている。
「ホントに…?」
「こんなこと嘘ついたって意味ねぇだろ…いつでもそっちの都合のいい時で構わない。」
三蔵は至って穏やかな声で言葉を紡ぐ。暫しぽかん…とした表情で三蔵をみつめていた悟空は、やがてはにかみがちに笑って「ありがとう」と呟いた。

その週の土曜日の午後。コンビニのバイトを休んだ悟空は、あるレストランで那托と共に三蔵を待っていた。そこはデザートバイキングが好評の店で、甘い物が好きな悟空の為に那托が指定をしたのだった。
二人が席に着いてから程なくして、三蔵も店に到着した。店内を見回す三蔵に悟空が手を振って合図をする。こちらに歩み寄ってきた三蔵が二人の向かいに腰を下ろしたところで、悟空がその口を開いた。
「えっと…こっちが俺の友達の、李那托。那托、この人は玄奘三蔵さん。俺のバイト先の天竺ビルに入ってる商社で働いてるんだ。」
悟空の紹介で、二人は互いへとその視線を移す。那托と呼ばれた少年はオールバック気味に髪を後ろに流しており、すっきりとした広い額が理知的な印象を与えていた。那托は少しの間三蔵をじぃ…っと凝視してから、静かに微笑ってみせた。
「俺が思ってたより悟空は面食いだったんだな…今まで好みのタイプなんて話したことなかったから、知らなかった。」
よく通る落ち着いた声は爽やかで心地の良い響きを伴っており、からかいやあてつけのような色合いは無い。それでも悟空は気恥ずかしくて仕方がないらしく、隣りに座る那托の肩をポカポカと叩いた。
「イテテテ…照れ臭いのはわかったからヤメろって…それよりほら、好きな物取ってこいよ。」
笑い混じりに悟空の手を止めさせた那托が、彩とりどりのデザートが並べられたテーブルを指差した。
「ん…那托は?食わないの?」
「俺はお前ほど甘い物好きじゃないから、コーヒーだけでいいよ。」
小首を傾げて問い掛ける悟空に、那托は軽く首を振って答える。「じゃあ…」
と言って悟空が席を立ち、テーブルには三蔵と那托の二人が残った。三蔵は取り出したマルボロに火を点け、ゆっくりと紫煙を吐き出してから、初めてその口を開いた。
「…何か言いてぇことあるんじゃねぇのか。何でいきなりヤローなんだとか、アイツはいいように騙されてんじゃねぇのか、とか。」
いきなり直球勝負の三蔵の態度に、那托が少々面食らったように涼しげな瞳を開く。しかしその表情はすぐに緩やかな笑顔に変わり、静かな眼差しが楽しげにデザートを選んでいる悟空へと向けられた。
「アイツさ…バカみたいにお人よしだし、要領は悪いしぶきっちょだし、頭の回転もあんま早くないけど…でもさ、」
そこで一旦言葉を切った那托は、視線を悟空から向かいの三蔵へと戻した。
「本物とニセモノの区別はつくよ。だから、アイツが『本物だ』って決めたあんたを、俺が疑う必要なんてこれっぽっちもない。」
真っ直ぐに三蔵を見据えて笑ってみせた那托には「含み」や「裏」といった下種な雰囲気は微塵もなく、それが紛うことなき彼の本心なのだと感じられる。考えてみれば先入観や偏見を持つような了見の狭い相手であれば、そもそも悟空は自分に会わせたいなどと言う筈もない。三蔵は今更ながらに悟空が『一番のダチ』と言った意味を理解した。
「…大した信頼感だな。」
決して皮肉からではない僅かな笑みを口許に上らせながらの三蔵の一言に、那托は軽く肩をすくめてみせた。
「まぁね、伊達に十五年も付き合ってるわけじゃないから。」
冗談めかした口調ながらも、那托の言葉にはこの年代の少年にありがちな薄っぺらな感じがない。目の前の少年は自分が想像していたよりもずっと聡明で、早くに母を亡くした悟空が一人で生活を支えていけたのも、おそらくこの少年の影響が大きいのだろうと、三蔵はそんな風に推察していた。

