『すげー…キラキラしてんな、たいようみたいだ』
弾けるような明るい声と共に 真っ直ぐにこちらを見上げてきた
馬鹿馬鹿しいほど大きな丸い瞳は こんな髪なんかよりも
何万光年の彼方で瞬く星よりも ずっと煌いていて
誰かの瞳を見て「眩しい」なんて感じたのは
無駄に永い俺の人生の中でも、おそらく初めてだったと思う
ある日無造作にグラスに生けられていた小さな花
『キレイだと思ったから見せたかった』と何の衒いもなくお前が笑う
昨日も今日も明日も変わることのないこの世界に流されて
それを「美しい」と思うことすら忘れかけていた俺は
その花の名すら お前に教えてやることが出来ないのだけれど
『さびしいとさ、この辺がグシャッてなるんだ』
小さな胸に手をあてて、お前がポツリと呟いた
今まで他の誰とも本気で心を合わせたことなどなかった俺は
それが「孤独」なのだということすらわかっていなかった
『ここに居ろ』と俺が言い 呆れるほどのマヌケ面でお前が笑った時
「もう二度と離せない」と───それは奇妙なまでの確信だった
夥しい「紅」に身を染め ゆうるりと微笑うお前を
ただ茫然と立ち尽くしたままみつめる俺の胸の内では
『恐ろしい』と戦慄を感じるより 『忌まわしい』と嫌悪感を覚えるより
『失いたくない』という想いの方が 遥かに勝った
譬え三千世界に「破」をもたらす「悪しき存在」なのだとしても
どれほど身勝手な傲慢だと詰られようとも
この世界中で一人───お前だけが、俺を照らす「光」だから
…次にその瞳を開いた時、お前はまた笑ってくれるだろうか
伸びやかな明るいその声で、俺の名を呼んでくれるだろうか
魂さえ腐蝕されそうな繰り返しの毎日の中で
いつのまにか考えることすら やめてしまっていた俺だけれど
それがどんなに遥か先でもいい
お前と同じ「明日」を見る為なら
きっと俺はどんな宿命にも抗ってみせるから
『唯一人の“太陽”がこの身を照らしてくれるその日が、再び訪れるように』
何一つ真摯に願ったことなどなかった俺の
ただ一度の ただ一つの 『祈り』─────…
…Fine.
《戯れ言》
「ゼロサム3月号」外伝からの突発ネタ。私は今まで金蝉サマを三蔵サマよりカッコいいと思ったことは一度もなかったのですが(苦笑)今回の金蝉サマは本当にオトコ前だと思いました。
皆様お気付きのとおり、イメージソングは宇多田ヒカル嬢の『光』です。
二人にとっては正に、互いが互いを導く『光』なのだと思います。
本当に短い代物ですが、「何か」を感じ取って頂ければ嬉しいです…。
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