やがて取り皿の隙間が見えないほど大量のデザートを手にした悟空が、満面の笑みで戻ってきた。
「お前さぁ…いくらバイキングだからって、取り過ぎだろソレ。この後二人でメシ行ったりするんだろ?」
皿一面をぎっしりと埋めている生クリームやらチョコレートやらフルーツやらをその目に映しながら、那托が少々げんなりした様子で溜め息をつく。早速一つ目のケーキに手をつけ始めた悟空が、「ん?」といった表情で那托の方を振
り返った。
「だってデザートとメシは別モノだろ?あ、そうだ…コレ食いなよ那托。木苺のムース、好きだろ?」
那托の呆れ顔を全く気にすることなく、悟空はニコニコ笑ったまま木苺のムースを取り分ける。那托はもう一度小さく息をついてから、「サンキュ」と呟い
てそれを受け取った。そんな二人のやり取りを、三蔵はひどく新鮮な気持ちで眺めていた。何もかもを一人でこなせる能力の持ち主である三蔵は、今までの人生で『特別な友』という存在を持ったことがない。だからこんなたわいのないやり取りすら、誰かとした経験もないのである。
「で、こっちは三蔵のな…ハイ。」
ぼんやりとそんなことを考えているうちに、三蔵の目の前にも悟空が取り分けたケーキがきっちりと置かれていた。
「三蔵はあんま甘い物食べないってわかってるけどさ…でもやっぱ、美味い物は一緒に食べた方が楽しいじゃん?たぶんコレ、そんな甘くないから。」
そう言う悟空が三蔵の為に選んできたのは、抹茶風味のシフォンケーキ。
ほんの少しホイップクリームが添えられているだけの、至ってシンプルな作りのケーキには、悟空なりの三蔵への気遣いが現れている。
「美味い物は一緒に食べた方が楽しい」───たったそれだけの、けれど精一杯の気持ち。彼はこうして何でもないことのように、自分に新しい世界への扉を開かせる。
「…そうだな。」
ぽつりと呟いた三蔵がフォークに手を伸ばす。悟空はひどく嬉しげに、パッと弾けるような笑顔を見せた。
それから暫くは、ティータイムを洒落こみながらたわいのない茶飲み話に花が咲いた。主に悟空と那托は自分達のこれまでの付き合いについて語り、三蔵は自らの仕事について簡単に語って聞かせた。三蔵が最初に受けた印象のとおり那托はかなりの秀才らしく、既に某私大の法学部に推薦入学が決まっているとのことだった。そういえば、と三蔵は思う。高校三年生だということは知っているが、考えてみれば悟空から進路等の話については聞かされていない。まだ出会って2ヶ月を少し越えた程度なのだから、そんなことを話す機会がなかったと言えばそうなのだが。
「さてと…じゃあそろそろ次に行くか。」
悟空が取ってきたデザートを全てたいらげたのを見計らって、那托が声をかける。悟空はきょとん、とした表情で那托を見返した。
「次って…何が?」
「決まってんだろ…お前、俺にも話してなかったってことは、他の誰にも三蔵さんを紹介してないってことだろ?俺一人で抜け駆けしたなんて知れたら、自称・兄貴分の二人に後で散々言われちゃうよ。」
「あ…そっか。ヤベェ、すっかり抜け落ちてた。」
何を間の抜けたことを言っているんだと言わんばかりの那托の反応に、悟空の顔には心底「マズイ」と思っているらしい表情が浮かぶ。どうやら次の行き先は、二人が初めて出会ったあのバーに決まりのようだった。


店へと続く狭い階段を下り、扉を開ける。いつものようにカウンターの中で開店準備をしていた八戒が、その顔を上げた。
「いらっしゃい那托。貴方が店の方に来るなんて珍しいですね…今日はお一人ですか?」
店内に入ってきた那托の姿を認めた八戒が、穏やかな笑みを向ける。那托は軽い苦笑いを返し、親指で背後を指差した。
「ううん、俺はオマケ。メインはこっちの二人。」
「二人…?おや悟空…と、貴方は確か…」
那托の言葉に訝しげに細められた翡翠色の瞳が、続いて入ってきた二人を映すのと同時に大きく開く。そんな八戒の表情の変化に、悟空は面映そうに微笑ってみせた。
「久しぶり、八戒…えっと、悟浄は?今日は来てない?」
「いいえ、奥にいますよ。今呼んできますから、待ってて下さい。」
ほんのり紅く染まった目許。何処かはにかみがちな声。平素とはあまりに異なる悟空の様子に、傍らに立つ端正な面差しの青年が彼にとってどのような存在なのかを、八戒は瞬時にして悟った。
カウンターから消えて程なくして、八戒が悟浄を連れて戻ってきた。この僅かな間に八戒から説明をされたのであろう悟浄は、『興味津々』といった表情で
三人の前に立った。
「久しぶりだなぁ、二人とも…と、そちらの男前さんも。」
「うん久しぶり、悟浄…えっと…二人とも顔は知ってると思うんだけど…この人は、玄奘三蔵さん。前に店に来た時、俺が忘れ物を届けて、それで…」
「あ~わかったわかった。そんなカオ赤くしてたどたどしく説明しなくても、もう充分納得したから。しかし…いつまでもガキだと思ってたおチビちゃんにも、ついに春が来たとはねぇ~…」
茶目っ気たっぷりにニッと笑いながら投げて寄越された悟浄の視線に、悟空の顔が益々真っ赤に染め上がる。助け舟を出すように、八戒が「まぁまぁ」と声をかけた。
「あまり茶化しちゃ駄目ですよ、悟浄。悟空は貴方と違って純情なんですから…三蔵さん、軽く一杯どうです?次はオゴリますって言っといたでしょう?」
八戒にそう促され、三蔵はカウンター席に腰を下ろす。悟浄は新しく買ったというサックスを披露する為、二人を演奏スペースへと誘った。
「…ところで、あんた達と悟空はどういう知り合いなんだ?同じ学校の出身とかいう繋がりにしては、歳が離れすぎている気がするが…」
注がれたバーボンに口をつけながら、三蔵が八戒に尋ねる。そもそも初めから疑問だったのだ。何故明らかに子供が足を踏み入れるような空間ではないこの店に悟空が出入りし、彼らがそれを当たり前のように許容しているのか。これまでの四人の口ぶりから察するに、彼らの付き合いは昨日今日といった浅いものではない。三蔵の問いかけに、八戒はグラスを拭いていた手を止めて穏やかに微笑った。
「悟空との付き合いは…あの子がまだ高校生になったばかりの頃からですから丁度三年くらいってとこですかね。きっかけは…悟空がこの近くのラーメン屋でバイトをしてまして、僕の姉がタチの悪い連中にからまれているところを、出前帰りの彼が助けてくれたことからなんですよ。」
「チンピラから…助けた?」
八戒の口から語られた内容に、三蔵は悟空の方へ視線を送りながら訝しげに問い返す。悟浄や那托と楽しげにはしゃいでいる彼は、十八歳という年齢が信じ難いほど小柄で細く、そんなエピソードとはとても結びつかない。
「えぇ…聞いてないですか?悟空は那托と幼い頃に空手の道場へ通ってたそうで…家庭の事情で小学生まででやめてしまったそうですが。それでも腕っぷしの強さは結構なものですよ。もし本気でやり合ったら、貴方でもはっ倒されるかもしれませんね。」
些か穏やかでない予測を、八戒はニッコリ笑って三蔵に告げる。初対面の時に感じたとおり、一見人当たりの柔らかなこの青年は、実は中々食えない人物のようである。
「よーし、んじゃまぁ『悟空の春到来記念』てコトで、みんなでメシでも食いに行きますか。」
「悟浄…貴方、気軽にそんなこと言って…店の方はどうするんですか?」
悟浄の突然の提案に、八戒は半ば呆れ気味の声を上げる。八戒の反応を物ともせず、悟浄は悟空と那托を引き連れてカウンターへと歩み寄った。
「いいじゃねぇか、一時間くらい遅れたって。硬いコト言うなよ、この店は半分兄貴の道楽みたいなモンなんだから…悟空の祝いの為なら、文句は言わねぇだろうよ。」
「な?」と同意を求めるようにして顔を覗き込んでくる悟浄に、八戒は諦めに近い溜め息と共に微かな苦笑いを返した。
「…わかりました。オーナーには僕から連絡を入れておきます。さぁ、じゃあ行くとしましょうか。」
八戒は三蔵の方を振り返り、席を立つよう促す。いつの間にやら三蔵の意思は全くお構いなしに、この顔ぶれで夕食を共にすることが決定したらしい。
「すみませんね…貴方は悟空と二人きりの方がいいでしょうけど、今夜は諦めて付き合ってやって下さい。悟浄は本当に悟空を弟みたいに可愛がってましてね…嬉しくて仕方ないんですよ。」
状況を掴めないまま椅子から立ち上がった三蔵に、八戒がそっと耳打ちする。三蔵が「別に構わない」と答えると、八戒は小さく「ありがとうございます」と呟いて笑った。
扉の表側に『開店が一時間程遅れます』と几帳面な文字で書かれた紙を、八戒が貼り付ける。狭い階段から路地裏に出た五人は、夜の街へと繰り出した。

「あら悟空じゃない。ねぇ、お客さんからケーキの差し入れあったんだけど、食べていかない?」
「ありがと。でも今日はみんなとメシ食いに行くとこだから、また今度寄らせてもらうよ…サンキュな。」
「おっ悟空じゃん、久しぶりー。なぁ今一人面子足んねぇんだけど、半チャン付き合わねぇ?」
「悪ィ、今日は連れがいるからさ…また声かけてよ。」
三蔵の少し前を那托と並んで歩く悟空に、老若男女を問わず夜の店の勝手口から様々な声がかけられる。その一つ一つに律義に答えを返している悟空の横顔を、三蔵は何とも複雑な思いで眺めていた。
「夜の路地裏で商売張ってるヤツなんてのは、みんな何かしらのワケありなんだけどさ…アイツってそーゆーコトに対する先入観とか偏見とかってのが、見事なくらい無いんだよね。相手が風俗嬢だろうが、キャバクラの客引きだろうが、全然態度変わんねぇのよ…だから、アイツ自身はまるっきし自覚なかっただろうけど、男女問わず狙ってたヤツって実は相当いたと思うぜ…?」
三蔵の表情の変化を見て取った悟浄が、チラリと視線を送りながら軽い口調で言葉を繋ぐ。三蔵は剣呑とした表情で鋭い視線を返した。
「何が言いたい」
「別に…?たださ、あんたは見たとおりの男前だし頭も切れそうだし、女なんてそれこそ掃いて捨てるくらい寄ってくると思うけど…その中からあんたのおメガネに適ったあのチビは、想像してた以上の当りクジかもしんないよ?…ってこと。」
「…ンなことは、他人に言われないでもわかってる。」
「へぇー…そう?」
ぼそりと呟かれた三蔵の一言に、悟浄は意外そうに大きな瞬きを一つしてみせた。三蔵が再び視線を戻すと、紫の瞳には那托と楽しげに語らっている悟空の姿が映った。


明るくて伸びやかで素直で、誰からも好かれるお前
当たり前のように向けられる好意に、どう返していいのかすら戸惑う俺
お前は一体俺の何処を見て、この手を取ろうと思ったんだろう……?

それから一週間が過ぎた日曜日。悟空は三蔵のマンションのリビングで雑誌をめくっていた。土日はコンビニでバイトの悟空なのだが、この日は午前中のシフトに入っている仲間の都合で交代した為、いつもより早く上がったので顔を見せに来たのである。何をするでもなく煙草をくゆらせていた三蔵が、ふと何かを思い出したようにその口を開いた。
「そういえばお前…進路の方はどうなってんだ?こんな時期までバイト続けてて平気なのか?」
三蔵の問いかけに、悟空は雑誌から目を離して顔を上げた。
「へ?あぁ、そういえば今までそんなこと話してる間がなかったよな…あの店を悟浄の兄貴がやってるってのは前に話しただろ?でさ、悟浄の兄貴って他に普通のレストランもやっててさ…調理師の資格取りながら働かないかって言ってくれてるんだ。ほら俺、ずっと母子家庭だったから炊事当番もやってたし、食うこと好きだから色々考えて料理すんのも好きなんだよね。だからそれって結構俺に合ってんじゃないかなぁーと思って。勉強は苦手だから、元々大学行く気はなかったし。三月の終わりくらいから見習いも兼ねて店の方に顔出す予定なんだ…だからギリギリまでバイトは続けようと思って。心配してくれて、ありがとうな。」
何でもないことのようにさらりと告げて笑う悟空に対し、三蔵の胸中では様々な思いがない混ぜになっていた。


一見子供のような顔をして その実誰よりしっかりと一人で立っていて
誰の手も借りないで いつでも前を向いて笑っている君は
ほんのひとかけらの甘やかす隙すら こちらに与えてはくれない


再び雑誌をめくり始めた悟空の口から「あっ…」と小さな声が漏れる。三蔵が「どうした?」と問い掛けると、悟空は軽い苦笑いを浮かべた。
「うん…観たかった単館上映の映画があったんだけど…今日までだった。早く行っとけばよかったな。」
『早く行っておけばよかった』と呟く唇からは、『一緒に行こう』という言葉
は出ない。天竺ビルに出入りしている悟空は、三蔵の日頃の忙しさを承知している。三蔵にとっての休日とは、文字どおり「休養を取る日」なのだと認識している彼の口からは、決して『連れて行ってよ』という一言が紡がれることはないのだ。
三蔵はまるで苦い物でも吐き出すような、深い溜め息をついた。
どうしてあどけなさすら残すこの恋人は、そんな些細な甘えすら表に出すことを躊躇うのだろう。もっと色々な感情を曝け出してほしいのに。一人で気持ちを呑み込んだりしてほしくはないのに。他の誰でもない、自分にだけは、もっと馬鹿馬鹿しいくらいの身勝手さを押し付けてほしいのに。
三蔵は吸いかけの煙草を灰皿で揉み消した。
「…今から行くか?」
「え…?」
三蔵の言葉に、悟空が再び顔を上げる。
「観に行きたかったんだろ?」
「あ…えっと…でもいいよ。別にビデオ出てからでもいいし。」
困ったような笑顔で首を振る悟空の反応に、三蔵の胸の内で一層の遣り切れなさが増した。
「いいよじゃねーよ、まだ今からでも間に合う回があんだろ?ほら行くぞ。」
半ば強引に話を押し切った三蔵が、ソファーから立ち上がる。呆気にとられた様子の悟空の表情が、次の刹那、花が零れるような笑みに変わった。
「…ありがと。」
三蔵はようやく納得したように一つ頷いて、その額に小さなキスを落とした。


目的の映画館に到着した時には丁度次の回が始まるといったところで、効率よくお目当ての映画を観ることが出来た。上映が終わって外へ出る頃には、そろそろ午後から夕方に差し掛かるという時間になっており、二人はどうということもない話をしながら街の中を歩いていた。
周りからの視線に、ふと悟空が気付いた。擦れ違う人のほとんどが、意識の有無に拘らず三蔵を見ているのだとわかる。考えてみれば休日のこんな時間帯に二人で街中を歩いたのは初めてのことで、こうした状況に身を置いてみると、本当に三蔵という人物は人を惹き付けずにはおかない華のある存在なのだと感じる。チラリと横に視線を向けると、大きなショーウインドウに自分と三蔵が並んで映っているのが見えた。
全く釣り合いの取れていない自分達は、誰がどう見たって「恋人同士」には映らない。「親戚のお兄さんに遊んでもらっている子供」か、せいぜい「先輩と
後輩」ぐらいがいいところだ。悟空がそんなことをグルグルと思い巡らせていた時。

「珍しいわね。休日のこんな時間に、貴方が街中を歩いているなんて。」

艶のある華やかな声が、悟空に耳に届いた。視線を前へ戻すと、自分と三蔵の目の前には、鮮やかに微笑む一人の女性が立っていた。
(この人…)
以前見かけた時よりラフな服装だったが、これだけ印象的な女性を見間違えるはずもない。悟空に話し掛けてきた女子社員が『秘書室一の才媛』と評していた、芙蓉という女性だった。一方、傍らの三蔵は内心大きな舌打ちを漏らしていた。あれこれと下世話な詮索をするような品性の無い女とは付き合わなかった自覚があるが、真っ直ぐで純粋な彼を無闇に傷付けないようにする為には、どうこの状況を上手く流せばいいのかと、そんなことを考えていた。
くっきりとした意志の強そうな瞳が悟空へと向けられ、静かに笑った。
「可愛らしいお連れの方ね…紹介して下さらないの?」
美しく彩どられた唇が、緩やかな笑みを形作る。まだ何かを迷っているような表情で、三蔵がその口を開きかけた。
「コイツは…」
「後輩です。」
突然、三蔵の声に被さるようにして、悟空の明るい声が響いた。悟空は目の前の女性を真っ直ぐにみつめ、ニッコリと笑った。
「いつも先輩にはお世話になってて…今日も奢ってもらったところだったんです。じゃあ、俺そろそろこの辺で…」
「あら、せっかくお会いしたんですもの。お茶でもご一緒しましょうよ。」
一歩足を引きかけたところを引きとめようとした彼女に、悟空は笑ったまま首を振った。
「いいえ、お邪魔になっちゃいますから…今日はどうもありがとうございました。じゃあ、さようなら。」
三蔵に向かってペコリと頭を下げた悟空は、元来た道を駆け足で去っていく。口を挟む間もなく話を完結させられてしまった三蔵は、愕然とした表情で小さくなっていく後ろ姿をみつめている。
(どうして…)


どうして彼は何もかもを背負い込んで、一人で納得してしまうのか
自分は一度だって、そんなことを望んではいないのに
いつだって彼は先回りをして、まず相手を護ってしまう


「…何を自分の方が傷付いたみたいなカオしてるの…違うでしょう?」
予想だにしなかった言葉をかけられて、三蔵がぎこちなく振り返る。芙蓉は微かに苦笑して三蔵を見上げていた。
「休日の人ゴミなんて死ぬほど嫌いな貴方と一緒に歩いているのが、只の後輩なんかのわけないじゃない…それがわからないほど私は察しの悪い女じゃないし、それをわかってて無駄な意地悪するほど、可愛げのある女でもないの。」
「お前…」
「…携帯のメモリ、消してね。私も消すわ。」
華やかな笑顔は、艶めいた容貌には不似合いなくらい爽やかで。今、瞳を合わせているこの女性は、自分が思っていたよりもずっと毅然として清々しい気性の持ち主だったことを、三蔵は最後になって知った。
「…すまない…」
ぽつりと零れた三蔵の呟きに、涼しげな瞳が一瞬見開かれる。しかしそれはすぐに、何処か淋しげな笑みに変わった。
「そう…貴方はそんな瞳をして、そんな声で話す人だったのね…でもきっとそれは、今のあの人でなければみつけられない貴方だったんでしょうね。それが私じゃなかったのはくやしいけど…仕方ないわね…じゃあ私、行くわね。さようなら。」
ヒラヒラと軽やかに手を振り、芙蓉は悟空とは逆の方向へ歩み去っていく。その細い背中を暫し見送った三蔵は、悟空の去った方向へと全力で駆け出した。

その頃の悟空はといえば、勢いよく走っていたのは最初の数十メートルくらいで、その後は足下の石畳をみつめながらトボトボと歩いていた。悟空の脳裏に先刻の風景が浮かぶ。芙蓉が二人の前にやって来た後、悟空はもう一度ショーウインドウに映った自分達の姿を見ていた。
「華やか」という表現が一番しっくりくる二人。三人で会話している光景は、端から見れば『二人のデートにくっついてきた弟』といった図だ。自分が完全な他人として見ていたら、間違いなくそう思う。
悲しいくらい釣り合いが取れていない『大人』の彼と『子供』の自分。
『社会的な立場』というものを持っている彼が、他の人に自分をどう紹介すればいいのか、その度に困ってしまうのは確実で。
(やっぱ…ムリあったのかな…こんなのって…)
悟空の思考がそんな方向へと陥り始めた時。

「悟空─────!!」

めいっぱいに自分を呼ぶ声に振り返る間もなく、背中から思いきり抱き竦められた。
「さん…ぞ…?」
背中越しの体温が、忙しなく繰り返される荒い呼吸が、彼が懸命に走ってきたであろうことを如実に表していて。名前を呼ぶ声が、情けないくらい震えた。
「一人でワケわかんねぇ気ィ回して、一人で納得してんじゃねーよ…このバカ」
耳元に落とされた言葉は、ぶっきらぼうだけれど温かくて。不意に泣き出しそうになる自分を、悟空はギリギリのところで抑え込んだ。
「バカはどっちだよ…っ、俺が『後輩』だって言ったんだから、ちゃんと話合わせろよ…っ」
敢えてそんな憎まれ口を返した悟空の肩を三蔵が掴み、強引にこちらを向かせる。零れ落ちそうな金の瞳を、紫暗の瞳が捉えた。

「───お前は俺の『恋人』だ。それ以外は、ない。」

目を逸らすことを許さない真っ直ぐな眼差しと共に向けられたのは、たった一言。静かで澱みの無い三蔵の真摯な声に、悟空の目許が泣き出しそうにクシャリと歪む。
「でも…三蔵は、困んない…?」
「…?何で俺が困んなきゃなんねぇんだ。」
「だってさ、あの人…同じ会社の人だろ…?俺のコト知られて…困んない?」
「しつこいなテメェも。困んねぇって言ってんだろ…こんなことでお前と擦れ違う以上に困ることなんか…俺にはねぇよ。」
迷いの無い腕が、悟空の小柄な身体を力強く引き寄せる。息が詰まりそうな温もりの中、悟空はギュッとその背中を抱き返した。
「…一人で勝手に決め付けたりして、ゴメン…追いかけてきてくれて…ありがとう…。」
周りがどう見ようと、誰にどう思われようと、そんなことはどうでもいいことだったのだ。
本当に大切なものは、目の前のこの人以外にないのだから。
結構な人が行き来する通りのど真ん中。周囲のざわめきを物ともせず、悟空は少し背伸びをして誰より愛しい人に心からのキスを送った。

次の日のこと。悟空はいつもどおりに天竺ビルへとバイトに向かった。何事もなくいつもどおりに清掃のバイトを終えて更衣室へと戻ってきた悟空を『いつもどおり』でない光景が待ち受けていた。
「あ…」
悟空の口から小さな声が漏れる。
「何処かで見覚えあると思ったのよ。夜間清掃のバイトに来ている人だったのね…少し時間もらってもいいかしら?」
更衣室の前の廊下で悟空を待っていたらしい妖艶な美女は、緩やかに笑った。

私服に着替え終わった悟空を芙蓉が連れて行った先は、彼女の仕事場らしきフロアだった。悟空に適当な椅子を勧めた彼女はサーバーからコーヒーを入れて戻ってくると、手近な椅子を引き寄せて悟空と向き合うように腰を下ろした。軽くコーヒーに口をつけた後、紅い唇が不意に動き出した。
「ねぇ…一発殴らせてくれる?」
「…ハ?」
いきなりぶつけられた一言に、気まずげに俯いたままだった悟空が、その顔を上げた。鮮やかな唇は、尚もこう言葉を繋いだ。
「何も言わずに、一発殴らせてくれる?そしたらそれで、全部納得するから…いいわよね?じゃあ、行くわよ…っ」
悟空の返事を待たずに身を乗り出した芙蓉が、細い右腕を上げる。悟空は咄嗟にギュッと目を閉じた。
「……っ!」
次の瞬間───予想した衝撃は、訪れなかった。代わりに悟空を包んでいたのは、とびきり柔らかな感触と、甘い花の香り。思わず目を開けた悟空の視界一杯に広がったのは、透けるような白い肌と、サラサラと流れる黒髪だった。
静かにゆっくりと、唇が離れていく。何が起きたかもわからず茫然と目を見開いている悟空に向かって、彼女はニッコリと笑った。
「…本当に殴ると思った?…あの人の一番大事な貴方のキスを一回もらって、これで全部帳消し…ね?」
「あ、あの…」
戸惑いがちに声を上げた悟空を、芙蓉はチラリと横目で見遣った。
「私、結構モテるのよ」
「…知ってます」
「秘書室一の才媛て言われてるんだから」
「それも知ってます」
「なのに失礼しちゃうわよね、あの男…」
「…ゴメンなさい…」
唇を噛んで俯いてしまった悟空へと向き直り、芙蓉は大袈裟に肩を竦めてみせた。
「バカね、謝らないでよ。謝られたりしたら何だか私、可哀相な人みたいじゃない。大丈夫よ。私はちゃんと自分で幸せになれる力を持ってるから…だから貴方は、あの人を幸せにしてあげて。」
まっすぐにこちらを見て笑う彼女はひどくキレイで。ハンサムだからとか、エリートだからとか、そんな表面的な理由ではなく、この人は本当に心から三蔵を好きだったのだと、その想いが痛いほど伝わってくる。自分でも気付かぬ内に、悟空の金の瞳からはボロボロと大粒の涙が零れていた。微かな溜め息が漏れた後、白い繊細な指先が優しく悟空の前髪を梳いた。
「もう…男の子が簡単に美女の前で泣いたりしちゃダメよ…私はちゃんと自分で立てるから大丈夫。だから貴方は泣いたりしなくていいの…ね…?」


悟空が正面玄関に到着した時には、既に十時半を回っていた。苛々と煙草を吹かし続けていたらしい三蔵が、悟空の姿を認めて吸い殻を投げ捨てた。
「遅ぇじゃねーか、何かあったんなら一言連絡入れろ…」
怒鳴りかけていた三蔵の声が、間近で悟空の顔を見たところで途切れる。
「お前…泣いたのか?」
少し腫れぼったくなった赤い目許を、三蔵がそっと指で辿る。悟空はそれには答えず、三蔵の胸にしがみつくようにして抱きついた。
「悟空…?」
三蔵が困惑を含んだ声で悟空を呼ぶ。悟空はポス…ッとその胸に顔を埋めた。
「…二人で…いようね。二人で沢山笑って、沢山話して、時々ケンカもして、でもやっぱり仲直りして…そうやって…二人でやっていこうね。」
ぽつりぽつりと。しかし確かな揺るぎのない声で、悟空は三蔵に語りかける。


おそらくこれから何度も、不安になることも、迷うことも、立ち止まりたくなることもあるのだろう。
でも、自分がわからないことは何度でも訊き返せばいいのだし、もしお互いに納得のいかないことがあれば、納得できるまで話し合えばいい。
あんなに真摯な気持ちでこの人のことを好きだった女性を傷つけても譲れない想いなら、そう簡単に「やっぱりムリかも」なんて考えたりしてはいけない。
譬え『遠い』と感じることがあっても、ゆっくりと一歩ずつ、近付いていけばいいのだから。


「…あぁ。」
一言力強く答えた三蔵は、そっと小さな背中を抱き返した。

     きっとこの恋は、僕を強くする。
     きっとこの恋は、君を強くする。
     きっとこの恋は、二人の心の「力」になる─────。


                              …Fine.


《戯れ言》
…またしても、炸裂「少女マンガ」でした(苦笑)。色々な人が出てきて色々
な展開があったワリには、二人の具体的な仲はほとんど進展してないという…
おそらくこの中の人、私が書いてきた中でも一番我慢強い三蔵様なのでは!?
いえ…そろそろもうちょっとイイ思いもさせてあげねば…と思っているのですが(笑)。次の話あたりでは、きっと…うーん、きっと(^^;)。




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